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ショートショート9月〜4回目

トンボとカラス

作者: たかさば
掲載日:2023/09/01

……。


………?


なんか、気のせいか…、さっきから。


市民が憩う緑道で、もくもくとウォーキングをする、私の……横に。


一匹の、トンボ?が……並走?

並行して飛んでいる、ような。


……たまたまかな。


………虫の飛行スピードが、私の走行スピードと、偶然、たまたま…リンクしてるん…だよね?


もしや、わざと……合わせてきている?

まさか、一緒に……散歩している?


なんだか……、気になる。


なんとなく、心地が悪いというか。

なんとなく、心がザワつくというか。


なんか、気持ち悪いっていうか……。

なんか、不自然っていうか……。


……たかがトンボに、気を遣ってしまうのも…アレだけど。


先に…行ってもらうかな。

ちょうど、寂れたベンチが見えるし。


……よし、あそこで休憩しよう。


腰を下ろし、手に持つドリンクを……ひとあおり。

歩いている間に、ずいぶんぬるくなったな……そんな事を思いながら、ふと視線を左斜め下に向けると。


……?!


トンボが!


トンボが……ベンチにとまって…いや、座っている?!


これは……、何?!


偶然と言うには、あまりにも……。

たまたまと言うには、あまりにも……。


もしや、監視者?!

まさか、狙われてる?!


いやいやいや………。

そんな、アニメや映画、SF小説じゃあるまいし。


……こんな事、あるんだな。


大自然に生きる生物とのシンクロニティに、ドン引きしている。

明らかに違う生物体なのに、同じ行動をしているという奇跡に、ビビっている。


逃げ出すべきか、それとも。

気にしないべきか、それとも。


逃げ出したところで、また追従されそうだ。

気にしないでいれば、知らぬ間に消えていそうだ。


……私、虫全般が好きなんだよね

……せっかくだし、観察でもしてみようか。


ギラギラ輝くめだま。

白い羽がキラキラしてる。

ツンと上を向く尻。

ベンチの座面で踏ん張る細い手足。


……あんまり見たことがないトンボだ。


色合いからしてして、赤トンボではない。

オニヤンマぐらいデカイけど、シマシマが黄色くない。

シオカラにしては、羽が白すぎる。

ギンヤンマにしては目玉が黒すぎる。


……かなり近くで観察しているのに、微動だにしない。


なんという落ち着き払ったトンボなのか。

なんという危機感を持たないトンボなのか。


私を気にしていないにもほどがある。


なんとなく、うれしいような。

どことなく、バカにされているような。


思わず、まじまじと……見つめて、しまう。


……近くで見ると、かなりでかいな。

幼い頃に、近所のお友だちにオニヤンマの標本を手のひらに乗せられて、あまりの迫力に感動した日を思い出す。


へぇ、触角ってこんな感じなんだ。

ふぅむ、頑丈そうな顎には、歯が生えてるんだね。

ほぉ、実に立派な爪が付いてますなあ。

はぁ、実にカッコいい姿形……。


この距離感なら、接写、できるかも……。


ウェストポーチから、スマホを取り出そうとした、その瞬間。


ババッサ、バサー!!

ガチャガガッ!!


まさかの……カラスが!

目の前に……舞い降りて!


でっかいトンボを…口に、咥えた!!


ちょ…羽根の風圧!

ちょ…なんか触った!

ちょ…バイキンとか大丈夫?!

ちょ…カラスが近くてデカイ!


……カラスってトンボ食べるんだね。


知らなかったなあ……、そんな事を思いながら、野生の食物連鎖を間近で観察させてもらおうと……。


パリン!

バリュ、バリュ!

ごぉ〜り、ごぉり!


やけにハデな咀嚼音が!

なんかめっちゃ……モグモグしとるがな!!


……ちょっとまて、コレはいったい?!

……くちばしって、歯、ないよね?!

……トンボって、こんなに歯ごたえ抜群の音、出るの?!


唖然とする事しかできない私を嘲笑うかの如く、バカでかいカラスは…真横で大きく羽ばたき!!!


「……ふん!」


ちょ!!!!!


今、鼻で笑った?!

いや、バカにした!!!


完全に、下に見られてる!!!


ババッサ、バサバサ!!

カカガッ!!


びゅぅッ!!


またしても風圧が!!

生温かいのは至近距離だから?!

なんとなく埃っぽいのは野生の汚れが降りかかっているから?!

てゆっか今羽が当たったんですけど!!


とっさに首に巻いたタオルで口元を覆い、けがれた空気を吸うまいと下を向いたら。


……ぱさッ。


ツヤツヤの、さぞかし良い飾りになりそうなカラス?の羽が落ちてきた………。


………。


……拾おうかとも、思ったけれども。


うん、ばっちいからね。

うん、持ち帰っても使わないからね。


ぬるいお茶を飲み干した私は、冷たいサイダーを買うべく……そっと緑道からそれて。


人通りの多い、繁華街へと向かったのだった。



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