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チュウヒ隊

共和国と王国の会談から3日。

神聖なる蛇(アフ・カダス)』を囲う、中央山脈を迂回しながら、

チュウヒ隊は編隊飛行を続けていた。

先頭を行くサドは、時折、後に続く隊員たちの様子を確認している。

大陸を横断するような超長距離飛行は、サド自身も久しぶりであり、

率いる隊員も同様である。

隊長である彼女は、彼らの体調も把握して、適宜(てきぎ)、休憩を入れなければならない。


「お、隊長。見えてきました!白河ですよ!」


ヴィーが声を上げた。

目を凝らすと、確かに水面の輝きが見える。


「よし、では一気に河岸まで行くぞ!

タハタディムに着いたら休憩する!白河越えは明日だ、いいな!」

「「「「了解!」」」」


休憩と聞いて、士気が上がる。

翼が少し揺れていたバニも、体勢を立て直したようだ。


「よし、魚だ!久しぶりに食えるぞ!」

「・・・王国でも出して貰ったじゃないですか。」

「ばっか。あそこのは塩気が強すぎるだろうが。やっぱ、魚は川魚だろ。」

「ヴィーは文句ばっかりですねー。」

「せめて、注文が多いと言え。俺はグルメなんだよ。」


タハタディムに駐在経験のあるヴィーは、確かにグルメだ。

前方にある河岸の街は、川魚の種類が多く、また脂がのっていることで有名だ。

チュウヒ隊は、出張の多い部隊であるため、

各国の食事は、全員が一通り味わっている。

その中でも、食べられれば何でもいい隊員が3羽。

隊長のサドと、副隊長のユーティル、一番若いカスビだ。

バニとヴィーは食事に(こだわ)るタイプで、バニは身体の肉付きを気にする女子。

ヴィーは、出張先で味付けまで研究してくる、中堅の男性である。

舌が贅沢(ぜいたく)になり過ぎて辛い、とは、本人の談だ。


「塩気が強いなら、水でも飲んで中和すればいいじゃないですか。」

「カスビ。食事は化学だが、化学じゃないんだぞ?」

「意味が分からないです。」

「お前、若いんだから、もうちょっと好奇心を持てよ。」

「・・・」

「お喋りも程々にしておけ。川まで辿(たど)り着けなくなるぞ。」

「はい、すみません。」

「はーい。」

「あいあい。」


副隊長のユーティルが軽く注意した。

サドは、若いカスビが気になっていた。

堅物な彼が、更に固くなっているように感じる。

やはり、今回の任務を重く感じているのかもしれない。

しかし、それはサドも同じだった。


(・・・共和国の行く末を、大なり小なり左右することになるんだからな。)


思い詰める癖がある自分を追い込むのは、悪手だと分かってはいたが、

サドは、責任の重さを今一度、確かめておきたかった。





共和国使節団の儀仗兵の一員として、

サド率いるチュウヒ隊は、王国の王冠諸島に来ていた。

統領達は、すでに会談の着地点を決めており、

会談結果が出れば、すぐに任務に入るよう、

サドは、統領ワジャから直々に、言い渡されていた。


内容は、獣勇国との関わりが強い、帝国における、書の捜索と情勢調査だ。

帝国は、海側から見て、大陸を挟んだ向こう側に位置し、

王国よりも、共和国が自ら調査すべき場所なのだが、

空の王(マレク・サマ)』がその地点に到達するのは、半年後なのである。

王国の支援を取り付けた今、迅速な行動が求められていることと、

保守的な傾向が強く、現状では、

国家規模で大々的に関わることが難しい国であることから、

チュウヒ隊が、調査隊として現地に飛ぶことになったのである。

大手を振って入国することは出来ないので、

中継地点にある都市、ルトゥバから潜入する予定だ。

都市長宛()ての書状も預かっており、案内人を付けてもらう手筈(てはず)になっている。




背中の筒の重みを確かめていると、タハタディムが見えてきた。


流れが、大陸一速い大河は、

その飛沫で白く見えることから、白河と名付けられた。

大陸中央の山脈を割って、真っ直ぐ駆け抜ける水流は、上流になるほど激しくなり、

穏やかな下流と違って、泳いで渡るのは困難を極める。

そのため、翼を持つ者が、渡しとして活躍している。

そんな彼らが集まりできた町が、タハタディムだ。

休憩地として、ここ以上に相応しい街もないだろう。


サドは隊員に合図を送り、ゆっくりと高度を落とした。





宿は、男女で別れて2部屋を取る。

ヴィーお勧めの店で、早めの夕食を取りながら、しばし羽を休めた。


「筋肉を、もう少ーし、胸の方に欲しいんですよねー。

せめて、隊長くらいにはなりたいなー。」

「バニ、それはセクハラではないか?」

「女同士ですけど?!」

「隊長がセクハラと感じたら、それはセクハラでしょう。

 ・・・どうですか、サド隊長。」

「いや、私は、特に何も感じないが・・・」

「ほーら、副隊長!大丈夫じゃないですかー。」

「・・・そうですか。」

「なんでそんな残念そうなんだよ。

 でもって、カスビ。お前は、もうちょっと美味しそうに食えよ。」

「美味しいですよ?いやー流石、ヴィーさん。いい店知ってますねー。」

「棒読みで褒められても、嬉しかねーよ。」


徐々に店内が活気づき始めた。

そろそろ書き入れ時なのだろう。

あまり長居すると迷惑だろう、と、サドは隊員に目で訴えた。

任務については、このタイミングが一番話しやすい。


「そういえば、隊長は帝国に行かれたことはありますか?」

「いや、私も初めてだ。」

「ヴィー、どんな所なのー?」

「え?いや、俺も知らねーぞ?」

「はい?あそこで取れた果実は美味い、とか言ってたじゃないですか。」

「経由して入ってきたのを食べただけで、現地で食べたわけじゃない。」

「えー?じゃあ、何を楽しみに行ったらいいんですかー。」

「バニ先輩は、体形を気にする割に偏食しますよね。」

「男子うるさい。」

「バニ。任務に赴くのだから、食事のことは忘れろ。」

「副隊長ひどい。お肉は口からなのにー。」

「では、やはり現地に詳しい者と、行商人を(よそお)って行動した方が良さそうだな。」

「そうですね。・・・品物の仕入れは、どこでしますか?」

「帝国では手に入れにくい物で、()つ、需要がある物だな。」

「運び易さも考慮すべきと、具申致します!」

「・・・まあ、そうだな。」

「楽しようとすんなよ、バニ。なら、塩はどうだ。」

「行商にしては、荷が小さいと怪しまれませんかね?」

「中継都市長が、手助けをしてくれるはずだ。

 それに、試供品だとでも言っておけば、帝国内をウロウロする理由になるさ。

 ・・・異論はあるか?」


顔を見合わせ、案が可決される。

交通の要所ということは、交易の要所ということでもある。

階下の翼を持たざる者たちを見渡し、見知った者がいないかをヴィーが探る。

タハタディムは、塩田で知られる黒河にも近く、安くてもそれなりの物が買える。

塩の手配をヴィーとカスビに任せ、3羽は、宿で明日の工程の確認をした。

何事もなければ、明後日の日暮れには、中継都市ルトゥバに到着できるだろう。

手配組が戻り、出立時間を確認すると、

チュウヒ隊は部屋に戻って、しばしの休息をとった。


チュウヒ隊

“白い胸” サド・アビド

“低空飛行” ユーティル・ハフィダ

“V字” シャクラ・ヴィー

“薄茶” バニ・ファティー

“葦原” マジュル・カスビ


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