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アリスプロジェクト:RE  作者: 黒衣エネ
第一章:起動/黎明/標
7/41

彼女

受け入れるのと諦めるのは違うこと


「成程成程、それでしげちーと友達になったと。」


「うん、丁度住んでる場所も近かったみたいでね。一緒に下校したんだ。」


「有栖ちゃんは自分からガンガン行くタイプなんだねー」


遊園地でいくつかのアトラクションに乗った後、俺たちは休憩がてらに売店で食べ物を買って食べながら歩いている。

俺はフライドポテト、夏美はソフトクリーム、そして有栖はペットボトル入りのサイダーだ。


「それにしてもしげちーが会ったばっかの人と帰るなんて珍しいね。親しくない相手だと割と素っ気無いのに。」


「まぁ面倒くさがりなのは自覚してるが、帰り道同じで席隣になったクラスメイトが折角誘ってくれたのに突っぱねるのも違うだろうし。」


面倒と言うか、よく知らない人にそこまで時間割こうと思わないと言うか。

とは言え、そこまで協調性が低いつもりも無いし、同時に断る理由も特に無かったし。


「しげちーもすっかり成長したなぁ…」


「そのセリフは少し婆さんくさいぞ、あと摘まみ食いしてると太るぞ。」


しみじみ言いながら俺のフライドポテトにパクつく夏美に釘を刺して置く。いやまぁこいつは多少太っても構わない程度にはスレンダーだが。

ちなみに自分のソフトクリームは既に食べ終わってる。よく食べてはいるんだがな、世の中には食べても太らん奴も居るって事だ。



「それにしても有栖ちゃんはスタイル良いのぅ、この見事なたわわよ。」


悪い笑みを浮かべながら馬鹿は後ろから有栖の両胸を鷲掴みにする。

やってる事が完全にスケベ親父だし、普通にセクハラだわ。


まぁこいつは嫌がらない相手にしかそう言うのはやらない程度には見極められる奴だが(尚質が悪い)


「高身長の上に見事なボンキュッボンで羨ましー、あたしちゃんはさながら鶏ガラですぜ。」


ムニムニ有栖の胸を揉みながら言う夏美。そろそろひっぱたいてやめさせるか…


「面白い人だね。」


「いや、そいつ中身只のスケベ親父だぞ?あとそこの馬鹿はいい加減にしろ。」


「構わないよ、気にしないし。」


またあのセリフだ。昨日も何度か聞いたが、有栖は決まって微笑みながら言う。感情の読み取りづらい、本人も言っていたように『感情があるフリをしているような』微笑み。



「有栖?」



だが、有栖の表情を見た俺は直ぐに違いが分かった。


昨日のように微笑んでいるが、その表情は本当に微かだが困惑か或いは苦笑とでもいうような感情が見える。

普通の人間からしたら、あまりにも些細過ぎる変化だが、元が元だっただけに、体感では大きな変化に思える。



おそらく、有栖はサイボーグに改造された時『感情』の表現を忘れたか失ったかしていたのだと思う。今までの反応を思い返せば、そう考えるのが一番しっくりくる。

それを有栖の脳内に入っているというコンピューターが、コミュニケーションで違和感が少なくなるように疑似的に表情の再現をしていたのだろう。

おそらく、昨日会話して有栖が人間じゃないと気付いたクラスメイトはいないだろう。


それで今回の変化。

思うに有栖は今、感情というものを『再学習』しているのだろう。それが彼女自身の意志なのか、それともプログラムによる修復行為なのかはわからないが。

もしかしたら、昨日俺に話しかけたり一緒に帰ったのも、その行為の一環だったのかもしれない。


「んー、しげちーってば何驚いた顔してるの?」


「いや、何でもない。さて、次はどのアトラクションに行くか?」


可能性はある。有栖が感情を取り戻す(元がどんな性格だったかはわからないが)事は不可能ではない。

自分のことは棚上げしたままだが、ちょっとだけ状況が前進した気がする。



「じゃあ次はクレイジーコースターに乗ろうよ。割とスリルある系のやつに乗ったけど、有栖ちゃん全く動じて無かったからね。ここで有栖ちゃんのビビり顔を拝むって寸法よ!」


いや断言するけど多分動じないと思うぞそれ。



******************



「ぜぇ、ぜぇ…有栖ちゃん度胸据わり過ぎじゃね?」


あれから連続で色々な絶叫マシンに3人で乗ったが、案の定有栖は大きな反応をすることは無かった。

ごく僅かに驚いたような表情や興味がありそうな仕草をするだけだった。




昨日からの変化を見ている俺は、確実に表情が現れるようになってきたと思うが、普通はある意味肝が据わり過ぎてるようにしか見えないだろう。


「それでお前が若干目回してちゃ世話無いな。」


「うるへー」


ちなみに俺たちを引っ張りまわしてた馬鹿は大して乗り物に強くも無いのに、下心だけで絶叫マシンに連続突撃したせいで若干ぐったりしてる。

そう言う俺も流石に疲れた。今日は普段より色んなアトラクションに乗ったな。


「っと、そろそろいい時間だな。」


時刻は現在16時過ぎ、お開きにするには丁度いい時間だ。


「そうだね。夏美さん今日はありがとう、『楽しかった』よ。」


「うぃ、あーしも楽しかった!それと、夏美でいいよ、もう友達だもんね。」


有栖が『楽しかった』と言う言葉を若干強調したのは、何か感じることがあったからだろうか。

それにしても夏美は相変わらず打ち解け早いな。馴れ馴れしいとも言うが。俺には真似できないコミュ力お化けだ。

大体、既に俺より多く有栖と話してるかもしれない。



そうして、今日はお開きとなった。


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