1 異世界行ってみました。
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俺は西村昇。35歳。
そして、現在、西暦2090年。
実はこの時代、特定の人間だけが、ほぼ魔法に等しいような超技術を使えるようになっている。
と言うのも、実は人間の科学力で……聖剣や神器などを人工で作れるようになっている。
勿論、完璧とまでは言えないが精度99%、ほぼ100%の完成度で聖剣や神器を開発できるようになっている。
勿論、一部の人間の間でしか、開発も使用もできないが、俺はその一部の人間の一人だ。
俺は、この時代では特殊な部類の人間だったから、自由に開発された神器などを購入することができた。
それで俺は沢山武器を集めることにした。
勿論、使用には制限があるから、そんな武器を何もかも自由に使っていいと言う訳ではないが、俺は集めることはできた。
また、神器や聖剣などは、当然誰でも使えるようなものではなく特定の人間だけしか使えないが、俺は使える人間だった。
俺は用心深い性格だったから、大量に集めることにした。
また、嘗ては物語の中だけのイベントであった『異世界召喚』も、この時代では方法が見つかっている。
現在では“召喚”ではなく『異世界旅行』と言った形で自分から異世界に行くことが出来る技術も存在している。
但し、繰り返すが、特定の人間だけしかできないし、異世界は危険が多すぎるので滅多に行きたがる人間は居ない……。
だが、俺は行きたかった。昔から小説やゲームの中だけの世界に、危険があっても行ってみたかった。
魔法を使って魔物が居る世界で、自分自身が勇者になって、敵と戦う冒険がしたかった。
ずっと昔からの、叶わないはずの夢だった……。
――叶わないはずだった。この時代までは……。
◆◇◆◇
正直、異世界に行ったことに大した理由はなかった。
「現実世界が楽しくない」とか、そんな理由もあるけど、別にそんなことはない。
楽しくないと言えば、楽しくないことの方が多いけど、「別の世界に逃げたい」と言うほどでもない。
本当に、興味本意の様なものだ。
それほど大きな理由はない。
「とりあえず行ってみるか……」程度の動機しかなかった。
しかし……うーーん……。
これはマズイ……。
これは本当に、ドラクエの世界の様だった。
最初は楽園のような場所を想像していたんだけど、これは……どっちかというと地獄に近い……。
人間が全然いねぇ……。
それに完全に荒れ果ててる……到底楽園じゃねぇ……。
もっと自然豊かな場所かと思った……しかし荒廃していて、人間が楽しめるような自然なんかほとんどなかった。
「南国のリゾート」じゃなかった。
こんな場所かよ……これは楽しくないぞ……俺が元いた場所よりも……。
もう、本当にドラクエの様に少し道を歩いただけで、魔物と遭遇して特定の街や村とかしか、人間が住んでいない。
この世界を治めているのは、人間ではなくて魔王だった……。
それにこの世界は、魔物が強すぎるし、人間が非力すぎるから到底、魔物に勝つのは無理そうだ。
正直、大量に武器を所持している俺以外、誰も戦うことが出来そうにない状態だ……。
なんかスラム街(スラム世界)に来たような感じがする。
そもそも、多少この世界を回ったけど国があるのかどうかもよく分からない……あるのは、魔物や食べれない草とかスラムのような村ばっかり。
多分これじゃ、永遠に人間に未来はないだろう。
やっぱり帰るか……?
いくら俺でもこの世界を一瞬で変えるのは無理だ……。
観光感覚で来たのに……。
どうしよう……。
全然観光じゃないよな……とりあえず、少し歩くか。
しかし、魔物だらけだ。本当に。
数メートル歩いたら、魔物……また少し歩いたら魔物……スライム潰すみたいに弱いけど、いい加減だるい。
勘弁してくれよ……全然前に進まないだろ。
――もう、どれだけザコ敵潰したか分からないし……200ぐらいは倒したか?
