16話 ドラゴン退治
暴走中らしいドラゴンと話をするため、俺はカナメに乗って空を飛んでいた。
結界を作る魔道具の付近を通過する際、カナメの体に悪影響が出ないよう、遠隔操作用の魔石で一時的に結界の機能を停止させた。
「その魔石で結界を操作できるのね。簡単に結界を解除できるあたり、流石は神代の魔道具ってところかしら?」
「遠隔起動も可能みたいだしかなりの優れものだ。……あ、それとだ。万が一の時はカナメはこんな手筈で……」
そうやってあれこれ話し合いつつカナメの縄張りから出ると、次第になぎ倒された木々などが目についてきた。
「やっぱりあいつがいるみたいね。あたしの縄張り近くで好き勝手してくれちゃって!」
「GURRRRRR!!!」
視界の端、地上から唸り声と共に巨大な何かが森から現れた。
そちらを向けば、くすんだ赤色のドラゴンがこちらを見上げて睨んでいた。
「カナメ、見つかったらしいぞ」
「こっちも降りるわよ」
カナメはそう言い、件のドラゴンの前に急降下した。
「あんたもしつこいわね。あたしの縄張りに入れないなら諦めなさいよっ!」
「いいえ、それはできません。私は出奔した姫さまを力づくでも連れ帰るよう、竜王より仰せつかっておりますので」
目の前のドラゴンは予想以上に礼儀正しい言葉づかいだった。
それに今の話から、やはりカナメの元従者ということで間違いないようだった。
「そこのドラゴン。カナメのこともあるだろうけど、ひとまずこの辺で暴れるのをやめてもらいたい。お前が暴れたせいで、カナメの縄張りの中に獣人が一人逃げてきた。他種族への迷惑行為は勘弁して欲しい限りだ」
はっきり告げると、ドラゴンは鼻を鳴らした。
「ふん、人間風情が何を言うかと思えば。それに私が暴れたのも、ひとえに姫さまをおびき出すため。縄張り近くで騒ぎがあったとなれば、様子を見に来るのが道理だ。……そしてこの目論見に、まんまと引っかかってくれた!」
ドラゴンは吠えながらこちらへと突進してきた。
先日の戦いから、カナメよりあのドラゴンの方が力量は上だと判明している。
ならば、この手でいく!
「カナメ、飛んでくれ!」
「分かったわ!」
「なっ、姫さま!?」
突然逃げるように飛び上がったカナメに、ドラゴンは面食らった様子で俺の手前で立ち止まった。
しかしこれで、さっき空でカナメに話した手筈通り。
俺は持ってきていた荷物から結界を作る魔道具を取り出し、ドラゴンへと投げてから魔石で遠隔起動した。
「ぐっ、きゃ……っ!!??」
ドラゴンが嫌う魔力波の結界を張る魔道具を超至近距離で、それも最大出力で食らったドラゴンは倒れてのたうち回っていた。
そしてカナメを空へ飛ばせた理由、それはこの魔道具の効果範囲外へ逃れてもらうためだ。
この隙に、俺は神代の言語で詠唱する。
相手はカナメと同じフレイムドラゴン、ならば弱点は大量の水!
「『大瀑布をここに』『重ねて再び』!」
魔力の大半を消費しながら創造魔法を起動し、ドラゴンの真上に巨大な滝を二つ出現させる。
「GRRRRRR!!??」
岩盤すら穿つ威力の巨大な滝が、ドラゴンに襲いかかった。
弱点の水を大量に食らったドラゴンは水流の衝撃も合わさって、そのまま倒れて気絶した。
「神代の魔法を使う手合いは仕事が早くていいわね、そこは素直に尊敬するわ」
「ドラゴンが相手なら、油断せず速攻で畳み掛けたほうがいいかと思ってな」
魔道具による結界を解除すると、空からカナメが降りてきた。
こうしてひとまず、カナメの元従者を止めることに成功したのだった。




