15話 飲まず食わずだった理由
「はぐっ、むぐっ……!」
出された料理を必死に口に詰め込むロリン。
そんな様子を見て、カナメが関心した様子で言った。
「獣人って初めてみるけど、よく食べるのね。オスのドラゴン並みの食欲じゃない」
「まあそう言わずに。何日も飲まず食わずだったなら、こうなるのも仕方なしかと」
オラリスはそう言いながら、次々に料理をロリンへ運んで行った。
俺も創造魔法を使ってパンを作成し、ロリンに渡していく。
そのまま食事を食べ続け、ロリンはふぅと満足げに息を漏らした。
「ごちそうさま! ルドー、本当に助かったよ。ありがとうありがとうっ!」
旅の中で覚えていたのか、ロリンは流暢な王国語でお礼を言ったが、それから少し困ったように俯いた。
「その、ルドーたちには何かお礼をしたいんだけど。ロリン、今お金とかなくって……」
「いやいや、お金なんていいよ。困った時はお互い様だし、ここでの生活にお金は必要ないから。強いて言うなら作物の種とか、お金よりそういう方が嬉しいくらいだ。だからお金とかで気に病む必要はない」
そう言うと、ロリンはぴこりと猫耳を動かした。
「にゃん! それなら持ってるよ? 旅の途中で色んな人と会って、もらったものも多かったから」
「おお、本当か?」
創造魔法は便利だが、流石に生きているものを作ることはできない。
それは作物の種も同様で畑は日々大きくしているものの、蒔く種の種類が少なく困っていたのだ。
ロリンが荷物の中から手渡してきたのは、小分けにされた様々な作物の種だった
これだけあれば、収穫できる作物の幅も広がるだろう。
「これはありがたいな。それに種を蒔く時期も合っているものが多いし、早速取り掛かりたいくらいだ」
「あ、だったらロリンも手伝うよ? ルドーたちから食事をもらって元気もいっぱいだからっ!」
元気に腕まくりをしたロリンに、俺は笑いかけた。
「だったら手伝ってもらおうかな。人手は多い方がいいし」
俺の言葉に、オラリスやカナメも頷いてくれた。
それから俺たちは畑に出て、せっせと種を蒔いて水やりをした。
種は質も悪くないように思えたので、きっと元気な芽が出てくれるだろう。
……そうして畑の作業がひと段落ついて休んでいた時、ロリンが呟いた。
「ここは畑作もできるし、静かでいい土地だね。実はドラゴンに何日も追われて飲み食いする余裕もなくて死にそうだったけど、ここに来てルドーたちに会えて幸いだったよ〜」
「ん、ドラゴンに何日も追われていたって?」
「うん。数日前に妙に苛立っていたドラゴンに出くわして、憂さ晴らしのようにずっと追われてたの。本当に死ぬかと思ったにゃ……」
「そのドラゴンって、まさかくすんだ赤色の?」
思わず聞くと、ロリンは「確かに、鱗はそんな色だったかなぁ」と答えた。
「とは言えこの土地に逃げ込んだら追ってこなかったし、もういいんだけどね。にゃははっ」
ロリンは快活に笑っていたが、俺やカナメは笑えなかった。
「……これはもしや、カナメの縄張りに入れなくなったあのドラゴンが縄張りの外で怒って大暴れしていると?」
「……実際、そのようね」
カナメは盛大にため息をつき、オラリスは苦笑いしていた。
……放ってもおけないし、カナメの元従者だと言うあのドラゴンと一度話をする必要がありそうだと思う次第だった。




