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神との邂逅

  この選択は間違いだったかもしれない。 俺たちの貯金であった230ゴールドは消えて無くなった。あの女、クロエが夕食の材料を買ってくると言うから任せた所なんと、全額を綺麗に使い果たしてきたのだ。 野菜にパン、果物に紅茶をある程度たくさん買ってきた。 合計90ゴールドそれは良しとしよう。

 

「クロエ、この魔道書はなんだ?」


「願ったら変えちゃったからつい、てへ?」


「150ゴールドの本を足りないからって無理やり買ってこないでいいだろ! それになんだ! この摩擦による雷の低級魔法の書って、これ要するに静電気ってことだろ」


「静電気……ってなに?」


  静電気を知らないのか? いや、確かに魔法が発達した世の中であれば科学なんてものは発展していかないのかもしれないか。


「寒い乾燥した時金属のもの触るとビリッときたりしないか?」


「あぁー冬とかすごいするー」


「それのことだ」


  どうやらこの世界にも四季があるらしい。


「まぁいい、買ったからには覚えられそうなのか?」


「絶対覚えて見せるさ! まずは解読からだね」


「そういえば、この世界の文字は見たことないな。一緒に見させてくれ」


  同意をもらえたので見せてもらうことにした。 どれどれ……日本語じゃないか。 ひらがなと漢字じゃないか。 しかも簡単な


「まさか、タツヤおまえ、読めるの?」


「あぁ、このくらいなら簡単に読めるが」


「ちょっちょっと全部解読してくれないかな! この本もあの本も、ほら、最初から読むんだよ」


  やれやれ、仕方ないから読んでやることにした。内容としてはそれぞれ科学的な原理について書いてあり、あとは…いらとりあ? 後半は文章になってないがクロエが


「構わないわよ、むしろそこが大事なんだから」


  と言うからそのまま読んでやった。クロエは目を閉じて少し考えるようにしていた。 まつげが長いな。綺麗な顔をしているし。


「よし、イメージできたぞ。見せてやろう呪文の名は……」


「いや、ここではまてーー」


  静止も止む無くクロエは スパーク と呟き、小型の雷が机の上に落ちた。 中心が焼けこげ、その焦げ臭い匂いが周りに染み渡る。


「あやー少し危なかったねー」


「火事になるかと思ったぞ。少しは後先考えて行動しろ」


  いやーごめんごめんとクロエは謝っていたが、どうせまた何かをやらかすのだろうと竜也は予感していた。


「とりあえずご飯作るね。 解読にお礼に腕によりをかけてあげるよ」


  あまり期待できないな、と思いつつキッチンを覗きに行った。 そこには少し長い髪を束ねエプロンを着たクロエが包丁を持ってジャガイモによく似たそれを切っていた。


「ご飯作ってる間は外で待っててよ」


  とクロエに言われてしまったため完成品を待つしかなくなったがあのテキパキと動か姿はタツヤに期待感を与えるのには充分だった。


「はい、出来ましたよー」


  やって着たのは、肉なしのポトフだろうか?きのこと野菜をふんだんに使った野菜スープだった。


「うまそうだな、料理上手いんだな」


「文字の読み書きができなくても料理はできるものよ」


  クロエはご満悦のようだ。 しかし、貧乏暮らしをしていたからあまり気にならないが


「そういえば市場でも見なかったが、この世界には無くはないのか?」


「肉ってなに?」


  予想外の答えが返ってきた。びっくり仰天だ。


「豚とか牛とかそういう肉を焼いて食べたりしないのか?」


