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チュウヒ隊の買い出し

翌日。

シャフスが、荷と人員を用意しに、商業組合に向かった。

ヴィーは、それを手伝いに付いて行っている。

今後、帝国内において、仮初(かりそめ)だが商売を行うため、

商人と顔を繋いでおく必要があるのだ。

ユーティルとバニは、帝国に入るための証書を作りに、庁舎へ(おもむ)いている。

そして、サドはカスビを連れて、ルトゥバの商業区に、

物資の調達をしに来ていた。

この街について部下に教えるのも、先達としての務めだ。


「左の通りは、穀物や乾燥果実を扱っていて、一本向こうの通りが生鮮食品だな。

都市国家群から入って来る品が、主に取引されている。

この道の突き当りには大きな油問屋があって、

その一帯が、種子油を扱っている区域のはずだ。

私達が通ってきた白河側には綾織国があって、

そちら側には織物通りができている。」

「・・・確か、ヒト族の国でしたね。」


カスビが思い出したように言った。

幼鳥院では、エリートコースもあり、外国事情についても教えているが、

その内容を覚えているとは。

流石(さすが)、上位成績の卒業者だ。

そう伝えると、止めて下さい、と照れた様子を見せた。

可愛い部下である。


「薬類は、青河付近でしょうか。そちらも見ますか?」

「よく分かったな。うん、帝国の特産とはいえ、道中に必要な物だ。

 最低限は揃えておこう。・・・疲労回復の(たぐい)は、多めに用意しておこうな。」

「はい。・・・すいませんでした。」

「別に、恥じることはない。・・・実は、私もバテてたんだ。」


到着が半日遅れたのは、カスビとバニの疲弊(ひへい)度が高かったためだ。

(むし)ろ、あの強行軍を、よくぞ乗り切ったと()めてやりたい。


「よし。薬問屋を回る前に、武具と古道具も見ておくか。」

「え? 隊長、古道具もですか?」


荷物になるだけでは、と心配するカスビに、笑って返してやる。


「なに、息抜きさ。・・・好きだろう?」


グッと言葉に詰まったカスビを横目に、サドは次の足場を目指して羽を広げた。




ルトゥバは、湖側の半分と、青河付近が湿地帯になっている。

そのため、食料品や衣料品など、湿気が大敵の物は、

白河側の、(やぐら)を連ねた高所で管理、売買されているのだ。

低い場所は住宅地となっており、多くの水鳥がそこに住まう。

翼を持たない種族は、湿地帯をあまり訪れず、白河側で用事を済ませる。


そんな話をしながら、サドはカスビを案内した。

カスビは、物珍しそうに辺りを見ている。

特に、織物商の店頭にキラキラと光を反射する物があったとき、

通り過ぎながら凝視していた。

その様子が面白くて、サドは思わず、

気になる子へのプレゼントか、と訊いてしまった。


「・・・隊長は、こういった物はお好きですか?」


逆に、訊き返されてしまった。


「いや、派手な物は、あまり好まないな。」

「そうですか。」


カスビは、何か納得したように頷いた。

次に行こう、と促し、古道具屋の並ぶ通りに出る。



古道具とは、遺跡から発掘された昔の品を指すことが多い。

『千年に一度(アルフ・サナ)』の解明や、失われた文明の利器や技術を発見すべく、

大陸中で遺跡の発掘が進められているのだが、

その副産物として、今でも使えるが珍しくはない物も発見され、

こうして店頭に並ぶことが多々ある。

ヴィーの食道楽(くいどうらく)と同じように、カスビも出張先で古道具屋巡りをしているのを、

隊員は皆、知っていた。

使い方の分からないような物が見付かって面白いと、時々、熱っぽく語るのだ。

そんな古道具は、実は帝国から流れてくる物が多い。

国民性を生かして、4本の大河の底を探索し、

そこで発見された物を、市場に流しているからだ。

湖から入って来る物もあったが、国が乱れている今は、その流れも絶えている。




真剣な眼差しで、カスビが店を物色している。

サドは、錆の浮いた容器を元の位置に戻し、その様子を(うかが)った。


(・・・よくもまあ、そこまで熱心になれるものだな。)


幼い頃から戦闘技術を極めようとしてきたサドは、

これといって趣味を持たなかった。

それを欠点とは思っていないが、自分に無い物を持つ若者が、珍しくはある。



お待たせしました、と出てきたカスビ。


「何か買ったのか?」

「いえ、これと言った物はありませんでしたので。」

「ふーん。」

「・・・どうか、されましたか?」

「いや、あんなに熱心に見ていたから、

気に入った物が有ったのかと思ったんだが。」

「うーん、珍しい物は有りましたが、・・・大きくて。」

「そうか。それは無理だな。」


庁舎で取って置いてくれたら、感激するんですけど。

と、惜しむ様子が、また面白かった。


「はは、残念だったな。・・・じゃあ、本命の武具と薬だ。行くぞ。」

「はい!・・・ありがとうございました。」


身体も軽く、風に乗って、二人は買い物を続けた。





ユーティルとバニは、出された書類を凝視した。

本来の身分を明かす訳にはいかないので、

証書は、都市長の権限で偽造して貰ったのだが、

その内容に、お互いに戸惑っていたのだ。

否やはないが、思うところはある。

チラッとお互いの顔を見やって、二人は言葉を飲み込んだ。



昼食を取ろうと、庁舎内の食堂を探し、席に着く。

食堂での食事も、都市長権限で無料にして貰っている。


「副隊長、いいなー。」

「・・・これは、任務だ。」

「おめでとうございまーす。」

「任務上での仮の身分だ。揶揄(からか)うな。」


バニは、ユーティルの尾羽が激しく開閉するのを見て、

むっつりも大変だなー、と感想を抱く。

ユーティルがサドに惚れていることは、本人たち以外、全員が知っていた。

いつも一緒に行動しているのだから、それくらいは誰にでも分かる。

あの堅物カスビも、早々に気が付いたのだ。


(隊長は、・・・本当に気付いてないのかな?

 気付かない振りはー、いやー、やっぱり隊長には出来そうにないなー。)


証書には、5羽全員を親戚扱いにしていたが、無理があるんじゃない?と、

思うバニだ。


(夫婦に、甥と姪に、遠縁の叔父?)


何とも、(まと)まりのない集団だ。

しかし、案外、行商人とはこういう物かもなのかもしれない。

バニが知らないだけで、これが当然のことという可能性がある。

何せ、切れ者で名高いムスアナン都市長の差配(さはい)だ。



「何か食べよう。」


動揺から少し立ち直った様子のユーティルが、メニューを指して言った。


「うーん、どうせタダなら、一番高いの食べたいですよねー。」

「・・・筋肉はどうしたんだ。」

「筋肉込みで、検討中ですー。」

「そうか。・・・・・・はあ。」

「決ーめた!白魚の踊り食いにします!」


水を取ってきますねー、と席を立ち、注文をユーティルに任せる。

他の隊員と合流するまでに、あのソワソワを落ち着かせてやらないと、と、

バニは計算する。

これでも、この恋路は応援しているのだ。

同期の友人とも、お似合いよねー、と話している。


(結婚しても、隊長は下りなさそうだなー。)


仕事命、と翼に書いていそうな両人である。

どう転ぶにしても、この部隊が気に入っているバニは、

この距離感を保ったまま、一緒に仕事をして欲しいと、望んでいた。


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