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大変な生活

小魚を、昨日獲れた組と一緒にする。

その際、水替えを忘れない。

水の消費が早いので、今日中に3回目の川行きをすることになるかもしれない。

げんなりするが、仕方がない。

気分転換に何か食べたかったが、

凪は、節約のために、食事は朝夕だけと決めていた。

水分補給だけして、別の作業で気を(まぎ)らそうと考える。




(かめ)の水を大量に()いた所に、凪は来ていた。

その両手には、大量の木通(あけび)の種。

木通(あけび)は、美味しかったが、食べられる部分が少なく、ほとんどが種だった。

出来れば栽培したいが、詳しい栽培方法は、“知識”も知らないらしい。

ならば、自分の持ちうる記憶の範囲で、何とかするしかない。

諦めたら、何も得られないのだ。

幸い、凪の祖母は畑をやっていた。

そして、母も一時、ガーデニングをやっていた。

二人がしていたことで共通することと言えば、種を一つ一つ、別々に、

ブヨブヨの小さなプランターに植えて、芽が出たら植え替えていたことだろうか。


(近くで育てると、お互いに栄養を取り合ってしまうから、かな?)


(もっと)もらしい理由をくっ付けて、凪は納得する。

この場所を選んだのは、すでに水を遣らなくてもいい状態になっていたからである。

正しいかどうかは分からないが、今は水不足なので、こうするしかない。



太めの枝で地面を掘り起こし、親指と人差し指を広げて間隔を計りながら、

凪は、一粒一粒、丁寧に埋めていった。

木通は、一体いつ頃に実を付けるのだろうか。

桃栗三年、から始まる文言を思い出し、最短で三年か?と、がっかりする。

凪が生きている間に、是非とも実って欲しい。


初めに種を埋めた辺りに、細い小枝を()しておいたので、

どこに埋めたかがすぐにわかる。

15粒で列を変え、それを10回繰り返したところで、凪は音を上げた。

まだ種は残っていたが、気力の限界である。


(農業って、こんなに大変だったんだなー。

 ごめん、祖母(ばあ)ちゃん。今度、帰ったら、何か手伝うな。)


四隅(よすみ)()した小枝が、凪の小さな畑を、誇らしげに示している。

残りの種は、また別の日に撒こう、と、

凪は、バキバキと鳴る背骨を伸ばして、立ち上がった。

これから、もう一度、川に行って、本日最後の水汲みである。





暖炉から、香ばしい匂いが漂う。

初めてにしては、かなり巧い3枚下ろしだと思う。

パチパチと爆ぜる小枝の音を聞きながら、凪は、魚の骨で細工をしていた。

かなり頑丈そうだったので、釣り針に使えそうだったのである。


(人間、色んなことを思い付くもんだよなー。)


更に凪は、新たな草の結び方に挑戦しようと思っていた。

そろそろコイが良い具合に焼けたので、そちらを1枚、食べてからの話だが。

もう1枚は、明日に取り置く。

しかし、芋の残量が心許無くなってきた。


(そもそも、外から持ち込んだものなのか?

 こんな森の中で、芋は栽培できないだろうし・・・・・・

 うーん、でも、探してみる価値はあるよな。

 野生の芋とか、日本にもあるし。)


芋以外にも、山菜が採れるかもしれない。

キノコは、間違えたら怖いので、自粛する。

ここまで、“知識”が間違えたことは無かったが、

キノコの判別のような、命に(かか)わる場面で、依存したくはなかった。

キノコ学は、もう少し、余裕が出来てから(たしな)みたい。



コイをペロリと平らげ、刺していた枝にこびり付いた身を、(かじ)り取る。

やはり、これだけでは足りない。

ここ数日、働き詰めの身体に、魚半分は辛すぎる。

もう少し、腹持ちの良いものが欲しい。

服の臭いも気になってきた。

そういえば、あの行水以降、顔以外を洗っていない。

挙げれば切りのない不満が、次々と吹き上がって来る。

が、どんなに不潔になろうと、まずは食料の安定的な確保が優先だ。


(・・・どうしよう。人前に出るのが恥ずかしくなってきた。)


しかし、助けを求める心は、

満たされた生活を送っていたときのプライドを凌駕(りょうが)した。


(そうだ、人は見かけじゃない。魂だ!

 清貧って言葉もあるだろう?仙人になったと思えばいい。

 それか、あれだ。

山籠もりして修行する、お坊さんとか武士とかになったと思え!)


清貧。いい言葉である。

明日も川に漁に行って、帰ったら森を探索だ。

草を結びながら、凪は欠伸が治まらなくなるまで作業を続けた。


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