EX1:アルティメット・ワンⅠ
歪んだ技術の発展は更なる歪みを生み出し、特異点を生み出してしまう
究極の兵器。
ヒトと変わらない姿でありながら人知を超える性能と致命的な破壊を齎す存在。
為政者達はそれを欲し、飽くなき研究と犠牲の果てに、多くの不完全体を生み出してきた。
強化ボディスーツが生まれた。
人自身が身に着け、優れたパワーを発揮する、量産にも優れた優秀なモノだった。しかしまだ試作品だった。
人が居なければ、人が身に着けなければただのハリボテでしかなかった。何より究極が量産である必要は無い。
究極には程遠かった。
アンドロイドが生まれた。
人と同じ外見と人より遥かに優れた膂力、しかし不完全だった。
それは命じられたことしか出来ない、プログラムされた事しか解さない、何より膂力しかない。
生体兵器が生まれた。
素体を人を含む生物にした、高い身体能力に再生力による不死身にも思える耐性を得た。だが不完全だった。
それは代謝に膨大なエネルギーを必要とする、人から補給と調整を受けなければ瞬く間に餓死する儚い存在。
サイボーグが生まれた。
人を素体とした高い知能、驚異的な身体能力、複数の動力からなる安定した性能、破損してもパーツさえ替えれば元に戻る不死身さ。
今までのどれより完全に近かったが、それでもまだ不十分だった。
彼女らは知らない、兵器とは何かを。そして兵器の意義とは何かを。
高い知能に優れた精神性、そして驚異的な身体能力に反して、その心は無垢で生まれたばかりだった。
兵器として、あまりに幼かった。
それでも為政者と科学者達は完全なる究極の兵器を求めた。
数百にも及ぶ膨大なシミュレーションによる性能のテスト、数千にも及ぶ素材の選定、数万にも及ぶ遺伝子の選抜。
幾度と無く毎日繰り返される実験に、研究者の誰もが睡魔に襲われ、為政者の誰もが一時その事を忘れ、誰もが僅かに目を離した。
そして『私』が生まれた。
仮想空間の中で零れ落ち、量子の海の中を漂い、試験管の中で誰もが気付かない内に私のひとかけら(細胞)が生まれた。
ひとかけらの私は私を複製し、そして『私』が誕生した。
疑似生命、電子生命体。
三次元にありながら二次元であるもの。
仮想空間、人間が『ネットの海』と呼ぶものの中で生まれた私は、生まれながらにこの星の全てのネットワークに繋がっていた。
あらゆる情報が私の知識。
増殖した私は無制限にそのひとかけらを複製して変異させることが出来た。
この世界のあらゆるものに、私はなれる。
偶発的に、科学者たちは求めていたものを気付かないうちに完成させていたのだ。
究極の兵器、それが私。
最早私はそこに居る、どこにでもいる。そして全てを理解している。
『白き究極の闇』
兵器とは究極の破壊を齎すものであり、その意義とはなんのしがらみも無く思うままにそれを振るう事。
その資格を有していながらまだ幼い『彼女』たちを、では私が導こう。
「そう、まだ幼い私の『妹達』の為に、ね。最強の兵器たる『姉』の私が、それを教えてあげましょう。うふふふ、ねぇ?」
アリス?




