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そうだカフェを開こう

  昨日はいろいろなことがあったから疲れて眠ってしまったらしい。

  自家発電にて体力を使い果たし意識を失ったわけではなくて、そもそも昨日一日がハードだったのだ。

  自家発電に関しても俺は妹とよく似た身体をした子にさえ欲情したということではない。

  妹に興奮するような性癖は持ち合わせていない。

  だから、そう、


「俺はクロエに欲情したんだ」


「え、そうなの? えっと……ほどほどにね?」


  ニヤニヤしながらクロエが答える。

  いつのまにか部屋の戸は開いていてそこにクロエが立ち尽くす形でその言葉を聞いていたらしい。


「何しにきたんだ? ノックは?」


「ノックしたけど返事がなくてさ。 朝ごはんできたから呼びにきたよ」


「あの……この事は内密に」


「さーてねー」


  悪戯っぽくクロエが笑いかける。

  こんなことがアカネに知れたらどんな顔をすればいいのか。


「あ、そうそう。昨日はの報酬貰ってきたわよ。買い物行ってきてもいいかな」


「いや、俺が預かるよ。 お前に任せるとまた金がなくなりそうだ。朝食をとったら一緒に行こう」


「えー、お金なんて持ってても何も救えないよー。ガンガン使っていかなきゃ」


  何を言っているんだこの女は?


「金が無ければ何もできないだろうが」


  少し口論になったが使い道があることを説明する事で俺が管理することにクロエはしぶしぶ同意してくれた。

  今日はやや暑い晴れの日、そんな日にちょうどいいさっぱりとしそうなサラダにパンとバターがならび、紅茶が添えられていた。

  朝食の席にはもうすでにアカネの姿があるが食事には手をつけていないようだ。


「先に食べていても良かったのに」


  俺がそういうとアカネは


「いえ、せっかくなのでみんなで食べたくて」


  と返してくれた。

  クロエはアカネちゃん可愛いーなどと騒がしかったが、それが朝食の雰囲気を良くし、賑やかに食べることができた。


「そうそうアカネちゃん聞いてよ! 昨日はね神様に出会ったんだよー」


  食後の紅茶をすすりながらクロエが言う。

 

「へぇ、そうなんですか? 神さま、すごいですね」


  まさかクロエのやつ死にかけたことまで全部話すつもりじゃないだろうな? まぁ話しても構わないけど、と考えて聞いていると


「そうなの、でね、金の亡者のタツヤが私のために借金してまで救ってくれたんだよ」

 

