野獣の夜
少女は明るい茶髪を震わせながら、急いだようにして食事をすませると透き通った声で礼を言った。
「あの、ありがとうございます。 このお礼はなんといったら」
「礼はいいよ、それで代金なんだが」
そう俺がいいかと、少女は怯えた様子でこちらを覗き込んだ。 それを見たクロエが声を荒げる。
「ちょっとそんなのいいじゃないの。 お金なんていらないからね」
心外だった。俺は金のないやつから巻き上げようとするような奴ではない。 そもそも無料で施しをする方がおかしいだろ。 そう思うとやや不機嫌な声にとなり
「別に金を取ろうと言うんじゃない。 ただ素性くらいなら明かしてくれてもいいんじゃないか?」
この顔も合わせて完全に怯えさせてしまったのだろう。 少女は完全にこちらを向いてはくれなくなった。やはり子供の相手は苦手だ。 やがて、少女は口をゆっくりと開いた。
「私、その……昨日から記憶がないんです」
「そんなの大変じゃない。しばらくうちに泊まっていきなさいよ。 家賃なんていらないわよ」
「本当ですか? 助かります。 住むところも食べるものもあてがなくて困ってたんです」
「いいのよいいのよ。 そうよね、タツヤ?」
「あぁ、別にいいんじゃないか。 これから色々やるし手伝いでもしてくれたら家賃も必要ないだろ」
そう言うとクロエはとても驚いた顔して顔をひっぱたいてきた。 痛いじゃねえかなにすんだよ!
「いや、ごめんね。 金の亡者がそんなこと言うと思わなくて」
「クロエ、俺もあるぞ。お前もそれでいいよな?とりあえず自己紹介と行くか」
俺たちが簡単に名乗ると少女は困った顔してからゆっくりと答えた。
「すみません。えっと、名前も思い出せなくて…えっと、アカネとおよびください」
よろしくな、そう言い合いアカネはクロエに連れられ部屋まで向かっていった。 隣の部屋か、俺はとりあえず風呂にでも入るか。
「ふぅ、どこの世界でも風呂は気持ちがいいなぁ」
風呂は気持ちがいいのは万国共通らしい。 特に今日はいろいろなことがあったためかなり疲労がたまっている。
ガラッと風呂の戸が開いた。 どうやらクロエとアカネが入ってきたようだ。
クロエはとてもスタイルが良く透き通る肌にしなやかな髪頭の上で結う事でうなじを見せ艶やかだ。
アカネの方はというと、幼児体型だが若いゆえのみずみずしい肌が健康的だ。とてもいい。
「おう、お前らいい体してるじゃないか」
俺はキメ顔でそういった。 クロエは当然のように俺を殴ってきた。 俺は悪くないのに。
「もう、アカネちゃんもいるんだからこういうの遠慮してよね。変態」
「先に入ってたの俺なのになんで殴られなきゃいけないんだ。 慰謝料よこせ!」
「あの、すみませんこちらが悪いのに」
「いや、いいんだよ。それより俺、もう出るな?」
「いや、いいわよ?アカネちゃんもあんまり気にしてないようだし」
いやいや俺が問題なんだよ。困ったことに俺の息子は臨戦態勢なんだ。 なるほど今回のミッションはこの息子を悟られずに風呂を出ることか、シンプルだが難しいな。
なるほど、浴槽から出たらこの息子がバレるから出られないと。
「なータツヤ、背中流してよ」
この世界の女は貞操観念が低いのか。 とりあえずこの息子を沈めないことには立つことすらままならない。
「そんなことやるわけないだろ」
精一杯の抵抗だ。
「いいじゃん。洗ってよー」
まずい万事休すかと思った矢先、女神からの一声が来る。
「あの、女性と男性が体を触れ合うのはその…」
「そっそうだよ! だから俺はここでゆっくりさせてもらうぜ」
声が裏返る。 しかしなんというか、神っていうのはあのジジイじゃなくこの可憐な少女のことだったか。
「アカネちゃんがいうならそうだね、 じゃあさ私たちで洗いあいっこしようか」
「はい!」
先程から素数を数えて沈めていたそれはその官能的な少女たち行いによってまた真の姿を取り戻す。
まずいな、あまり長い時間風呂に浸かり続けると逆上せてしまう。 さて、どうするか。
仕方ない、体裁を気にしている場合じゃなさそうだ。
「なぁ、俺そろそろ出ようと思うんだが裸を見られるの恥ずかしくてな! よそをみててくれないか?」
「うん、いいよー見ないであげる」
そういうと口とは裏腹にガン見である。 こいつまさか、 見るきだな?
「はーさっぱりしましたー。じゃあ浴槽に浸かりましょうか」
女神からの助けの声が聞こえる。 って、え?
ヨクソウニツカル?
「おいおい俺が入っているのに入るのか?」
当然の抗議をするが女神からの発言だ、覆らないだらう。
二人が気持ちいいねーなどと言いながら中へ入って来る。 肌と肌が触れるたび、ビクッと体が震える。くそ、こいつらは何も感じないのか?
たわいもない話をしながら平常心を保つ。 突如誰かの手が触れる。 どうやらクロエのものらしい。
「タツヤっていい筋肉してるわよね。いいなぁ」
などと言いながら、なおも触り続ける。 まずいなににか別の扉が開きそうだ
「やめろ、やめなさい。 やめろよ」
抵抗すればするほど面白がって触って来る。 アカネまで参加する始末だ。 どうしようもない。我慢の限界になった俺は。
「出る!」
そう言ってなりふり構わず浴槽を後にした。 みられてしまったとかそういうのは関係ない。
「あらら、からかいすぎちゃったかな」
そんな声が遠くで聞こえていた。
部屋に戻ると俺は息子を鎮めることにした。 まずい、あいつらエロすぎだろ。
「くっそ、一度じゃ済まないのか!よろしい、何度だって相手してやるよ」
今日の俺は野獣のごとくだった。 外では綺麗な月が野外を照らしていた。