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7話 勇者の現状

 ルドーを追い出して一ヶ月。

 結論から言うと、勇者アレルヤは憤っていた。


「どうしてこうなった。僕らの言葉が通じなくなっているのか……!?」


 ルドーが離れてからかどういう訳か、現在滞在しているデルシア王国の言葉が上手く発音できなくなっていると感じていた。

 そしてそれは他の仲間も同様。

 勇者一行は、必要な物資の補給についての会話すらままならなくなっていた。


「おい、どうしてだよアレルヤ。お前、あの役立たずがいなくても困らないって言ってたじゃないかよ」


「そうよ、それに勇者なんだから交渉にも自信があるって言ってたじゃない」


 アレルヤを非難がましく睨むのは【剣聖】のロイドと【弓聖】のエリアルだった。

 【賢者】シリフィーは普段通り、静かに傍観しているのみだ。


「くっ、そういうお前らだってこの前まで王国語ペラペラだったじゃないか。それが一体、どういうことだ!?」


「それは……」


 そう、一ヶ月前あたりから兆候は現れていた。

 日を追うごとにアレルヤ一行は皆、母国語以外の語彙を喪失していったのだ。


 ……理由は当然、ルドーの脱退にある。

 スキルにも様々な種類があるが、その中には周囲に影響を及ぼし続けるタイプのものもある。


 ルドーの【読解術】スキルは常に周囲にも微弱ながら影響を及ぼす類のもので、その影響で勇者一行は異国語を理解できるようになったに過ぎない。

 いわば、ルドーの補助があってこそのものだったのだ。

 それを知る由もない勇者一行は、この奇妙な事態に頭を抱えていた。


(ああくそ、このままだとポーションの補給もこの国で受けられるかどうか……!)


 この手の交渉や補給は全て、どんな言語も理解できるルドーが行なっていた。

 加えてどの国でも手続きのために書くべき書類は形式が異なっており、どれも複雑な手続きを踏まなければならないものばかり。

 さらにエルフやドワーフのような多種族から装備を仕入れようにも、やはり種族ごとに言語が違うこともザラである。


 それにいかに勇者一行と言えど、各国や団体から公式に補給を受ける場合はきっちりと身分などを証明する書面を作成しなければならない。

 逆にそういった手続きがなければ、自称勇者を語るペテンが横行するのが関の山だ。


(どこかに都合のいい通訳でもいないのか? もしくはアイテムの補給なしでこの国を出るのか? でもこっちは氷将コキュートスとの戦闘で消耗が激しい。今の状態で別の魔王軍幹部と会ったらどうなるか……!)


 魔王軍の魔物に比べて人間は脆弱であり、魔力量も少ない。

 その差を覆すのがポーションやエリクサーなどの各種消費アイテムだが、それらは貴重であり強力ゆえ、各国も提供を大幅に制限しているのが現状だ。

 そう言った面でも各国の言語を自在に操り、補給の交渉にも慣れたルドーの優れたマネジメント能力が必須だったのだ。


(だが認めるか、あんな役立たずに俺たちの旅が支えられてきたなどと……!)


 勇者アレルヤは渋面を作り、この苦境を脱する手段を考えていた。


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