表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/29

第03話 神さまが描いた絵

 春・・・。僕は何とか補欠合格を勝ち取り、無事に誠心学園高校の新一年生になった。


 何の部活に入るかを迷っていたとき、担任の先生から「二階堂は厳しいぞ」とアドバイスを受けた。意志とは関係なく、すでに入部届は受理されている。当然、魔術師の仕業だ。

 

 部活動の募集掲示板の端っこに地味に貼られているビラには、黒のマジックペンでたった一行。


― 募集! 学園警備部 連絡先:二階堂


 新入部員を誘う気なんて微塵も感じない・・・。僕はこの怪しげな部活に入部することになった!




「失礼しまーす」


 部室としてあてがわれた視聴覚室のドアを開けると、すでに3人の部員がそろっていた。


 机を4つ繋げたテーブルの上には、白いテーブルクロスがかけてあり、コーヒーが入ったマグカップが3つ。中央にコアラのマーチが1箱。プリントが各席に4枚。


 奥で頬杖をつきながら、気だるそうにプリントを確認している美少女が、二階堂夜名にかいどうよな部長である。


「ナタ、待ってたわよ。そこにかけて」


 僕は他の部員に軽く会釈をして席についた。プリントが裏返しで置いてある。部活に参加するのは今日が初めてだが、すでに部員とは挨拶を済ませてあった。


 ヨナの隣に座っているのは、銀縁めがねが知的な印象をうける六条和樹ろくじょうかずき君。少しひ弱そうな感じはするが、かなりのイケメンだ。


 その六条君の向かいに座っているのは、ショートボブの小柄な女子、來田里奈くるたりなさん。おっとりしていて可愛らしくはあるが、かなりの天然だと、彼女と同じクラスの友人が言っていた。


 二人とも僕の同級生だ。


「部長。霧崎君のコーヒー淹れてきますね」


 そう言って來田さんは席を立ち、僕の分のコーヒーを淹れてくれた。青いマグカップには変な顔をしたうさぎが描かれている。


「さて、全員そろったところで、始めたいと思います」


 ヨナは姿勢を正した。今日は僕たち新入部員に活動内容を説明してくれるらしい。


 学園警備部っていう名前だけでは、何をする部活なのか分からないから当然だ。意外にも部長が板についているではないか、二階堂先輩。


「まず、この学園警備部の活動目的を六条から説明して」


「おい、最初っから1年任せかよ」と、心の中でつっこむ。


「はい。部長」


 六条君はインテリ眼鏡のブリッジに軽く手をやった。


「この部活の活動目的はただ一つ、誠心学園生徒の安全保障です。生徒を犯罪者から守ることが我々学園警備部の使命だと心得ております。以上」


「よろしい。ではこれから、今までの活動によって得た情報を開示します。それらは極秘事項です。もし第三者に漏れた場合は重い処罰を与えます。プリントを手に取ることで誓約したものとみなし、術が発動しますので心しておいてください」


「はい」

「わかりました」


 お、重い処罰ってなんだ? それにしても、六条君も來田くるたさんもヨナと会話が成り立っている。僕と同じで訳ありなのだろうか。


「ナタ、あんたは?」


「ハ、ハイ。分かりました。誓約します」


「では、3人ともプリントを裏返し、目を通してください」


 僕たちはプリントを手に取った。



<学園警備部ひみつ情報☆パートⅠ>


① 霧崎ナタは4才のとき神様だった


② 霧崎ナタは4才のとき4枚の絵を描いた


③ 霧崎ナタが絵を描いたことにより4つ世界が創造された


④ 絵のタイトルは『公園』『地獄』『夏祭り』『雪合戦』


⑤ この世界は『公園』である



「それぞれ、目を通したかしら。<学園警備部ひみつ情報☆>は、これからの活動に必要な基本事項ですのでしっかり頭にいれてください。必要に応じて追加していきます。質問は?」


「無いです、部長」

「ありませーん、部長」


 二人そろって質問無し。


「では、プリントは10秒後に消滅します。頭にたたき込んでおいてください」


「ちょっと待ってよ、ヨナ、ぶ、部長!」


「何よ?」


「いや、全然わからないよ。絵って何?」


「書いてある通りよ。あんたが絵を描いて世界ができた。『公園』、『地獄』、『夏祭り』、『雪合戦』。それぞれの絵には世界が宿っていて、ここは『公園』。わかった? アンダスタン? まだ何か質問ある?」


 なんだろう。今日のヨナはめちゃくちゃ機嫌が悪くないか? 言いたいことは山ほどあるが、この雰囲気では無理だろう。触らぬ神、ではなく魔術師に祟りなしだ。


「いえ、何もないです」


 ヨナは鼻をフンと鳴らして、コアラのマーチをひとつ食べた。ヨナに命じられて僕がコーヒーのおかわりを取りに行くと、プリントは跡形もなく消失していた。



最後までお読みいただきありがとうございました。


下の☆☆☆☆☆やブックマークで評価していただけると嬉しいです。


感想もいただけると助かります。どうぞよろしくお願いいたします!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