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湯けむり♨温戦少女  作者: ひよこめんたる
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第十五話 VS 赤城【前編】

「鉄輪流、墓渦(ぼうず)ッ!」


自身の身の丈ほどもある鉄球に繋がれた鎖を引っ張りまわした温泉入道。


勢いの付いた鉄球はやがて入道を中心に宙を舞い、荒れ狂う竜巻のように付近の闇泉士達を吹き飛ばす。


「食らいな! CRYな! 鉄輪流、ROCK TEN'S BLOW !!!」


吹き上げられた彼等を追い打ちするように星水のギターから発せられた指向性の衝撃波が撃ち落とす。


しかし、闇泉士達が尽きることはない。


次々と襲いかかる虚ろな群衆はさながらゾンビ映画を思わせる。


「集団戦泉ならッ!」


「私たちの出番だよねッ!」


咲良姉妹の背後に巨大な白い桜が現れた。


降り落ちていく花弁はその一つ一つが闇泉士達へ落ちていく。


接触した彼らを一人、また一人と吹き飛ばしていった。


しかし尚も彼らは止まる気配を見せない。


「きゃぁ!?」


ついに数人の闇泉士達が咲良姉妹へ迫ろうとした時だった。


「ヌンッ!」


彼女たちの眼前を巨大な手が通り過ぎる。


重い風切り音を立てて闇泉士達は吹き飛んでしまった。


「助かったわ!」


「ありがとう!」


姉妹は手の主、ユデゴリラに礼を言う。


彼は顔を向けることなく、後ろ手にサムズアップを送り、闇泉士達を払った。


街は彼らへ向かう闇泉士達であふれかえっている。




一方で絢愛達はHSタワーの目前まで迫っていた。


入道たちが引きつけているとはいえ、タワー周辺も少なくない数の闇泉士達がたむろしている。


「ごめんッ! 怒雷也ッ!」


絢愛は熱風の竜巻を起こし、彼等を吹き飛ばす。


二人はそのまま雪崩れ込むようにタワーの扉を開け、入った。


「気を付けて、絢愛ッ!」


祈璃は内部へ侵入するとともに辺りを見渡した。


タワーの一階はエントランスだ。


受付のカウンターとエレベータ、幾つかのベンチが置かれている。


本来なら侵入者を排除しようと内部に闇泉士達が鮨詰めになっていてもおかしくない。


しかし、エントランスは無人だった。


がらんどうの空間は不気味な静寂を伴う。


「エレベーターが、開いてる……」


絢愛は奥のエレベーターが開いているのを見た。


開かれた扉の先もやはり無人である。


「安い挑発ですわね。けれど買いましょう。絢愛、行きますよ」


「ああ。罠だろうが待ち伏せだろうか無意味だってこと思い知らせてやるよ」


二人が入るのを見計らったようにエレベーターが閉じた。


そのままひとりでに上昇していく。


向かう先を示す液晶には展望、かつて絢愛と祈璃が凌ぎを削った場所が映されていた。


ポーン。


軽やかな電子音が鳴り、扉が開く。


「おやおや。随分とお早い到着だな」


開いた先には中央を陣取るように赤城が立っていた。


その背後には怪しげな端末を操作する高崎が見える。


「彼等に……別府の皆様に何をしたの?」


祈璃が赤城を睨み、言う。


「見て分からなかったのか? あのポンコツ泉士達と同じだよ。邪苦字を打ち込み、闇泉士にしたのさ」


「なんで……どうしてそんなことをするんだよ」


絢愛は拳を強く握り、普段よりもいっそう低い声で聞く。


「決まっているだろう? 別府を闇泉士の巣窟と変え我らが任務……九衆(きゅうしゅう)解体の足掛かりとするためだ」


「ふざけるなッ!」


愉快そうにほくそ笑む赤城に向けて絢愛はその顔面目掛けて拳を突き刺した。


その威力はまさしく突き刺したと表現するに足る……当たれば拳大の風穴が開くのは必定の一撃。


しかし、赤城は予測していたと言わんばかりに身を引いて躱す。


「どうした、焦熱の番犬? 負け犬に相応しい吠え面を見せてくれないのか」


