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くだらない私の日常 新人なろう作家の日常妄想系エッセイ

個性は隠し味なのですよ


 個性。


 実に厄介な代物です。



 え? そんなことないよ、個性は大事でしょ。


 そうですね、一般的には大切にすべきものだとされています。


 没個性、無個性なんて言えば、たいてい悪い意味になってしまいますから。



 ましてや、創作の世界ならば言うに及ばず。



 個性そのもので勝負するのだから、当然といえば当然……なんだですけれど。


 



 書きたいものを書かないと個性が死ぬとか思っている人、いませんか?


 あるいは個性が弱いとか無いとか思っている人、個性の出し方がわからない人、結構いるんじゃないかな……?



 そういう人のために、私がとっておきの方法を教えてあげます。


 それは……




 まずは徹底的に個性を消すこと……です。



 いやいや、何言ってんのって思いますか?



 あのね、個性って、消そうと思っても消えないんですよ。


 消すどころか、死ぬ瞬間、最後まで消えないのが個性。人間全員個性の塊なのです。



 言い方悪いかもですけど、体臭や口臭と一緒で、他人には気になるけど、本人は気付いていないのと同じ。


 周りから見れば丸わかりなのに、本人には見えにくい、気付きにくいのが個性。実に厄介なのです。



 だからね、まずは自分にもちゃんと個性があるということを自覚するところから始めます。



 やり方は簡単。


 好きな作家さんの作品を、その人になりきって丸ごと書いてみる。


 写すんじゃないですよ? 一話分でも、フレーズでもいいので、頭に入れて書いてみる。



 そうすると、間違いなく細かい部分で違いが出てくる。


 実際には、まる写ししていても違いが出てきたり、あれ? ここもっとはこういう言葉の方が好みだなという箇所が発見できます。


 どんなに好きな作品でも、崇拝している作品でも……です。


 

 そしてそれが、あなたの個性です。抑えようと、隠そうと思っても、しゃしゃり出てくる厄介なもの。生涯付き合わなければならないあなたの魂そのものなのです。


 

 なぜ先程、個性を出すには個性を消したほうが良いって言ったかわかります?



 個性ってね、消せないだけじゃなくて、意識して調整しないと出過ぎで鼻に付くんですよ。特に創作なんてまさにダダ漏れ状態。普段は閉めている個性の蓋を全開にしている状態ですからね。


 わかりやすく言えば、トウガラシとか塩をドバドバ掛け過ぎた料理みたいな?


 いや、俺は激辛が好きなんだから気にしないっていう方もいるとは思いますけど、一般的には、料理本来の味がわからなくなってしまうと思うのです。


 問題は、調味料の正体を知らずに使っていることでね、正体不明の調味料を意識的に使えていないことなのですよ。


 そんな風に作られた料理が美味しいはずないですよね? まあ、奇跡的に美味しくなることもあるかもしれませんが、それは偶然の産物であって、再現できるものではありません。



 自分の個性が、胡椒なのかトウガラシなのか、はたまた白ワインなのか砂糖なのか。


 あるいはもっとヤバい、少量なら薬になるが多量だと劇薬みたいなものかもしれませんよね?



 小説に限らず、創作の世界で長く活動できる人って、この部分をちゃんと理解している人だと思うのです。


 個性はさまざまなスパイス。種類が違えば用量用法も変わります。


 共通しているのは、使い過ぎ注意ということ。決してメインにはならないということ。


 もちろん激辛料理のように意識して使うなら問題ありませんが、素材の良さを活かすなら、やはり隠し味程度が丁度良い。



 あなたのスパイス(個性)を知れば、それだけで創作はもっと楽しくなる。


 そんなの自分じゃわからないって?


 ここは小説投稿サイトですよ? 読んでくれた人の感想や反応が答えです。


 認めたくないかもしれませんが、思っていたのと違うかもしれませんが、個性は他人から見て初めて輪郭が見えてくるものなのです。


 そもそも読んでもらえない? 感想をもらったことが無い?


 

 だったら色んな作品を読むのです。作者になりきって読むのです。その時感じた違和感があなたの個性。他者を通じて自分を知る。それも立派な読書の楽しみ方なのですから。



 もし違和感を感じない作品に出会ってしまったら。


 

 それはとてつもない幸運です。


 この世に数人しかいないあなたの写し鏡がそこにあるのですから。

 


 

 最後に、個性が弱いから読まれないとか思っている人、それ勘違いですよ。



 読まれる、人気が出る、売れる、これみんな個性めっちゃ薄味です。


 だってそうでしょう? 広く求められるのは最大公約数が大きいから。



 たとえばフライパン。


 皆が使うものだけど、個性を出そうと思って、たとえば星型の作ってみたとして、たくさん売れるわけないですよね?


 洗いにくいし熱効率もいまいち、製造コストも高いし用途もメチャクチャ狭い。そもそも星型パンケーキなら型を使えば済む話で。


 一振りで泥棒に致命傷を与えられる代わりにめちゃくちゃ重い超攻撃的フライパンとか、直火やIH非対応、振ることで熱が発生するフライパンとか。個性が強過ぎるのも考えものなのです。



 個性を出すことしか頭になくて、フライパンを使う人のこと考えていないということ。


 小説でいえば読み手のことを考えていないということ。


 読者に媚びるとかそういう次元の話ではないのです。


 


 あ、ちなみに人気=没個性じゃないですからね?


 匙加減、塩梅が絶妙なのです。個性を最大に活かすのは、強さじゃなくて塩梅なのですよ。



 一番力を入れた作品や曲がさっぱりで、適当とは言わないまでも、さらっと書いた作品や曲がヒットするなんていうのは良くある話で。つまり味付けが濃すぎたんです。本人的にはもやっとするでしょうけどね。


 

 長々と書いてきましたけど、


 心配しなくても個性は消せない。むしろ強すぎたり濃すぎたりすると鼻に付くし、人を選ぶから、いかに抑えるかを意識した方が良い。


 そして周りの評価や反応があなたの個性を知る。強みにも弱みにもなるあなただけの調味料。


 不本意でも受け入れてしまった方が楽しめると思うのです。


 

 あなたの隠し味は……なんですか?

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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の場合、王道異世界恋愛に憧れながら、駄洒落と言葉遊びに突き進んでしまう……。それが今の「自分らしさ」とは感じつつ、憧れには限りなく遠いと感じます。隠し味、大切だなぁと思いました。バラン…
[良い点] フライパンの例分かりやすかったです。 個性を土台に作品はできないですよね。個性はスパイスとは言い得て妙です!
[一言] 狙いすぎると受けないギャグみたいなものですね。 すごくよくわかりますが、ストレス発散に書いている身としては捨てられないんですよね。 たとえ受けなくてもネタを書き続けるしか無い。因果な性格…
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