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第六話 幸せになってほしい人リスト

 明くる日の朝、今日は登校途中に、尾関と出会わなかった。

 教室に入ると、クラス中の視線が俺の方を向いたが、すぐに全員、サッと目をそらした。

 以前は声をかけてくる奴が少しはいたが、今は誰も俺の方に来なかった。

 まぁいいさ、こうなることは覚悟していたし。


 自分の席に座り、しばらく何もせずぼけっとしていたが、尾関はなかなか来なかった。

 妙だな、いつもこの時間には来ているのに。

 結局、チャイムが鳴っても、彼女は教室に来なかった。

 珍しい、遅刻か?

 そう思っていた時、担任の先生が教室に入ってきた。

 なにやら動揺している様子だ。額に汗を浮かべて、急いでいたのが窺える。


「その、みんな、驚くだろうが、心して聞いてほしい」


 暗い顔を俺たちに向ける先生。

 なんだ、改まって?

 彼が続きの言葉を発した次の瞬間、俺は時が止まったような気がした。


「昨夜、尾関が自殺した、自分の部屋で首を吊っていたらしい……」


 ………………

 ……は?


 何言ってんだ、尾関が、自殺した?

 なんで……だって、昨日はあんなに楽しそうで……

 クラスがざわついている。

 俺は、頭が真っ白になった。

 先生が何か言っているが、全然頭に入ってこなかった。


 それから通常通りの授業が行われたが、どの授業も記憶に残っていない。

 ずっと呆然としていたら、いつのまにか学校が終わっていた。

 重い足を引きずるようにして、自宅までの道程を歩いた。

 マンションに着いて、自分の部屋に向かうと、俺の家である501号室の前に、見知らぬ女性がいた。

 おそらく四十代くらいの人で、目には泣いた跡がある。

 少し尾関に似ていた。


「あの、そこ、俺の家ですけど、何か用でしょうか?」

「もしかして、大竹誠也さんですか?」

「そうですけど」

「私、あなたのクラスメイトの尾関直香の母親です」

「あなたが……」

「その、娘が自殺したこと、知ってますか?」

「……ええ、今朝、学校で知りました」

「そうですか、その、娘の部屋に、あなたに向けた手紙が置いてあって、それを渡そうと思って、ここに来たんです」


 差し出された手紙を受け取った。大竹誠也君へ、と丸っこい字で書かれている。急いで中を開いた。

 そこには、こんなことが書かれていた。



 私、自殺しようと思います。

 ですが、誤解しないでください。

 ただこの世に絶望したから死ぬんじゃないです。これは、復讐のための自殺なのです。

 私が自殺することで、いじめ問題が騒がれることになると思います。

 そうしたら学校側も対処せざるをえないでしょう。

 私をいじめたやつらにようやく制裁が下るのです。

 それが私、とても楽しみなのです。

 だから私は、今、暗い気持じゃありません、明るい気持ちです。

 くそみたいな人生だったけど、あなたといるときだけは少しだけ楽しかったです。

 あなただけが、私の希望です。

 だから、ゴブリンの私は死にますけど、あなたは生きてください、

 私の魔王様。



 涙をこらえて、俺はそれを読んだ。


「あの、あと、これが娘の部屋にあったんですけど、これもあなたに見てほしいんです」


 彼女の母親から、ノートを渡された。

 そのノートの表紙には、幸せになってほしい人リストと書かれていた。

 中を開くと、最初のページの一番上に、彼女の両親の名前が書かれていて、その下に、俺の名前がでかでかと書いてあった。


 俺は涙をこらえきれなくなった。

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