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アリスプロジェクト:RE  作者: 黒衣エネ
第一章:起動/黎明/標
18/41

意義

『我らは組織の為に、国の為に戦うのではない。己の信念の為に戦う。大事なモノは形ではなく、何を成したか。人は誰しも何かを成す為に生き、何かを成そうとする。人の人生はその生の最期で決まる、死とは己の人生の決算であり完成だ。』



「くそっ!これで何体の『US-06』を消費したというんだ!?これだけ投入して幾ら高性能機とは言えサイボーグ1体すら捕獲できないとは…」


このままではこの私の評価に響いてしまう。そうすれば第2研究施設所長の地位も…ええい、かくなる上は!


「『MR-06:シクスス』!貴様に出撃を命じる!例え大破してでも『AR-01:アリス』を捕獲しろ!部隊として『US-06』8ユニットと『UC-08』を2ユニット貸してやる、良いか?第1世代の価値は第3世代の貴様の数十倍だ!何としても確保しろ!」



「…お望みとあらば。」


「そうだ…本部の連中め、今に見ていろ。今に見返してやる…その為なら鉄人形どもなど幾らでも…」





「『今に見返してやる、今に見ていろ』と言ったが、それはこの程度の事なのか?貴様の策とはこんなものなのか?」


「なっ…クレイス主席隊長殿!?何時こちらへ!?」


「悪戯に戦力を消耗する貴様に本部も重い腰を上げたという訳だ。私を監査役兼戦力補強として派遣した。それで、それが貴様の作戦の限界か?」


「ぐっ…しかしこれで『AR-01』を確保出来れば損失を補填して余りある!これより捕獲作戦を開始いたします!」





「…シクスス、勝算はあるのか?」


「厳しいでしょう。作戦成功率は、配備された全てのアンドロイドと自分を含めても凡そ3%程です。」


「正しい戦術予測だ。アレにそこまで構う必要は無い、作戦遂行不可能と判断したら直ぐに撤収せよ。後処理は私がする。」


「…いいえ、自分とて戦闘用軍事サイボーグです。与えられた任務は、必ず遂行します。それに自分の大破を前提に作戦を組み立てれば成功率は7%台まで跳ね上がります。」


「そうだな、それも正しい予測だ。」


「ご覧になっていてください、クレイス閣下。量産型の第3世代とは言え自分も軍人、必ず結果を残し我らが大義を示しましょうぞ。」


「お前がそう言うなら任せよう、健闘を祈る。」


「はっ、クレイス准将閣下。」




****************




「兵士としては100%の回答だな、シクスス。だがサイボーグとしては損失と成果の計算が出来ていない。もしお前をここで失えば人的にも戦力的にも…だが覚悟を決めた戦士、そして任務を全うせんとする兵士を引き留めるのは侮辱に他ならない。」


サイボーグになった我らにはその『成った理由』が必要なのだ。それがシクススにとっては組織への忠であっただけ。


おそらく、シクススは『AR-01:アリス』に勝てない、いや『IG-11:イグニス』にも敵わぬだろう。研究員としてはそれなりだが司令としては無能なアレはその程度の実力差も分析出来ていない。


何故私が派遣されたか解らなかったようだな。

私は対『AR-01』の為に、そしてアレが無能な判断をした場合の懲罰の為に派遣された。


私の到着を知った時点私を戦力に換算すれば良かったのだ。それを己の功績と権利を横取りされぬ為に(勝手にそうなると思い込んで)アレは私を今の作戦に加えなかった。


私が独断でシクススを救援するのは容易いし、その権限もある。中佐相当官のアレと准将位にある私とでは私の方が権限は強い。



だが、それではシクススの作戦・覚悟・信念に泥を塗る事になる上、もしそれで作戦が成功した場合はアレを処断する材料も無くなる。今回でアレから地位を剥奪しなければ、組織への損失は無視出来ないレベルになる。


無論シクススが作戦を成功させるに越したことは無いが、『AR-01』と『IG-11』の両方をあの程度の戦力では抑えられない、シクススは命を落とすだろう。そしてそこまでしても作戦成功率は高めに見積もっても7%。


シクススが撤退を拒んだ以上、私に出来るのはシクススの奮闘を見届け、その奮闘が無駄にならぬように動くだけだ。



許せシクスス、結果的に私はお前を見殺しにするようなものだ。

せめてその意志は無駄にせず、残された責務を私や残るサイボーグ達が遂行する事で、お前への手向けとしよう。



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