12話 初めての王都だけど厄介事の気配?
朝、いつも通り日が昇る前に目が覚めるとママに、ギュッと抱きしめられていた。どうにか起こさず起きようとモソモソ動いていると、ママが目を覚ました。
「おはよう豊。今日も早いね〜」
「おはようママ」
「今日は私も起きて、畑仕事しようかな〜」
「何かあったん?顔が優れんけど?」
「大丈夫〜」
顔が優れないママと起きてキッド兄ちゃんとネェネに挨拶していつも来ている着物に着替える。
クリシュナに音楽をかけてもらい畑仕事をする。
「豊は音楽が好きだね〜」
「いい曲でしょ?この子はプライベートでも知り合いで、何かと巻き込まれ体質やったんよ。大変やったばい」
「ぼくもこのひときょくすきだなぁ」
「ノワールハ、ミサミサノキョクガスキ」
ママが手を止め二匹の頭をなでる。
それを気持ちよさそうに受けている。
尻尾を激しく振りながら。
そんなママを横目に畑を耕し、garoの曲を聴く。
元気にやってるかな?僕は心配です。
朝の仕事を終え、家に戻り、朝食を準備して、食事を居間に運び終え食事をし始める。
食事をし終え、暫くすると殿下達がやって来て昨日の続きの授業を始める。
授業は滞りなく進み悠木さんの授業ではラインハルト殿下とカトリーヌ殿下が質問を大いにして、真凛さんの授業ではラシルド殿下が興奮しながら受け、遥花お姉ちゃんや総司さん、亮平お兄ちゃん、彩也姉、絵梨花お姉ちゃんは武術で手取り足取り教えてくれ、エルネシア殿下が張り切っていた。
最後に涼子様が王侯貴族とはどうあるべきか懇切丁寧に話し、これには殿下たちだけでなくレリア王妃やマリアンヌ王妃、ベスター爺も感銘を受けていた。
殿下達は終始満足そうにしていた。
「時にユタカ音楽は好きか?」
「うん!好きやね」
「そうか。ならこれをやろう」
紙でできた招待状をラインハルト殿下が僕にくれる。そこにはゲーブ歌唱団と書いてあり日程が明日となっていた。
歌唱団かぁ、僕はこの世界の音楽を聴いたことがないけん、興味がある。
「中でも最近頭角を出し始めたレリー嬢が綺麗で人気だそうだ。人数制限は無いからフウ様達と行くと良い」
「ありがとねー、行ってみるばい!」
殿下達は僕が作った昼食を食べて帰っていったのだがエルネシア殿下だけ残り、彩也姉に稽古を午後も受けていた。
頑張り屋さんなんやな。
それに触発されたのかレオナルド君やセレナちゃん、進まで頑張っていた。
エルネシア殿下は夕方までやり転移ドアで帰っていった。
夕食時サンダーバードと言う魔物の唐揚げを食べながら、ラインハルト殿下に貰った招待状を、ママに見せると興味深そうに中身を見ていた。
「ゲーブ歌唱団ね〜分かった。たまにはこう言う楽しみも必要だしね〜。場所は…シュナイゼルの王都か〜。良し皆で行こう!」
こうして明日は、授業はお休みとなり皆で初めて王都に行くことになった。
楽しみやなぁ、王都かぁどんなとこなんやろう?食べ物とか何があるやろ?等と期待を膨らませながらキッド兄ちゃんらをモフり、堪能してから寝ることにした。
翌日、エルネシア殿下とおつきのメイドがやって来て、今日の歌唱団に行くのに同行するとのことで、色は赤だがキラキラしたドレスを着ておりいかにも王女と言った風格をしている。
歌唱を聴きにいくメンバーは、僕にママ、三姉妹のお姉ちゃん達、亮平お兄ちゃん、涼子様、シド爺、総司さん、真凛さん、シノさん、レオナルド君やセレナちゃん、進、キッド兄ちゃん、ネェネと大所帯だ。
「ユタカドキドキするな?」
「初めての王都だもんね、わたしも寝れなかったよ!」
「にー、ワクワク!」
「そうやね、僕もドキドキするばい」
「子供たちは大人の言うことを聞くんだよ〜!」
「「「「は~い(あい!)」」」」
レオナルド君とセレナちゃんに進と話しているとママに注意される。
