効率的な生活
大甕を乾かしがてら、小枝拾いをしておこうと、凪は森の入り口に戻った。
川辺に甕を据え、身軽になって、濡れていない小枝を拾っていく。
新しいバケツを作るための、あの葉っぱも欲しい。
せっかく甕を運んで来たのだから、持てる程度に水も入れて帰りたいのだ。
体力の温存が大切なサバイバルでは、効率的な行動が大事なのだと実感した凪は、
何をするにも、ついでに出来ることがないか、探すようになっていた。
(・・・よく考えたら、
漏れても大丈夫な外に出しておけば、漏れのある葉っぱバケツも使えるよな。
木通の実の皮は、水に浸して灰汁抜きすれば、食べられるらしいし、
それに使おうかな。もうちょっとで捨てちゃうところだったんだよな。
“知識”様々だ。)
凪はすでに、息をするように“知識”を使えるようになっていた。
両手で握れるくらいの束になるまで小枝を拾った凪は、
それをハンモック・バッグに仕舞い、葉っぱバケツを作りながら、川辺に戻った。
葉の付け根を長めに取り、その部分で結んだので、昨日より簡易だ。
そして、それを使って甕に水を入れる。
半時間かかる距離を持ち運べる重さを見計らうのが、難しかった。
家に戻るころには、凪の腕の筋肉はプルプルと限界を訴えていた。
足も、もう歩きたくないと言っている。
が、これからもう一度、あそこに戻って、
罠や仕掛けの成果を確認しなければならない。
(簡単に踏破できる筋肉が、早く欲しい・・・)
川に通い続けることで、モヤシの脚の筋肉も成長してくれるだろうか。
筋肉を休ませている間に、木通の灰汁抜きをする。
家の表に、乾かしていた薪を組み直し、水を汲んだ葉っぱバケツを設置する。
そして、薄めにスライスした木通の皮を漬ける。
これだけでいいらしい。
木通は、種が多くて食べづらかったが、甘くて美味しかった。
皮は、果たしてどんな味がするのか。
さっぱりとした甘みがあるといいな、と凪は期待した。
続いては、魚だ。
水を入れ換えて、酸素を供給しなければならない。
桶からバケツへ、バケツから水を変えた桶へ、魚を移す。
手間がかかるが、非常食には生きていてもらわなければならない。
生き物の世話は大変だ、と息を吐いたところで、実家の犬を思い出した。
(・・・よく、散歩中に走り出して、他所の犬に戯れ付いてたっけ。
離れてまだ4日なのに、何だか、もう懐かしいな。
・・・帰ろう。生き残って、早く帰ろう。)
ぼんやりそう思っていると、指先に覚えのある感触がした。
―――ツンツン
ハッと手元を見ると、桶に入ってしまっていた指を、2匹の魚が突いていた。
(こ、これは、ドクター?!)
何と、あの罠の中に紛れ込んでいたらしい。
死なせてしまわなくて、本当に良かった。
思わぬ再会にジーンとする、が、迷いが生まれる。
川にお帰り頂いた方が、ドクターにとっては良いのだろう。
しかし、いつでも会える場所にいて欲しい。
餌なら、俺の指の皮をあげるから!
迷った挙句、丁寧に世話をすることで、許してもらおうと決めた凪だった。
装備を確かめて、再び出かける準備をする。
ハンモック・バッグ、ナイフ、
新しい方の葉っぱバケツ、昨夜の内に修理した罠だ。
今日は漁をメインにすると決めたので、弓矢セットは持って行かない。
よし、と気合を入れ直して、凪は川に向かった。
だんだん見慣れてきた道だが、
小枝拾いと、食べられそうな実や使えそうな植物を探しながら歩いていると、
時々、道を外れそうになってしまう。
特に、草の丈が高く、踏み分けて進まなければならない場所だ。
何度も通ったおかげで、道に幅ができ始めていたが、
虫やヘビにも気を付けなければならないので、
道中は、なかなか気が休まらないのだった。