ゲームならだいぶレベルが上がるはずなんだが、実際レベルなんかない。
お……漸くなんか村が見えてきたぞ。やっと来たよ、長かった……。
――――って襲撃されてるじゃんか……これはマズイな……助けてやるか。
しかし、あんなザコ敵に誰も勝てないのかよ……。
◆◇◆◇
ボクはジュール。14歳。
魔物だらけの世界の村で生きる少年の一人だ。
少し前に両親は魔物に殺されてしまったから今は妹のサーシャと二人だけで暮らしてる。
見ての通りこの世界は、魔物だらけなんだ。人間の居場所なんか、少しかないんだ……。
それに、食料も水も少ししかなくて本当に生きるだけ大変なんだ。
人間が集まってる村だけは、なんとか魔物が入らないようにしているけど、たった一人で子供が村の外に出ることは出来ないんだ……。
ボクは生まれた時から、ずっとこの小さな村の中に居る。ここだけしかボクら、人間の居場所は、今はないんだ……。
村の人は、みんないい人だけど、毎日怯えながら暮らしてる「もし、魔物がせめて来たら……もし、魔物が……」って、ずっと怯えてる。
ボクも……人間は弱いから。
でも、魔物は本当に強い、ボクら人間が何人も束になって漸く一体か二対倒せるぐらいだ。それぐらい強い。
そんな、魔物だらけのこの世界に希望は見えない……。
なんとか、毎日毎日少ない食料でギリギリの生活をするだけで精一杯なんだよね。
それに、当然のことだけどここでは誰も長生きができない、少しでも体が悪くなったらそれまで……お迎えを待つだけ……。
本当に奇跡でも起きないと、ボクらの生活は何も変わらない。
でも、奇跡は起こらないから奇跡なんだよね……。
また今日も、先が見えない最悪な1日が始まるよ……。
いつもいつも「今日は魔物の襲撃は受けなかった……今日はまだ何もなかった……今日は……」って、みんなそんなことを考えながら暮らしてるこの暮らしは本当に心が休まる時が全くない。
まあ、この世界はどこに行っても安住の地はないんだけどね……。
どこに行っても、心が休まるところもないんだよね。
今日は……楽しく暮らせるかなぁ~~今日一日、生き延びるだけでも大変な世界なんだよなぁ……腹も減ってきた……。
サーシャに何でもいいから、沢山食べ物を食べさせてあげたいな。
◆◇◆◇
「魔物だぁ~~! 魔物が襲って来たぞ~~」
「みんな早く逃げろ~~~」
今日1日も、無理だったな……まあ、こんなこともいつものことなんだよね……。
「お兄ちゃん……」
「サーシャ、逃げるよ」
とにかく、サーシャを連れてすぐに逃げないと……。
確保されている、安全な所まで……。
「サーシャ、走るよ」
「うん」
ボクはサーシャと手を繋いで全力で走った。
こういった魔物の襲撃は、なんら珍しい事じゃないから、こんな時は村人全員でどこか別の安全な場所まで非難することになってる。
勿論、走って遠くの村まで逃げるのは難しいから、魔術を使える神官とか魔術師に、遠くまで送ってもらってる。
それといつも、こういった万が一の時のために、魔物が少ない安全な場所をいつも確保している。
そういった場所に、ボク達は移り住んでいるんだ。
なんだけど……。
「神官が敵にやられたぞ~~~!」
えっ……。
「魔術師もやられたぞぉ~~」
ええっっ……。
「みんな、走って逃げるしかないぞ~~」
「そんなの無理だって……」
そんなの無理だよ……大人でも難しいのに、子供の足で走って逃げるなんて……。
