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潮風のテラス

「ああ、良かったです。ハラハラドキドキ致しました。」


会談の後、女王の誘いに乗り、

アラザフィラは、ワジャの供という形で、午後のお茶を楽しんでいた。

このホテルの一室に集まったのは、式典で同席した4人である。


「そうですなぁ、ショウは本当に頭が切れる。

 ぜひ兄弟杯を受けて欲しいのですが、

女王陛下からも一言、言ってやって下さいませんか?」

「・・・?兄弟、杯ですか?」

「そうです。今日から兄弟だと、絆を誓い合う儀式ですよ。

 俺とアラザフィラもしたんですよ。」

「へええ。何だか、とても羨ましいです。

 (わたくし)も、ショウとそんな強い絆が欲しいですわ・・・。」

「いらんことを言うな!」


公式な席ではないので、双方とも口調が砕けている。

放っておく内に、話がどんどんややこしい方向に転がっていきそうだったので、

アラザフィラは、ワジャを爪で引っ掻いてやった。

ショウも思うところがあったのか、指でワジャの身体を突いている。

(もっと)も、羽毛におおわれたワジャの身体は、多少、爪を立てられようが、突かれようが、ビクともしないのだが。

話を変えるべく、ショウに話を振ってやる。


「それにしても、確執(かくしつ)とは根深いな。

 我が国のごうとはいえ、いまだに、国交を快く思っていない領主がいるのか。」

「まあ、ね。でも、気にしないでください。

 当時、貴方は統領じゃなかった訳ですし、私が知るずっと以前から、

 それこそ、ここがまだ帝国だった時代から、この争いはあったんですから。」


争い、と聞いて、女王の顔が少しくもった。

嫌なことを思い出させてしまったかもしれない、と慌てていると、

目の前をワジャの足がヒョイと通り、菓子を摘まんで皿に持って行った。


「部族単位でのめ事は、いつでもどこでも起きるもんですなあ。・・・カリッ。

大陸内でも色々あるみたいですよ。この1年も、騒々(そうぞう)しいもんでした。

でも、それにしちゃあ、今回は随分(ずいぶん)穏便(おんびん)に終わってくれたもんだ。

ショウの根回しは、深い所まで浸透したとみえますが、

こいつは頑張ってたんですか?女王陛下? ・・・カリカリカリ。」


ショウの話を振られたとたん、女王の顔がパッと明るく輝いた。


「ええ、そうです!そうなんです!

凄いんですよ!

今回のお話を頂いてすぐ、以前、一緒に旅をした方々に集まって頂いたのです

けれど、あの気難しかった老公お二人が、とうとう、ショウの下に付くと仰って、

声明せいめいを出してくださったんです!」


これにはアラザフィラも驚いた。

ショウを見やると、我関われかんせずとばかりに菓子を口に含んでいる。

が、目を少しキョトキョトさせていた。

照れているのかと思ったとき、アラザフィラは思わず口にしていた。


「我らと、はいを交わさんか?」

「いや、いい。遠慮します。」

「どうしてですか、ショウ?

 あ、どっちがお兄さんか、判らないからですか?」

「イェルト、そういう問題じゃない。今は時期的に・・・あー、その、な。」

「よいではないか、よいではないか。」

「ワジャ。言っておきますけど、“さかずき”したら、私がお兄さんですからね。」

「何ぃ?! お前、幾つだ?! ずっと年下だと思ってたのに!」

「え?統領閣下は、ショウより年下だったんですか?」

「ワジャでいいですよ、陛下。」

「兄ぃ、いいのかよ。」

「私のことも名でお呼びください。こういう場ですから。」

「よろしいのですか?

 では、(わたくし)のことも、イェルトとお呼び下さい。

 うふふ、お兄様が出来たみたいで、嬉しいです。」

「そうかー、ははは。

 ほら、イェルト殿も妹分になってくださるそうだぞ?」

「させません。いいか、イェルト。

お前が自身を政略の道具に使うのは、最後の手段だ。

 こんな、どうでもいいタイミングで身売りするんじゃない。

 こいつらが望むのなら、一番高く売れるときをはかるんだ。」

「いや、私たちの前で言うことではないだろうに。

ふむ、そんなつもりで言った訳じゃないんだが・・・」

「では、お名前でお呼びするのも、ダメなのでしょうか・・・」

「名前はオーケーです。」

「イェルト殿、俺はいつでも兄になる心でいるからな。」

「あんまり押すと、引かれるぞワジャ。

 ではまた、すきを見て申し込みますね、イェルト殿。」

「はい!お待ちしております!」

「お申し込みは不要です。お持ち帰りください。」



潮風の吹き抜けるテラスからは、

いつまでも楽しそうに談笑する声が聞こえていた。


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