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2話 神々の書庫

 パーティーを追い出された後、俺はふらふらと街を離れた。

 正直言って、現実感がなかった。

 数年間も世界を救うために旅して来た仲間から、ああも簡単にクビを宣告されただなんて。


「俺の価値は、よその国の人と話す程度か……」


 とは言え手持ちの少ない路銀では、故郷に帰ることもままならない。

 俺の故郷はレーガリア共和国、今いるデルシア王国から四つも国を挟んでいる。

 馬などを使っても、半年以上はかかるだろう。


「このままだとパーティーから追い出されて異郷で行き倒れか、なんて末路だよ……」


 俺は行くあてもなく街を出て、しばらく山の中を歩き続けていた。

 半ば自暴自棄気味に険しい獣道や谷を進み、ひたすら進んでいった。

 ……およそ半日後、その先で。


「神殿……?」


 古びた神殿のようなものを見つけた。

 ここは辺境の険しい山の中、他に人がいる気配もない。

 一体いつの時代のものだろうと、俺は神殿に近寄った。

 そして、少しだけ驚いた。


「柱に彫られているこれ、神代文字だ」


 神代文字とは、この世を作った神々が使っていたとされる文字だ。

 大陸各地にこの文字が彫られた神殿は見つかっているが、神代文字は現代では読解不能とされている特殊な文字だった。

 とは言え俺はどんな言語も理解可能な【読解術】スキルを旅の中で極めた身なので、神代文字も実は読めたりする。


「えーとこの字の読みは、ラー?」


 ラーって確か、太陽の神さまじゃなかったか。

 そしてその近くの別の柱には、オーディーンやらスサノオやら……。


「何だこれ、国や地方が異なる神さまの名前ばっかりじゃないか」


 大抵神殿と言うのは、その地域の神さまを祀っているものだが。

 なのにここは大陸全土の神さまの名前が柱ごとに彫られている、どういうことだ?

 俺は奥へ進み、とある石版を見つけた。


「これは……『書庫』?」


 神代文字の『書庫』を神代の言葉で口に出した途端、石版が輝き出した。

 言語ごとの発音すら正確に喋れるのも【読解術】スキルの恩恵の一つだ。


「何が起こっている……?」


 次の瞬間、空間に重たい音が響いた。

 ガチャリと壁が左右に開き、その先には巨大な本棚が並んでいた。


「書庫って、そのまんま書庫なのか」


 興味本位で書庫に入り、適当な本を取って開く。

 中身は神代文字で書かれていたが、本自体からも魔力を感じる。

 これは経年劣化を抑える魔術がかけられているのだろうか、ともかく古びた本なのに綻びも虫食いもなかった。


「それに内容は魔導書……横の本も、その上の本もか」


 魔導書とは、読んでその内容を理解すると本に記された魔術を扱えるようになる不思議なアイテムだ。

 そんな魔導書が巨大な本棚にきっちり詰め込まれ、壁側はびっしりと本棚で埋まっている。

 しかもそれらの魔導書には一冊一冊、題名のように神々の名が刻まれていた。


「神代に作られた神殿に、神代の文字で書かれた魔導書。……もしかしてここ、大昔に色んな神さまが使っていた書庫なのか?」


 そんな書庫に無断で立ち入ってしまい、少しばかり罪悪感が湧いた。

 しかし今の俺は行くあてもなく、仲間もない身。


 もうどうにでもなれと、俺は興味に任せて魔導書を読み漁ることにした。

 それに【読解術】スキルを持っている都合上、読書は好きな方だったのだ。


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