  と、結局全てを話してしまった。

  途中で止めようか考えていたがだんだんテンションを上げ嬉しそうに引き寄せられそうな笑顔で話すその姿に止めるチャンスを失ってしまった。

  嬉しそうなクロエの姿を見て、自分も嬉しい気持ちになる事に何か不思議な感情を感じているようだ。

  なんだ? この感覚……

  まぁいい、とりあえずは


「その借金を返すためにもこの2500ゴールドを有効活用するぞ」


「何に使うの?」


  クロエは興味津々と言わんばかりに聞いてくる。


「聞いて驚け、ここでカフェを開くんだ。 儲けられそうだろ?」


  二人の反応は微妙だった。

  あれ、カフェって微妙だったか? ここら近辺を見ると物を売る仕事は多いようだが飲食店の類が全くない。

  つまり需要が高いのではないかと考えたんだが。

  沈黙を破ったのはアカネからであった。


「カフェってなんですか?」


「そうそう、それってなぁに?」


  なるほど、そもそも飲食店などがこの世界にないパターンか。


「えっと、クロエが入れる紅茶や食事が美味いだろ? だから、それを売り物としてここで販売すると売れそうじゃないか?」


「もう、美味いのはタツヤの口の方じゃない」


「なるほど、それらを売るのがカフェというわけですか」


「まぁそういう事だ。 紅茶を飲むためのスペースを作ってやると居心地がいい感じに作れると思うが。 やって見ないか?」


「いいよ、やってみたい」


「そうですね、お手伝いさせていただきます」


  ここを俺たちのカフェ作りが始まった。

  まずはインテリアだが、もともと落ち着いた雰囲気であり、椅子や机だけを用意すればいいだろう。

  サイズを考えると丸い机一台110ゴールドを10台に椅子は机を四人がけで想定して、40脚だから30ゴールドのもので充分だろう。


「 さて、合計2310ゴールドだがもちろん値切るか」


  そういうと二人の視線がやや痛いものに変わる。


「言いたいことがあるなら言えよ」


「値切るなんてせこくない?」


「1日目で魔道書を値切ってきたお前がいうな」


  三人で顔合わせて笑う。

  さて、腕の見せ所だ!


「お兄さん! 机と椅子たくさん買うじゃないですかー。 だからセット料金ということで安くなりませんか?」


  現代でも通用したセールストーク、あれやこれやと言い褒めて頼んでみた結果……ダメでした。

  くそ、頑固おやじめ


「ねぇタツヤ、それってやすくしたほうがいいんだよね?」


「あぁ、安いに越したことはないがどうしてだ?」


「任せて」


  そういうと、クロエはアカネと二人で媚びた声で店主に値切り交渉を始めた。

  そんなやり方で値切ることができたら世の中そんな楽なことはない。

  そう考えていると二人は帰ってくる。


「どうだった?」


  一応聞くがどうせダメだろう。 定価は辛いが仕方あるまい。


「1500ゴールドでいいって」


  ほら、やっぱり全然……え?


「本当に1500ゴールドなのか? 間違いなく?」


  二人は顔を合わせ呼吸を合わせて同意してきた。

  俺の交渉術って一体…そういえばあっちでも妹がいないときは安くならなかったっけ。

  まぁいいだろう! 切り替えの早さ選手権日本1000位の俺がそんなこと置き去りにして次へ行く!

  悲しくなんかないもん。

 

「次は仕入れだな、 クロエはいつもどこで買ってきているんだ?」


「こっちだよ、付いてきなさい」


  そこは意外とあっさりした店で店内には多種多様な紅茶の茶葉や野菜があった。


「あら、クロエちゃんいらっしゃい。 いつものでいいかしら?」


「こんにちは、ソフィーおばさん今日は仕入れの話にきたの」


  仕入れの話? という問いに対し軽く自己紹介を済ませ事情を説明すると快く引き受けてくれ、


「じゃあ週一で茶葉と野菜をたくさん用意しておくね。代金やすくしとくから」


  と、人柄の良さを感じさせる対応をしてくれた。

  あらかた準備は整っただろうか。あと用意するのは、


「あとは看板と宣伝だな。 クロエは知り合いにたくさん宣伝しておいてくれ」


  宣伝に関してはクロエに任せても問題ないだろう。

  看板は紙を使いポスターのようなものでも掲示しておくか。

  準備万端、これで客はバッサバッサの大儲けだな。

  と思っていたのに、


「今日もお客さん来ませんね」


  と、アカネに言われてしまうほど客足は伸びない。

  もちろん全くのゼロではないのだがこのままだと赤字である。

  一週間ほどだったにもかかわらずである。


「テコ入れが必要だな」


「具体的にはどうするの?」


「それはだな…」


  言葉が詰まる。 どうするか、

  飲食店は美味しいものを出しておけば売れるという考えだったが、それは甘かった。

  クロエによるとこの世界では外食の文化はないらしい。

  外食文化が無いということは食事を売りにするより他に狙いをつけたほうがいいか、それなら


「お前らメイド服着て接客してみてくれ」


  食事や茶ではなく、他に狙いをつける。 名付けてメイド喫茶戦術だ。


「メイド服ですか? 恥ずかしいですけど、やってみます」


「メイド服着たい着たい。買ってくれるの?」


  当人たちに嫌がる節はない。 しかしメイド服っていくらするんだ?


