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ウサギとカメの平等論

作者: 弱者男性

昔々、ウサギとカメが、喧嘩をしていました。

なかなか決着がつかないので、駆けっこで勝負を決めることになりました。

森の仲間たちが応援にやってきました。


キツネ「位置について、よーい、どん!」

スタートの合図と同時にウサギは猛スピードで駆け出しました。

カメはゆっくりと道を進み始めました。

途中でカメはこの勝負がウサギ優位であって不平等なものであることに気が付きました。


カメは応援に来てくれた仲間たちに訴えかけました。

カメ「カメは足が遅く、ウサギは足が速い。駆けっこなんかで勝負を決められたらウサギが勝つに決まっているじゃないか。こんな勝負は茶番だ。ウサギにもカメにも平等に機会を与えてほしい!」

カメ「森の社会はウサギ尊カメ卑だ!」


森の仲間たちは首をかしげました。

キツネ「つべこべ言ってないで真剣に走ったら?」

クマ「ルールを変えることより自分が努力して変わることを考えなよ。」

キツネ「いつだって不平不満はつきもの。気にしなきゃいいんだよ。」


カメは森の仲間たちの無理解さに精神を蝕まれ、寝込んでしまいました。

カメが寝ている間にもウサギはどんどんゴールに近づいています。


カメが元気を取り戻したころには、ウサギはとっくにゴールしていました。


このことを知ったカメの仲間たちは、とても怒りました。森の仲間たちに、何度も訴えかけ続けました。

その様子をウサギは面白おかしく笑いました。


でもカメたちの抗議は、ゆっくりと森の仲間たちに受け入れられるようになりました。

百獣の王と呼ばれるライオンが、「勝負に勝てるカメが4割以上になることを目標として、勝負を見直す努力をせよ」という勅令を出すまでに発展しました。

こうして、「ウサギとカメが陸路にて競争するときは、カメのレーンにベルトコンベアを整備して公平な競争を実現する」

のが当たり前になりました。

ウサギ「こんなのウサギ差別だ!」

別のウサギ1「こんなの逆差別だろ、ふざけるな」

別のウサギ2「これだからカメは馬鹿なんだ」

別のウサギ3「カメ被害妄想乙」



それから年月が経つと、人間による都市開発のせいで、森の仲間たちが駆けっこできるような陸路が少なくなってくるにつれ、川でのスイミングで決着をつけるという新しい競争スタイルもみられるようになってきました。


キツネ「位置について、よーい、どん!」

スタートの合図と同時にカメは猛スピードで泳ぎ出しました。

ウサギはゆっくりと泳ぎ始めました。

途中でウサギはこの勝負がカメ優位であって不平等なものであることに気が付きました。


ウサギは応援に来てくれた森の仲間たちに訴えかけました。

ウサギ「ウサギは泳ぎが遅く、カメは泳ぎが速い。スイミングなんかで勝負を決められたらカメが勝つに決まっているじゃないか。こんな勝負は茶番だ。ウサギにもカメにも平等に機会を与えてほしい!」

ウサギ「森の社会はカメ尊ウサギ卑だ!」


森の仲間たちは首をかしげました。

キツネ「つべこべ言ってないで真剣に泳いだら?」

クマ「ルールを変えることより自分が努力して変わることを考えなよ。」

キツネ「いつだって不平不満はつきもの。気にしなきゃいいんだよ。」


ウサギは森の仲間たちの無理解さに精神を蝕まれ、寝込んでしまいました。

ウサギが寝ている間にもカメはどんどんゴールに近づいています。


ウサギが元気を取り戻したころには、カメはとっくにゴールしていました。


このことを知ったウサギの仲間たちは、特に何も思いませんでした。

別のウサギ「勝負方法がカメに有利なんだから仕方ないよ。」

その様子をカメも見て見ぬ振りしました。

カメ (((昔はカメが損していたんだから、今はウサギが損して当然だ!)))


ウサギ「僕は、ライオン陛下に直訴するぞ!

カメのときはベルトコンベアを陸路に強いて勝負の公平性を確保するよう勅令を出したんだから、今度はウサギにも同じような勅令を出してくださいってお願いするんだ!

署名集めたいからみんなも協力してくれ!」

別のウサギ1「やめろよ、そんなことやったら逆差別になるじゃん」

ウサギ「君たちだって普段からカメのベルトコンベアに文句言ってたじゃん。亀だけ配慮を受けていることに不満があるんだろ?だったらウサギにも配慮をくれってお願いすればいいだけのことじゃないか」

別のウサギ2「やってることカメと変わらないぞ」

別のウサギ3「お前ひとりが言ったところで世の中は変わんないよ」

ウサギ「...」


ウサギはこの時気が付きました。今まで「ウサギ差別を共に考えてきた仲間」だと思っていた人たちは、

「ウサギ差別を考えている」のではなくて、「カメ差別を考えない」だけだったのです。


ウサギは、カメ差別を訴えるカメたちを笑いものにしてきた自分を痛烈に後悔する一方、

カメたちと違って一緒に自分たちへの差別を訴えてくれる仲間がいないことに絶望しました。

「自分たちウサギは、本当はカメより弱い」、ウサギの中でこの信念は確信に変わりました。

本当に弱い生き物は、弱さに気が付いてもらうための努力すらしない、

ウサギたちは「自分たちへの差別を訴えかける」ことよりも「他の生き物が差別を訴えかけている姿を馬鹿にする」という楽な道に逃げたのだと。

しかし、弱者を救うのが「公正」や「平等」であるはずなのに、本当に弱い自分たちはあまりにも弱すぎて、誰にも救ってもらえないという点に、矛盾を感じました。


未だに、ウサギとカメがスイミングをする際の、ウサギに対する配慮措置は実現していません。

女性差別は炎上するのに男性差別は炎上しないの、あれ何でだろうね。

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