「野蛮な考え方ね。 そもそもこの世界ではそういうの死んだ時点で金になっちゃうじゃない。 まぁ食べらないってわけじゃないだろうけど」


「生きたままかじるのか?」


「それだとかじった肉から消えてくわよ。 ただ闇魔法によって倒せば肉を食べることができるわ」


「どうしてだ?」


「闇と光の魔法はこの世界のコトワリの外の呪文だからそれによって死を与えることで死なない死を与えることができるってこと」


「死なない死って何だよ。生き返ったりできるのか?」


「そんなわけないじゃない。ただその肉体は世界に祝福されずその地に残る。 その方法なら肉を食べれるでしょ」


「なるほどな、まぁ魔法が使えない俺にとっては関係のないことか」


  そんな話をしているうちに食事が終わり風呂場と二階にある部屋を紹介された。 風呂に浸かりながら、クロエの浪費に対する対策と明日からの仕事について考えていた。


「とりあえずは依頼をこなして、何か店でも開くかな」


  今日のうちはとりあえず眠ることにした。

 朝になり目がさめる。クロエはもう起きているようだった。


「あらタツヤ、おはようございます」


「あぁ、おはようクロエ」


  挨拶と朝食をすませると、俺たちは早速、依頼を受けに役場に向かうことにした。 役場にはモンスターの討伐依頼以外にも、地域住民からの依頼から国の仕事の補助まであるようだ。


「色々あるなぁ、クロエ、なにがいいと思う?」


「そりゃあ討伐依頼でしょ、命の危険があるだけに報酬がうまうまよ」


  たしかにそうなのだ報酬だけを見れば、討伐依頼が群を抜いて好条件。


「しかし名前だけ見てもどいつが強いモンスターなのかわからねぇな。 クロエに任せてもいいか?」


「しょうがないわね。この一番報酬良いやつ行くわよ」


  隣町関所にて商人を襲うポイズンウルフの群れ8匹の討伐 報酬2500ゴールド……たしかに報酬は破格だが大丈夫だろうか。 クロエは2人だしヘーキヘーキというが、心配だ。


「当たり前だが、向かう道中にもモンスター入るんだよなぁ」


  あたりには豚やウサギ、あれはスライムだろうか。色々なモンスターがいた。


「普通のモンスターは非好戦的だから大丈夫よ」


「普通じゃないモンスターもいるんだな。くわばらくわばら」


「あれ、あれがポイズンウルフ。 さっさとやっちゃいましょう」


「一匹しかいないようだな。魔法の援護頼むぞ」


  村を同時に相手にするのは無理だな。なら今はチャンスだ。ポイズンと言うからには毒があることだろうし、攻撃を避けながら援護を待つ。 ポイズンウルフもこちらに気がついたようだ。ポイズンウルフが雄叫びをあげる。 ウルフと竜也が距離を互いに測る。その時ポイズンウルフに氷柱が突き刺さり姿を消していった。 その場にゴールドが残る。


「良い援護でしょ。ポイズンウルフなんて簡単なんだから」


「あぁ、そのようだな。 っっ、クロエ危ない!」


  別個体のポイズンウルフは後衛であるクロエの後ろに回り込んでいたようだ。気がついたら体が動いていて、クロエを庇い、ポイズンウルフの攻撃を受けていた。 ポイズンウルフが俺たちの周りを囲う。


「タツヤ、ごめん大丈夫?」


  クロエが心配そうに見つめる。 大丈夫、これくらいかすり傷だ。 クロエが緑の発光した魔法を傷にかけるがそれは即座に消えてしまう。


「来訪者だから、治療魔法も効かないみたい」


「大丈夫、かすり傷だから」


  突如として地面が近くなる。 違う俺が倒れたんだ。 世界が回る。 立っていられない。


「く……そ、」


「ポイズンウルフの毒、 どうしたらいいの」


  クロエはウルフを氷柱の魔法で倒して行くが数が多く攻撃を受けそうになる。からだ、動け、 動け!


