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15話 妖魔ブチギレ、そして本物の剣?


 人攫いの本拠地であるスラム街と、市民街の間にある大きな建物に入り、妖刀召喚で脇差・華月を召喚しつつ魔法を一発放ち、敵を斃して行く。

 僕に続きママも入ると中を見ていきなり怒声を上げていた。

 こんなママ見たこと無い。


「おや?風殿、来ましたか。貴方の息子殿の命頂きますよ」

「どうしてハルハンドに寝返ったんだい?返答次第では許さないよ!」


 いつもの間延びした口調ではなくハッキリというママ。

 それに対してディーンと呼ばれた人物は鼻で笑い、ママを見下した様に話し出す。


「あの方の居ないこの世界など、壊してしまえば良い、そう思っただけですよ。それ以外に理由はありません」

「そんな理由?あの子がそれを望んでいるとでも?」

「そんな理由、ですか…貴方にはそんな理由でも私には十分です。あの方の偉大さを理解できない人間など滅んでしまえば良いのです。その為には貴方の息子殿は邪魔なのです。ジャック・グレ・ディカルディア、いつまで遊んでいるのですか?そんな羽虫など蹴散らしてしまいなさい」

「おい!ワイを無視すんなや!」

「うるさいですよ、羽虫。羽虫の主もこんな羽虫を使い魔にしているなんて、底が知れますね。どれだけの底辺なんでしょうね?」

「「「あぁん!?」」」


 ディーンと言う人物が言った瞬間、トワ、半蔵、平八郎が怒気を強める。

 あぁ、ヤバい。キレたな、これ。

 トワ達は僕の事を悪く言われると物凄くキレる。

 僕の妖魔たちは自分の実力が上だと認めて契約している為、主をけなされる事は、自分が貶されると同義なのだ。

 僕と契約する際、本気で戦い、敗れて契約を結んでいるから尚更なんよね。


 次の瞬間、トワから覇気が放出される。

 これにはディーンも驚愕したのか、一歩足を後退させ、さっきまで見せていた余裕な表情が一変、汗を出して眉間にシワを寄せている。


「こ、これは魔王覇気?何故羽虫ごときが…」

「それはなぁ〜貴様が底辺やと罵った、主の妖魔であるワイが魔王やからや!これでも憤怒の魔王と呼ばれてるんや!せやけど今のワイが出せるもんはこれが限界や、半蔵、平八郎悪いがこっちに手かせい。平八郎の相手の男は主にやらせる。これも今後のためや、我慢せい!」

「御意!」

「相分かった!豊殿、任せましたぞ!」


 そう言うと平八郎は、ジャック・グレ・ディカルディアと呼ばれた男の相手を僕に任せ、トワのもとに向かった。

 どげんせんといかん?

 今の僕では刃が立たんばい?

 まぁしかたなか、ここはやれるだけやろう。

 僕には再生魔法があるし。


「ターゲットがわざわざ殺されにやってくるとはな。主を見捨てるか…これだから魔族は…生きる価値など無いのだ!」


 言いながら間合いを詰め、大きなバスターソードを振り下ろす。それを避け、華月を振り抜くが、妖刀と言えど所詮は脇差、長さが足りない。僕は闘気を練り上げ身体を強化する。

 それでも足りない。

 何合かやり合っていると、僕に切り傷が増えていくが、それを再生魔法で治していく。

 すると相手はイラつき始め、魔力での強化を強め、斬る強さが高まる。


「いい加減死ね!鬱陶しい!!」


 そう言いながら、僕は肩から深く斬られ重傷になりその場で倒れるが、直ぐ様傷を直し、立ち上がろうとして蹴り倒され、足で胸を踏みつけられる。


「首を切れば再生出来まい!これで終いだ!」

「豊!!」


 絵梨花お姉ちゃんが叫ぶ。

 大丈夫ばい。

 絵梨花お姉ちゃん、そんなに焦らんで、障壁を何枚もかけているし、いざとなれば分解で剣を分解すれば良い。

 そんなに焦ることじゃない。

 そう思い振り下ろすのを眺めていたら横から刀が出てきた。


「させないよ」


 声の主は彩也姉だった。

 刀で受け止め、相手を蹴り飛ばし、僕は自由になる。

 そこで彩也姉が僕を立たせ、頭に拳骨を落とす。


「甘いよ、豊。障壁を何枚しても、破られる時は破られる。豊の力も万能じゃない!刀の稽古は一からやり直しだね。見てな、これが本物の剣士の戦い方だよ!来な、二流剣士!」