赤城は空を切る絢愛の腕を掴む。


刹那、絢愛の腕から幾重もの花弁が咲き乱れた。


その形はまるでツツジの花である。


赤錆色の花々は絢愛の鮮血によって紅く染まった。


「あああああッ!!」


絢愛は右腕を抑えて呻いた


否、それは呻くなどと可愛いものではなく、激痛に悶え叫んでいた。


「草津温泉拳……灼那華(しゃくなげ)だ。これで右腕は使えまい。ククッ……残る四肢も串刺しにすれば少しは私を笑わせてくれるかな?」


灼那華は自身の掌に生成した小さい湯ノ華が相手の皮膚を切り裂きながら伸びていく零距離攻撃だ。


血管も筋肉も神経をも出鱈目にズタズタに切り裂くこの技は対象箇所を再起不能にする、その痛みは文字通り灼熱の炎に焼かれたかのようだ。


「絢愛ッ!!」


祈璃は彼女の元へ向かおうとする。


「そうはいきませんよ。起動なさい、軍魔兵(ぐんまへい)


だが祈璃と絢愛達の間に割り込むように大量のヒトガタが現れた。


ドス黒い影のような彼等は、あろうことか温泉拳のような力を用いて祈璃へ武器を、華を、拳を突き付ける。


「退きなさいッ!」


祈璃も応戦するように剣を展開するが多勢に無勢、絢愛との距離を徐々に離されてしまった。


「邪苦字に汚染された泉士から採取したエネルギーの波動……それらを解析することで機械的に温泉拳を行使し続ける(うつろ)の泉士達。試作品とは言っていましたが温戦少女一人を抑えるには充分ですね」


赤城の陰から軍魔兵を端末で操作する高崎。


「腕が……動かないか……」


絢愛は右腕を封印されながらも、尚闘志を滾らせていた。


「良い目だ。叩き潰したらどうなるか楽しみで仕方ないよ」


赤城が背中から抜き出したのは一振りの湯揉み棒。


先に行くにつれ幅広になる板切れもまた赤黒く彩られていた。


「掴まれたらダメって事なら……掴まれなきゃいいだけだッ!」


絢愛は全身を駒のように回す。


怒雷也だ。


空気をも燃やし尽くさんとする熱風が絢愛を、赤城を包み込む。


「白根の風みたいな熱さだ。ククッ……冷ましてやるさ」


赤城は棒を片手に熱風の中を進む。


熱風は彼女の周囲でのみその熱を奪われたかのように鎮まった。


「温泉拳温離穢湯(おんりえどう)……卍堕凍紅(ばんだいこう)ッ!」


竜巻の中心、即ち絢愛を捉えると棒を振り翳し、回る彼女の両足、太腿へと横薙ぎに振るった。


「は……?」


刹那、熱風は消えた。


回転が止まったのだ。


燃えるような赤い竜巻は去り、赤い霰が彼女の視界を降り落ちる。


それは凍った血であった。


絢愛は倒れる。


起きあがろうとするも足に力が入らない。


それどころか足の感覚が無い。


伏した顔をあげる。


頭の片隅で顔を上げるなと誰かが言っている気がする。


けれども顔は自然と赤城を、赤城の前にあるモノを捉えていた。


仁王立ちする私の足を捉えて離さなかった。


「あ……あ……」


信じられなかった。


信じたくなかった。


氷漬けの足は動かない。


動かしていた持ち主と離れてしまったのだから。


「嗚呼、本当に良い顔だ。ありがとう……全く笑えなかったよ」


やがて足の中から華が咲く。


咲き乱れた花々は氷が砕けると共に血となり爆ぜた。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!」


喪失感と痺れるような痛みに泣き叫ぶ絢愛の発狂は別府中に響き渡った。


いかがでしたでしょうか。

コメント、評価、お気に召して頂けたらブクマしていただけると嬉しいです。


一か月以上も投稿が遅れて申し訳ありませんでした!!!!!!


ちょっと内容に行き詰まり、息抜きに書いていた作品に熱中してしまいました。


温戦少女、完結までしっかり書きますのでどうかお許しください……。

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