それに遠すぎるし、別の村までなんか魔法でも使わないと走って着くような距離じゃないし……村の外は魔物だらけだし……。
ボクはサーシャを連れて、ひとまず物陰に隠れた。
……どうやら今日までかな、本当に短い人生だったな……。
他の人も、こういったことが原因でよく命を落としてるし、珍しい事じゃないしね。
でも、サーシャが……。
……いや、無理だな……どうしても、ボク一人の力で、サーシャを守りきるなんて無理だ。
やっぱり、今日までかな……こういう事は、本当に良くある……元々、この世界で長生きしようとか考えること自体が出来ないことだからね。
ボクは、しゃがんでサーシャと目線を合わせて伝えることにした。
「サーシャ……あのね、本当にこんなことは言いたくないけど……今日で最後かもしれない、ボク一人の力じゃ、サーシャを守ってあげることはできないんだ……」
「……んんっ……お兄ちゃん……」
サーシャは、唇を噛みながら涙をこらえていた。本当にごめん、自分一人も守れないのにサーシャを守ってあげる事なんて出来ないんだよ……。
本当にごめん。ボクは本当に弱い……。
自分も妹も守れない、本当に悔しいけどこれがこの世界の掟“力こそすべて”決して逆らうことが出来ない掟なんだよ……。
「ゴメンねサーシャ……どうせなら、もっと沢山遊んでいればよかったね……もっと沢山ご飯、食べたかったね……ゴメンね、本当に……」
「ううん、お兄ちゃん。いつも一緒に居てくれて、楽しかったし嬉しかったよ……ご飯は少ないけど、おなか一杯になったよ」
サーシャは、涙を浮かべながらも笑顔で話してくれた。
「本当にゴメンね……」
気付いたら、そこらじゅう敵だらけだった。辛うじてボク達は見つかってないけど、逃げ惑う人を追いかける魔物がすぐ近くに迫っていた……。
もう逃げることは出来ない。既に沢山、村人は殺されてしまってる……ボク等もあと数分の命だろう。
ボクは座って、サーシャを抱きしめて残り少ない時間で必死に考えた。何か生きる方法はないか? と、殆んど絶望的な状況で考えた。
……やっぱり何もない。ただ見つからないようにするぐらいだけど、魔物は鼻が効くし、こんな場所すぐにバレてしまう……。
とりあえず、空き家に隠れてるけど助かる道なんか、何度考えてもない。
周り敵だらけだし、こんな所、壊そうと思ったら、すぐに壊されてしまうし……。
もう、少しの時間を祈るしかできない。
やっぱり死にたくない……。
――ってバレた!
「お兄ちゃんっ!」
「逃げるよ」
ボクはサーシャを連れて空き家を飛び出したけど――何処にも逃げ場がない、もう右も左も魔物だらけ。
もう無理だよ……。
「サーシャっ」
ボクは、サーシャを抱きしめた。こんなことしかできない、せめてボクが楯になるぐらいのことしか……これが精一杯だ。
「ゴメンね、本当に……次生まれてくるときもまた兄弟で居たいね」
「お兄ちゃん……ありがとう」
サーシャは涙を浮かべて、震えた声で礼を言ってくれた。
直後、周りの魔物の視線がボク等に向いた。魔物が全員襲ってきた……。
ごめん、本当に……。
サーシャ、来世では必ず幸せにしてやるからね……。
ボクと妹の短い人生はここで終わった――――と思ったけど……。
――轟!
突如、ボクらの周りに、爆風の様なものが走った……。
――突然、魔物が消えた。と言うか、死んだ……。
……一気に誰かに倒された……。
周りには、バラバラになった魔物の死体が転がっていた。
何? 誰? 何が起きたんだ?