「二流剣士だと?貴様!誰に向かって二流とほざく!!」

「あんただよ。二流」

「貴様!この俺に、この剣王に、一流の剣士に二流だと!?ふざけるのも大概にしろ!女風情が!!」


 相手が憤慨して間合いを詰めて彩也姉を斬ろうとした瞬間相手の動きが止まる。

 いや、止めざるを得なかった。

 僕にも見えた、あのまま斬り掛かっても彩也姉に斬り殺されるイメージが。

 相手も分かったのであろう。

 それを証拠に顔面蒼白となり、冷や汗が止まっていない。


 彩也姉は構えているだけ。

 一歩も動いて居ない、その場から一歩もだ。

 ただ構えるだけでこうもイメージが具現化するとは思ってもいなかった。

 僕も初めてみた。

 これが本物剣士の戦い方なのか。

 ここまで行くのにどれくらい訓練をすれば良いのだろうか。

 あそこまでの域に行けるのだろうか。

 そんな事を考えると、疑問が尽きないが今は目の前の戦いに集中する。


 もう何分過ぎただろうか。

 わからないが、彩也姉の相手は何十回も斬り殺されたイメージを繰り返している。

 どう斬り掛かっても返り討ちにあい、待っていても斬り返せずそのまま斬られる。

 何度やっても同じなのだ。

 観念したのか相手の表情が諦めの顔となる。


「これが…一流とでも言うのか……クク…笑いがこみ上げてくるわ…最後に名を聞こう。俺の名はジャック・グレ・ディカルディアだ」

「アタイの名は華京院・ジン・彩也花さ、華京院・ジン・通親の娘と言えば分かるかい?」

「あぁ百年以上前突如として現れた剣聖か…納得だ。まさか斬り合う前に勝敗が分かるとはな…最後は剣士らしく散るとしよう」

「来な」


 ジャックが斬り掛かり、それを跳ね除け彩也姉が斬り掛かる瞬間、横から兵士がジャックを身体で飛ばすが、その時にジャックは剣と左腕を切り落とされその兵士は肩から斬られ深手を負う。