ママの言いつけを守りながら転移ドアがある小屋にやってくる。
そこには多くのドアがあり、その中のシュナイゼル王都屋敷と書かれたドアに入っていく。
転移した先はは西洋風の屋敷の部屋で、部屋の外に出ると、執事やメイドがいた。
執事が馬車を三、四台用意していたらしくそれに乗り込む。ママの屋敷は貴族街にあったらしく外に出たら、中世の西洋風の作りをした屋敷が並び、かなりの大きさがあるのが分かった。
貴族街の近くには王城であろう、大きな城があるのが見えた。
馬車で、貴族街を抜け歌唱団がいる会場がある、商業街に向かうんやけど街並みは中世のヨーロッパな建物だらけで、貴族街の屋敷とはまた違った市民向けの作りをしている。
数台だが車のような魔導車や空飛ぶ絨毯や飛行船などが見えた。
魔導車や飛行船は一般には真凛さん達が作ったとなっているが、本当はママが作った物で知っているのは国の上層部しか知らない。
これらは移動が速く楽で広まっているそうだ。
動力源となる魔石はランクが高いものでしか作れないため貴重なんやって。
でも僕達は、魔獄の魔物がランクが高いため、斃せば楽に手に入るんよね。
僕たちが乗っている馬車はサスペンションが付いていて乗り心地は楽なんよね。
これを作ったのもママで最高の親ばい。
暫く走っていると目的地に着いたらしく馬車を降りると、かなり大きい建物だった。係の者に招待状を見せるとVIP席のようなところに案内される。
「ユタカ楽しみにするといい。わたしもなんどか聴いたことがあるがなかなかいいものなのだ。中でもレリー嬢はかなりいいものだ」
「それは楽しみやね!」
席に着く前にエルネシア殿下にそう言われ、期待してしまう。
僕はママの隣に座り僕の反対側には絵梨花お姉ちゃんが座る。キッド兄ちゃんとネェネは僕の前にちょこんと座り開演を待っていた。
開演し一人一人歌っていくんだけどかなりレベルが高い。曲は聴いたことはないが音楽はオーケストラのようで聴いていて癒やされる程やったね。
トリであるレリー嬢がやってきたのだが、綺麗で煌びやかなドレスを着ている。だが歌唱が始まると僕は動揺する。
ママ達も同じらしく驚いている。
「このきょくはユタカがまいにちきいてるガロみたいだね」
「ウン!マルデホンニンミタイ!」
キッド兄ちゃんとネェネが言う。
そのとおりなのだ、この歌はこの世界の言葉で歌われているgaroの歌だ。
「先生、あの人歌ってないわ口パクよ!拡張魔法で他の誰かが歌っているわ!」
「そうだね~巧妙に隠しているみたいだけど私たちは騙されないよ〜」
真凛さんとママがそんな事を話している。
最後の曲となり異国の言葉で歌いますとレリー嬢は言い、歌い出す。レリー嬢は楽しそうに楽曲も楽しげだが歌詞は違う。
日本語で現状の不遇や生きる希望がないと歌っている悲しい曲だ。こんなの聴いてられない。
ママがハンカチを渡してくれた。
どうやら僕は泣いていたようだ。
絵梨花お姉ちゃんが僕の頭を撫でてくれる。
「お姉ちゃんが何とかしてあげるから安心して」
歌唱が終わり日本語がわかる組は何とも言えない顔をしていたがシド爺やシノさん、レオナルド君やセレナちゃん、進は上機嫌だ。
「いやー良かったのう。最後のは素晴らしかったわい」
「最後のはよかったな。すごく楽しかった!」
「うん!感動しちゃた!」
「よかったよー」
「アレは楽しい曲じゃ無いわ」
「あぁアレは悲しい曲だ」
「なんじゃ、マリンとソウジは分かるのか?」
「アレは私達の世界の言葉よ!」
「なんじゃと!?」
真凛さんの言葉にシド爺が驚く。
真凛さんや総司さんは日本語が分かるから悲しくなるよね。
僕らは舞台裏へと向かう。
そこには2mはあるぐらいの大きいガタイをした赤髪で口髭と顎髭を伸ばして、いかにも貴族と言った豪華な軍服を着た男性と赤髪のショートカットにした小さな女の子がドレスを着ていた二人組が責任者と思われる男性とレリー嬢が談笑していた。
