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私の母親  作者: 柿崎零華
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~第1話・十八年前~

十八年前の夏。

暑い日差しが街を覆っていたとき、一本の通報を受けて、二人の警察官が管理人と共にとあるマンションを訪れていた。


どうやら玄関に血痕らしきものが流れているといることであり、確かに部屋の前には血液が流れており、少し不気味に感じた。


一人の警察官は恐る恐る玄関を開けた。するとそこには女性が血だらけの状態で倒れており、奥のリビングでは男性が同じく血だらけの状態で倒れている。


管理人は驚きのあまり腰を抜かしてしまい、そのまま固まっている。


あまりにも残酷な光景に目をそむけたくなったが、もう一人の警察官が無線で応援を呼んだ。



現場に一人の刑事が足を踏み入れた。名前は吉田正弘。階級は警部であり、管轄署の強行犯係長を担当しているベテラン刑事である。


部屋の中はかなり荒らされており、もみ合った形跡もいくつかあった。かなりひどい光景に言葉が出なかった。自分が今まで経験してきた事件の中でも、これは一二を争うほど、残忍に違いないと思い込んでいた。


被害者は河村義彦・正子夫妻の二人であり、夫の方は不動産会社の取締役専務をしている。


そのため、少し高価なツボや絵画が目に映り、とても豪華な暮らしをしていたことがわかる。


死亡推定時刻は午後十一時頃という報告は受けており、時計がもみ合ったことが原因で十一時に止まっているため、そう断言したという。


リビングの右隣の部屋に足を入れると、ベビーベッドがあった。それも状況から見て使っている形跡がある。つまり幼児が住んでいたことは間違いないことである。


だが聞くところによると被害者はここに住む河村夫婦だけとしか報告を受けていないため、幼児の安否に関しては何も聞いていなかった。部下の繫沢に幼児のことを聞いてみた。


どうやら、夫婦の間には生後四か月の長女がいたのだが、事件当日から行方不明だと聞かされた。


それに近所に住んでいる女性の話によると、昨日の午前八時ごろに幼児を連れて出かける夫婦を目撃しており、午後五時には普通通り帰宅しているところを偶然目撃しているため、恐らく、犯人に連れ去られた可能性が高いということを繫沢は推理した。


確かにその可能性は高い。幼児が可哀想になり連れ去るケースは何度かある。しかし、その後は養護施設に預けるか、他人に預けて逃げるかなど、どちらにしても育てないケースはほとんどだ。


そのため、繫沢に近くの養護施設を調べるよう要求した。今第一優先なのは子供の安全。両親が殺されているわけなのだから、油断はできないと思いながらも、子供の無事を祈るばかりであった。



その日の夜。真夏の暑い警察署で行われた捜査会議では繫沢が詳細を報告していた。


どうやら、夫の義彦にはどうやら不倫相手がいたらしく、長年交際をしていたことを同僚男性が明かしたらしいが、その不倫相手が一体どこの誰なのかまではまだ掴めていないこと、そして、マンションの防犯カメラに不審な女性が事件当時映っていたが、画像が粗く、解明までに至っていないことが明らかになった。


そして夫婦の幼児に至っては、養護施設を調べたが誰も預かっていないと報告を受け、さらに捜査は難航した。


しかし、吉田は分かっていた。確実に不倫相手が夫婦を殺害し、そして幼児までを連れ去った張本人だということを。


しかし吉田はまだ分からなかった。この事件が二十年近くも未解決になるとは・・・


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