9話 カナメの出自
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カナメが肉の下処理をすると言って、飛んで行った後。
「……カナメ、戻ってこないな?」
「ええ、様子を見てきましょうか?」
「いや、どうせだし俺が行ってくる。オラリスは待ってて」
そう言い残し、俺は家を出た。
それからカナメの飛び去った方へ走っていくと、何やらバシャバシャと水が跳ねる音が聞こえた。
「あれは……?」
「GRRRRR!!!」
「GUOOOOOO!!!」
木陰から覗くと、川の中で二体のドラゴンが争うように取っ組み合っていた。
上から押さえ込んでいるのは初めて見るくすんだ赤色の大柄なドラゴンだが、下で抑え込まれているのはカナメだった。
フレイムドラゴンの弱点は水だ。
カナメを川の中に押さえ込んでいるドラゴンはそれを分かってやっているのだろう。
「これ以上させるか! 『大瀑布をここに』!」
俺はとっさに木陰から飛び出し、神代言語を詠唱。
同時に水流は上から下からではなく、真横へ流れるイメージを持つ。
その結果として俺の手前に魔法陣が展開され、そこから出た激流がカナメの上にのしかかっていたドラゴンを吹っ飛ばした。
「GURRRRR!!??」
「まだまだ! 『打ち降れ、岩礫』!」
カナメから離れたドラゴンに、さらに追い討ちをかける。
岩のつぶての雨を想像し、魔力の大半を消費しながらドラゴンに叩き込む。
「GRRRRRR!!!」
怯んだドラゴンは咆哮を上げ、そのまま飛び立って逃げ出した。
それを確認し、カナメに駆け寄った。
「カナメ、大丈夫か!? あいつ知り合いか?」
「え、ええ。水でやられたけど大丈夫」
カナメが人間の姿に戻って、川岸に上がった。
それからぽつりぽつりと話し出した。
「あいつは知り合いと言うか、元従者と言うかで……」
「元従者?」
カナメはこくりと頷いた。
「あたし、元々はドラゴンのお姫さまで。でも堅苦しいのが嫌だから逃げてきたの。そうしたら力ずくでも連れ戻すって、見つかっちゃって」
「お姫さまって、そうだったのか……」
それにカナメが修行して強くなりたかった理由も、なんとなく分かった。
ああやって襲ってくる元従者のドラゴンに抵抗して、連れ去られないようにするためだったのか。
「でも何だか納得だな。カナメって結構可愛いと思うから、お姫さまって言われてもあまり驚きもしなかったし」
素直にそう言うと、カナメは赤面した。
「か、かわ……!? ……おだてたって、獲物しか出ないわよ?」
「素直な感想だよ。さて、それじゃあ家に戻ろう。オラリスが待っている」
「それもそうね。色々考えるのは、美味しいものを食べてからでいいもの」
互いに微笑み合った俺たちは、獲物の下処理を終えて家に戻っていった。