僕らが近づくと軍服の男性がエルネシア殿下に気づく。
「これはこれは、エルネシア王女殿下でございませんか!」
「ひさしいな、ドクトリウム卿。きていたのだな?」
「はい、孫娘にせがまれましてな!ルイ挨拶をせぬか」
「はい、お祖父様!初めましてエルネシア王女殿下。わたくしはルイ・デン・ドクトリウムでございます。5歳になります。以後お見知り置きを」
カーテシーをしながら流暢に話すルイ嬢。
可愛らしさに凛とした女の子だ。
それにしてもこの人がドクトリウム辺境伯か、かなり体つきが良く強そうな人やね。とても50代には見えない。
ドクトリウム辺境伯が僕たちを見ていた。
「エルネシア王女殿下、こちらはおつきの方ですかな?」
「いや、ソウジ殿とマリン殿、そして大賢者フウ様のかぞくだ」
「なんと!?刀剣の勇者殿と賢者殿に大賢者様でしたかこれは失礼を、儂はリチャード・デン・ドクトリウムと申します。大賢者様に置かれましては我が領で村を興してくれるとかで、楽しみにしておりますぞ!」
驚きながらも自己紹介をしてくるドクトリウム辺境伯。堂々としているなぁ、でもごめんけど、今はそれどころじゃないんだよね。
「君がドクトリウム辺境伯かい、君とは話したいことがあるんだけど、今はそれどころではなくてね〜ここの支配人とレリー嬢に急用があるだよ〜」
言われた支配人は媚を売るような笑顔で、レリー嬢は戸惑いながらこちらに来た。何かこの支配人ムカつくな!
「大賢者様達とは知らず挨拶が遅れました。当支配人のゲーブと言います。楽しんでいたただけましたかな?」
「とても良かったよ〜。でも最後がねえ〜…」
「何かありましたか?」
「私は最後の異国の言葉が分かるんだよ〜アレは悲しい曲だ。なのにレリー嬢は楽しげに歌っている。おかしくないかい?」
「それに他の人には上手く隠せても私達には隠せないわよ!レリーさん、アナタ歌ってないでしょ?影武者がいるんでしょ?」
ママと真凛さんの言葉に支配人は苦虫を噛み潰したよう顔をしている。
レリー嬢は罪悪感のある表情だ。
これは何かを隠している表情やビンゴやね。
「そ、そのような言いがかりは辞めていただきたい。いくら大賢者様と言えど侮辱は許せませんよ!」
怒気を持って言う支配人。
度胸あるじゃん。このママに啖呵を切るなんていい度胸してるよ。この期に及んで侮辱ときたか良いだろう、その顔絶望に変えてやるばい。
僕は大きい声で叫ぶ。日本語で。
「いくちゃん!居るんやろ?豊久が来たばい!!」
「トヨさん…」
その言葉に何故かルイ嬢が驚く。
僕の呼びかけに小さいが応えが帰ってきた。
でも小さくてどこにいるか分からなかった。
するとキッド兄ちゃんとネェネが前に出る。
「ユタカこっちだよ!」
「アッチニコエガキコエル!」
僕達は控室の中に入ろうとすると支配人の怒声が響きゴツい男が数人出てきて僕たちの行く手を防ぐ。ジャマやね。ぶっ倒すか。
そんな事を考えていると絵梨花お姉ちゃん達が前に出た。
「豊ここはお姉ちゃんに任せなさい!」
「そうばい!ここは大人に任せんね!」
「ユタカ様は行って!」
「ワシらが食い止める。じゃからユタ坊はいくんじゃ」
「楽しくなってきたね!」
絵梨花お姉ちゃんや亮平お兄ちゃん、シノさん、シド爺、総司さんが男たちを食い止めてくれて、キッド兄ちゃんとネェネの先導で僕やエルネシア殿下、レオナルド君やセレナちゃん、進が中に入っていくのやけど何故かルイ嬢までついてきた。
中には歌っていた女性がたくさんいたけど無視だ。奥に進んでいくと扉があり、そこをレオナルド君が開けてくれた。
「ひどい…」
エルネシア殿下の声が響く。そこには眼鏡をかけた10代後半の女性と、紫色髪を伸ばし顔に傷があり左手と右足がない女の子がいた。