「全くさぁ……帰るに帰れないだろ……こんな修羅場見せられたら」
見慣れない姿の聖剣? の様なものを持った剣士? の様な人が近くに立っていた。
ボクは一度、サーシャと顔を見合わせてから、その人にもう一度、視線を送った。
「ザコは蹴散らしたぞ、安心しな」
「……あなたは……どなたですか?」
「俺は……えーと……旅人……かな、旅人だな」
「えっと、どこの村の人ですか?」
「ええっと、村って言うか俺は全く違う場所から来たんだよね」
その人は、なんか説明に困ってるようだった……。
「まあ、とりあえず安心しなって、敵は俺が倒すから……ほら、来いよ」
ボクはまた、サーシャと顔を見合わせてから、その人に話しかけた。
「ありがとうございます……」
◆◇◆◇
「さて、いったん完了っと」
パンパン、と手を叩きながら彼は話した。
この人は、すごく強くて村の魔物を一度全部追い払ってくれた。
村に一旦平和が戻った。
荒らされた後だけど、ボクらは一旦家に戻った。
今は安全なんだけど、ボクが死を覚悟した瞬間からサーシャはずっとボクにしがみ付いて離れない。
そういうボクもまだ体が震えている……。
本当に今日は死を覚悟した日だった。
「えっと、ジュール君と、サーシャちゃんかな、俺は昇って言うんだ、よろしくね」
「よろしくです……」
とりあえず、ボクらがこの人と最初に、話をすることになった。
「……体が震えてるな……まあ無理もない、少し前に、死を覚悟したばかりだろうからな……でも安心するといい、これからは安全だよ」
「ありがとうございます」
正直、まだこの人を信じていいのかどうかは、分からないけど、助けてくれたから敵ではないと思う。
「ええっと……それで……何から話したらいいかな……」
確かに、一体何から、どこから話したらいいのかがよく分からない……。
サーシャは、ボクにしがみ付いてて、話せる状況じゃないし……それになんか疲れてしまったんだよね。
「疲れたか? いったん休む? こんなことが起こった後だからね……」
「すいません……ボクもサーシャも、って」
サーシャはスースーと眠ってた……。
「先に寝ちゃってるね……寝かしておいてあげなよ」
「すいません……」
「いいよ、君も一旦休みなよ。俺は村の人と話してくるから」
「ありがとうございます……」
彼はそういって家から出て行った。それでボクは一旦仮眠をとることにした……頭が全然働かない……本当に疲れすぎた。
◆◇◆◇
「やっぱ帰る事なんかできないし……どーしよっかなぁ~~」
俺は英雄って訳じゃないけど、この状況で帰ってしまうのは勝手すぎる……。
RPGじゃないけど、本当にこの世界を救えるのは俺だけって感じがする。
と言う訳で、一旦ここにのここることにした幸い時間の進み方とかは、どっちの世界も大差なかったしそれは幸いだった。
それとなんか、俺が一気に魔物を倒したから、この村の人からは英雄って感じに思われて取り囲まれてしまってる……。
「ありがとうございます……本当に助かりました」
「ありがたや~~ありがたや~~~」
「本当に助かりました、貴方の様な英雄が来てくれて本当にうれしい限りです……」
「貴方の様な英雄が来てくれる日を、ずっとお待ちしておりました。ありがとうございます~」
恐縮ですが、俺は英雄じゃないんだけどな……どっちかと言うと旅人で……それに俺、全然強くないよ……強いのは全部武器の力で……。
って、嬉しい誤解だけど、本当のことを説明すると幻滅されるし……。言えないよね……。
えーっと、どうしよっかな……なんて設定にしようかな……。
「えーっと、どうもみなさん……あの……とりあえず……」
えっと、自己紹介から始めようかな。
「自己紹介をさせてもらってもいいですか?」
まず、最初はこれだよね……。
「ぜひ教えてほしいです!」
「はい! どうぞ仰ってくださいませ」
「みんな、静かに……救世主が名前を言って下さるぞ!」
名前ぐらいで何だよ……大げさな……。
「あの、俺は、ノボルと言います。どうぞよろしく……」
よろしく……。
「「「おおお~~~!」」」
「さすがは救世主、心に響く何と良い名前だ……」
「「素晴らしい名前だ~」」
「こんな、名前を聞いていい気分になったのは久しぶりだ」
「ノボル様~」
……嬉しいが、ホントかよ……実は俺の名前なんだが、親に名前の動機を聞いたことがあったんだけど、その時にこう言ってた「俺の飼ってた犬の名前を付けただけ……」って親父が言ってたんだよね……犬の名前だぜ。
なんなんだよ、この騒ぎ様……嬉しいけど……。
買い被りだって。
「あ~どうも……あの、そいや皆さん」
そう言えば、なんか忘れてると思ったら……ケガ人が結構沢山いるはずだよな、この襲撃の後じゃ……治療してあげないと……。
俺の武器は、戦いの力以外にも超回復とか、解毒といった能力もあるし。
武器を沢山揃えといてよかった~。
「あの、これだけの襲撃の後じゃ、怪我をしてる人とかが沢山居るでしょう? 詳しい話は後で、治療をしましょう」
俺はケガ人の治療をしてあげることにした。これだけの武器を所持した俺にとっては、ケガ人の治療ぐらい、朝飯前だった。
どうもありがとうございます。