「クロエ……逃げろ」


 最後の力を振り絞って攻撃を肩代わりすることができたが、そこで意識がかすれていった。 頼むクロエ、お前だけでも逃げてくれ。


  ここはどこだ。 白い世界で立ち尽くしていた。 クロエが隣で倒れている。


「クロエ大丈夫か?クロエ、クロエ!」


  意識は戻らない。くそ、どうしたらいいり


「その子はもう死ぬじゃろう。 まあ助からんぞい」


  白いひげの老人が現れ言い出した。


「なにいってんだテメェ、クロエは死なせねえ」


「どうすると言うんじゃ? 言っておくが、お主を助けたのはわしじゃぞ」


「どうやって助けたんだ?おれは来訪者だから魔法は効かない筈だ」


「コトワリの中の話ならな。わしはコトワリの外にいるから助けられる。 ここに連れてきた時も死にゆくお主の体を治してやったんじゃぞ」


「そうか、それはありがとう。 それならこいつを救ってやってくれ、頼む」


「それはできない。神であるわしはコトワリの中の者に手を出してはならないのじゃ。お主が特別であるだけで」


「なんだよ、それ。 もういい、お前には頼らない。クロエ、クロエェェ」


 なんとかなってくれ。頼む。


「まだ出会って230ゴールドしか稼いでないだろ。

 まだお前の飯二回しか食べてねえのに」


「治療魔法の術式か、だがお主は金を持たない。無駄じゃろう」


  うるせぇ、おれはこいつを助けるんだ。さっき見た、緑の光のイメージ。 うまくいけ……できた。


「バカな、金を無しに魔法を、いやこれは光の魔法か」


「なんだっていい、傷が塞がる」


  傷がみるみるうちに塞がっていき、全てがなくなった。しかし、意識が戻らない。


「おい、どうしてクロエはまだ苦しそうなんだ?」


「毒じゃよ、その呪文は自然治癒をベースにした構造になっている。 毒や病気はなおせん」


「くそ、どうすればいい」


  毒が全身に回れば助からないだろう。時間がない、どうすれば。


「条件を飲むなら助けてやってもいい」


「本当か、その条件は?」


「合計10万ゴールドを、社に寄付することじゃ。それができるなら助けてやろう」


  この世界に来る前は貧乏で惨めな暮らしだった。母親は過労から倒れ、周りの友達とは話が合わず遊ぶことも出来なかった。おれは貧乏と働かない父親を恨んだよ。 この条件ではしばらく貧乏な暮らしを強いられるだろう。だが、おれは迷わなかった。


「かまわん。命があれば金なら行くでも稼げる」


  俺は家族以外との初めての関わりを持つクロエを金よりも大事だと思い始めているのかも知れない。


「わかった。助けるぞい」


  クロエは白い光に包まれ、目を覚ました。


「ここは? あなた神さま! お会いできて光栄です。 タツヤも無事でよかった、あれ」


  俺はクロエを抱きしめていた。 生きててよかった。


「ああよしよし、寂しかったのかータツヤ」


「お前のせいで10万の借金だ。返済、覚えておけよ」


「えぇ、なんてこったい」


  借金にも関わらず、笑い話になるとは思いもよらなかった。そうだ、神に聞かないといけないことが、


「「神さま」」


  クロエと声が重なる。


「2人の聞きたいことはそれぞれわかるが答えるつもりはないぞい。 聞きたかったら10万ゴールド納め終わったらじゃな」


 白い世界からだんだんと色が消えて行く。 黒に染まったと同時に目が覚めた。 そこは我が家でもう外は真っ暗だった。


「報酬は明日に受け取るとして、ごめんね。私のせいで10万も」


「いや、たしかに10万は痛すぎるが俺が望んだことだ」


「望んでくれたんだ! いやいやありがとう」


  急にテンションを上げるやつだ。と考えていると表の戸が開く


「すみません。なにが食べ物をいただけませんか」


  借金ができ余裕がなくなったタイミングだ。当然断るつもりだったが言葉が詰まった。 その少女が妹に似ていたからだ。


「お前、茜か?」


「私は、アカネと言うのでしょうか? とりあえず食事を」


  俺たちはパンと野菜スープを与えることにした。

 その少女はがっつくようにして口に運んだ。

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