「邪魔をするな!」

「閣下…陛下のため…ここで死んでは…いけません…生きて…もっと高みに行ってください…それが陛下…た…め……」

「フン、馬鹿が…興が冷めたわ。ディーン帰るぞ!」

「目的は良いのですか?」

「こんな小僧いつでも殺れる。それよりも高みを知ったのだから俺は必ず越えてみせる。次は貴様を殺す!覚えておけカキョウイン・ジン・サヤカ!」

「覚えておくよ、次があればね」


 両者剣を収め、ジャックは斬り落とされた腕を持ち、ディーンのもとに向かう。

 ディーンもトワ達の戦いを切り上げ転移魔法を繰り出す。


「覚えておきましょう異界の魔王。次に合う時は貴方が死ぬときです」

「上等や!返り討ちにしたるわ!」


 転移魔法が発動して二人は消える。

 然程の賊は倒れている。

 そりゃママ達が暴れたのだ当然ちゃ当然か。

 僕は囚われていたエルネシア殿下達のところに向かう。

 そこには獣人、エルフ、ドワーフと言った亜人の子供達がかなりの数囚われていた。


「エルネシア殿下、ルイ嬢、フォビアナちゃん、セレナちゃん無事?」

「うん、だいじょうぶ」

「大丈夫です」

「トワさんがいると思ったからどうも無いよ」

「こっちは大丈夫だから他の子をおねがい!」


 四人は大丈夫と言うが、顔は悔しそうな顔をしている。

 自分の無力を知った顔だ。

 ママ達が賊を縛り上げたり、子供達の安全を確認していると、ドクトリウム辺境伯がルイ嬢と抱き合っていた。

 孫娘が攫われたんや心配せんのがおかしいわな。

 そんな感動の再会をしていると、ルイ嬢はドクトリウム辺境伯から離れ、エルネシア殿下と共に

彩也姉の前に行き必死の形相で頭を下げた。


「彩也花どのわたしをつよくしてください。おねがいします!」

「私もお願いします。剣を教えてください!」

「ルイ!どうしたんだ?剣なら儂が教えるぞ」

「お祖父様は見えていなかったのですか?剣王と名乗った男相手に、剣を構えただけで、負けを悟らせた方なのです。私は強くなりたい!彩也花殿の様に」


 ルイ嬢の必死の訴えを聞きドクトリウム辺境伯は思案顔になり暫くして決心したのか彩也姉に頭を下げた。


「儂からも頼む。儂の孫娘を強くしてくれ」

「仕方ないね。豊を強くするついでに鍛えてやるさ」


 彩也姉がドクトリウム辺境伯やエルネシア殿下、ルイ嬢にそう応えるとエルネシア殿下とルイ嬢は嬉しそうにしていた。

 そんなやり取りを見ていたら、今度はフォビアナちゃんがトワに向かって頭を下げていた。


「トワさん!私に、魔法を教えてください。もう無力なのは嫌なんです。守られているばかりじゃ豊さんにふさわしくない!私は豊さんにふさわしい女になりたいです」


 それを言った瞬間、エルネシア殿下とルイ嬢、シノさん、絵梨花お姉ちゃんの気配が強まりフォビアナちゃんを睨みつけている。

 ママも面白かったのか笑いながらフォビアナちゃんに近づく。

 何言ってるの?

 ふさわしい女とかそんなの別にいいやん。


「トワの代わりに私が教えるよ〜どれぐらい強くなれるかは君次第、それで良いかな〜?」

「はい、構いません!お願いします」

「敵も豊を狙ってきたし、今以上に鍛え直さないとね〜剣王ぐらいでやられるようじゃ〜それ以上は無理だからね〜」


 ママが真剣な顔で今後のことを言う。

 僕自身、アレぐらいの敵にやられるようじゃこれから先苦しくなるのは痛いほど分かる。

 いつまでもお姉ちゃん達にも甘えていられないし、目標が出来たから後はどれだけ近づけるかなんよね。

 

 真凛さんと総司さんが男を引き連れてママの下にやって来た。その男はゲーブ支配人で顔を真っ青にしながら引きずられて連れてこられる。


「先生、コイツ隅で縮こまって震えてたわよ」

「どうする先生?」

「助けてくれ俺は巻き込まれただけだ!」


 震えながらも訴えてくるゲーブ支配人。

 だがその言い訳は通用しない。

 何故ならトワが映像晶で記録している。

 証拠は揃っているから言い逃れは出来ん。

 僕だけなら良いが、王族であるエルネシア殿下と貴族であるルイ嬢を攫ったんやけん、罪はかなり重い物となるやろうね。

 白金貨で諦めていれば良かったものを…

 欲をかくけん罰が当たるんよ。

 ママも虫けらを見るような眼でゲーブ支配人を見る。


「言い逃れは出来ないよ〜あの金で諦めればよかったのに、私の息子を殺そうと企んだのだから報いを受けるべきだね〜エルネシアちゃんを攫った時点で国家反逆罪は確定だね〜」

「そ、そんな…それなら俺の歌唱団はどうなるんだ」

「それなら大丈夫〜。レリーちゃんに任せるから、君は安心して罪を受け入れな〜」


 ゲーブ支配人は肩を落とし絶望した表情して項垂れる。

 歌唱団はレリーさんが何とかしてくれるでしょ、御愁傷様でした。

 衛兵が来て、人攫いを装ったハルハンド神帝国の兵とゲーブ支配人は連れて行かれた。

 それを見ていたら、頭の後ろに角を生やし、トカゲの尻尾をした男の子が叫ぶ。


「俺の母ちゃんが病気なんだ!助けてくれよ!」




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