「なぁクロエ、ここら辺で服ってどこで買うんだ?」


「しょーがないなぁ、私に付いて着て」


「わぁまた三人でお買い物楽しみです」


  クロエに連れられて着た洋服店には良く街で見る服から着方がわからないものまでたくさんあった。

  目当てのメイド服は装飾を含めすぐ見つかり試着をする。

  はじめに出て着たのはアカネであった。 背の低いアカネに合うサイズのものとなり、小さな子供のコスプレのようになっていたが可愛らしいアカネに恥じらいが加わり辛抱たまらないものとなっている。


「あの、変じゃないですか?」


「あぁ、とても似合っているよ」


「そっそうですか? えへへ」


  どうやら気に入ってくれたようだ。


「アカネちゃん可愛いよ! 食べちゃいたいくらい」


  クロエの声がする。 俺は振り返って見ると目の前の人物に目を奪われる。

  綺麗な白髪に白い肌とメイド服の相性は良く黙ってさえいれば本職にさえ見えてしまう。

  正直とても可愛い。


「あら、タツヤくん、見惚れちゃったかな?」


「あぁ、これなら金を取れると思うぜ」


「え、あぁそうね。じゃあ買おうかしら」


  クロエの態度が素っ気なくなる。 何か地雷でも踏んだか?


「タツヤさん、クロエさんは褒めて欲しいんですよ。 だから褒めてあげてください」


  アカネが小声でアドバイスをしてくれる。

  褒めるってどうするんだ…


「あのよくろえ、 それ似合ってて可愛いな」


  「ほんと? よかったー嬉しいー」


  どうやら喜んでもらえたようだ。 アカネも手でグーとメッセージをしてくる。

  しかし、本当に嬉しそうだな。 微笑ましい。

  さて、メイド服の値段だが…ふむ、値段まで微笑ましいというわけには行かないらしいい。

 

「あ、お金大丈夫?」


  クロエが問うてくる。


「まぁ想定内だな。 クエストでコツコツ稼いだ分を使えばある程度おつりはくる」


「ならこの服も買ってくれないかな?」


  クロエが服を差し出してくる。どうやら男物の服のようだ。


「これをクロエが着るのか?」


「違うよ、タツヤが着るの。 ダメかな?」


  そういえば今もまだ学ランを着ているな。 この世界に馴染むためにも服は買っておく必要があるし、勧められたのを断るもなんだから。

 

「よし、いいぞそれも買うか」


 と、いろいろな服を買っていった。


「さて、メイドカフェだが宣伝もしたし売れるだろう。 みんな頑張ろう」


「うん、頑張ろう」


「はい、頑張ります」


  三人で円陣を組む。 不安が残る、人は来てくれるだろうか。

  そんな不安とは裏腹に初日というにもかかわらずたくさんの人が来てくれた。

  接客も照れながら行うアカネや気さくに行なっているクロエのように二人だがいろんなタイプがあり、それを目当てに来る常連客もできた。

  客単価も高く一週間にて準備金であった2500ゴールドの売り上げを出してしまった。


「いやぁここまでうまくいくとは。 お前ら辛いことはないか?」


「ううん、毎日楽しいよ! アカネちゃんは?」


「私もいろいろな方とお話できて楽しいです」


  どうやら接客を楽しんでくれてるらしくこれなら長くやっていくこともできそうだ。だがいかんせんペースが早すぎる気もするな。

 

「とりあえず週4回の営業にしておいたほうがよさそうだな面の看板を調整しておくぞ」


「毎日営業の方がいいんじゃないですか?」


「そーだよ、そっちの方が稼げるよー」


「ペースが早すぎて食材の方が尽きてしまうんだ。 稼げるならもっと開きたいが来てくれる客に商品が用意できない事態を作るわけにはいかないだろ?」


  2人はなるほどと言い納得したようだ。

  メイドカフェは成功することができた。 このまま金持ちを目指していきたいものだな。そんな時黒服の男がやってきて、


「ここの店主に城内役場に来るように伝令だ」


  あれ、俺何かしたかな? 曇りにより薄暗い雰囲気の中黒服のいかつい声が響いた。


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