新生活へのプロローグ~リーゼさんは帽子が気になるお年頃~
「ねぇ、にーちゃん、あたし、変じゃない?」
頭にかぶった、羽のついた鍔広の帽子の位置を気にしながら、リーゼさんが俺を窺うように見上げてきた。
「いや、良く似合ってるぞ。可愛い可愛い」
「にーちゃん、あたしがどんな格好しても可愛いっていう~……竜兵は格好良くないとだめでしょ!」
童女は不満そうに頬を膨らませた。
本日、マイシスターは黒のタイツの上から綿入りの布上衣を着込み、黒の外套を纏い、手袋、ブーツ、黒の羽付き帽子といった装いで腰にサーベルを吊っていた。
タバードっていうのは、両脇が空いた釣鐘型の外衣だ。制服みたいなもんで、ソルヴィオドゥルム家の紋章が刺繍されている。
俺もリーゼと似たような格好だ。ただ俺は副従士長なので、従士といえば騎兵を指した時代の名残で革の脚衣がプラスされているのと、腰に佩くのがサーベルじゃなくてロングブレードだって違いがある。あと外套の意匠がちょっと豪華だな。
「いやぁだって、事実だしなぁ。別にいーじゃん、可愛くても」
「だめなの。精鋭兵の見た目の”いあつこうか”はだいじなの! 襲ってきた相手をかえりうちにするんじゃなくて、そこにいるだけで、相手を制圧する、そーいう効果が期待されるものなの」
うちの妹はセンゴク・メモリーに目覚めてから偶にこまっしゃくれた事を言う。
威圧効果ぁ?
「よーするに、舐められちゃ駄目ってこと? 強面になって、見た目で周りをびびらせないと駄目だと?」
「そーいうことなの」
ほほう、なるほど。
でもそれリーゼさんの体格じゃ、どう着飾っても、どう足掻いても無理な気がするんだけど……
今も着てる制服、古着なんだけど成長を見越して大きめのを選んだから、ブカブカだしな……
子供が服に着られてるカンジの愛嬌はあるが、威圧感は皆無だ。
「だから、ねぇ、にーちゃん、あたし、変じゃない?」
マイシスターはしきりに帽子の位置を気にしていた。
ちがう、根本的な問題は、帽子の位置じゃない。
あきらめろん妹よ。




