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たとえ死んでも...

短めです、アバン。

 聖魔歴1666年...


 私は魔族の頂点に君臨する魔王として王座に座し、白銀に輝く鎧を身につけた壮年の男と対峙していた。


「やはり人間との全面戦争は避けられず、今代の聖騎士王が率いる人間達を退ける事も出来なかったか」

「魔王よ...すまない、力しか持たぬ私では国王を、騎士や民達を止める事が出来なかった、一度ついてしまった火を消す術を見出すことが出来なかった...」


 男は俯き、拳を強く握りしめ全身を震わせていた。


「よい、それにお前が裏で手を回し安全に逃げる為の道を作ってくれたおかげで、魔族は根絶やしにされずに済むのだ。感謝こそすれど、お前からの謝罪なんて望んではない」

「だがっ!...確かに散らなくともよい命を救う事は出来たかも知れないが、今まで多くの命をこの手で奪ってきた、そしてこれからも少なくは無い命を討ち取らねばならん」


 全面戦争に発展してしまった今、私が殺されたところで魔族達が止まることは無いだろう、多少頭の回るもの達は私が敗北したとの知らせを聞けば逃げるだろうが、全体的に見れば戦闘は激化するのではないだろうか。

 そうなれば国王が各地の戦場を制圧するようこの男に命じる、いったい何人の魔族と人間が死ぬことやら。


「ふふふっ、暫くは大忙しだな?」


 私が突然笑った事を不思議に思ったのか男の震えが止まり心底不思議そうな顔をして固まっている。


「しかしお前がたった一人で門前に現れたと報告を受けた時は驚いたぞ?さらには城に残っていた幹部連中を殺さずに無力化してここまで来るのだからな」

「何故...この状況でそんなに楽しそうに笑えるのだ?」

「ん?楽しいに決まっているだろう?いくら強いといっても、想い人がたった一人で私と話す為にここまで来てくれたのだ、これで喜ばん女などそうはおらんぞ?」


 男はますます不思議そうな、そして悲しみに暮れた顔をする。

 耳が少し赤くなっているが今は揶揄わないでおこう。


「魔王...今ならば誰も見ていない、二人でにげ」

「黙れ!!!...それ以上言わないでくれ、そんなことを言われたら揺らいでしまう...お前も覚悟して来たのだろう?私としてもどうせ殺されるならお前の手で殺されたい」

「っ!...約束を守れなくてすまない、魔族も人間も共に笑って暮らせる世を一緒に作ると誓ったのに私はお前を...」


 男は肩を震わせながら涙している。


「たわけめ、何も約束が...私達の夢が終わるわけではあるまい?私達はあの時約束をした、誓いを立てた。この約束は絶対に成し遂げる、たとえ...」


 男は自分たちが言った言葉を思い出し、目を見開き一歩前へ踏み出すと私の言葉に割って入った。


「たとえ死んでも成し遂げる!!だったか...そうだな、まだ諦めるわけにはいかんよな」

「ふんっ、やっと思い出したか?...泣き虫め」

「なっ!うるせぇな目にゴミが入っただけだ!俺がなくわけないだろう、お前の方こそさっきから大洪水じゃねえかよ...」


 気が緩んだのか出会った当初の頃のように口調が砕けている。


「そうだな...やはりその喋り方の方が私は好きだぞ?」

「そうかよ...俺は喋り方なんぞ関係なく、お前の全てが大好きだけどな」

「にゃ!にゃにを突然!!?今まで口に出したことも無いことをぉ」


 顔が熱い、自分の顔が真っ赤になっているのが鏡を見ずともわかる、それに多分こんな時にニヤけてしまっているだろう。


「フッ、ハハハッ」

「ばーか、ふふっ」


 暫くの間、二人で笑いあった。


「名残惜しいけれどそろそろ始めましょう?疑われるといけないし手加減は出来ないわよ?」

「ああ、俺は最初のうちは手加減してやるよ」


 緩んでいた魔王の纏う雰囲気がガラリと変わる。


「ほう?そうか、魔王も舐められたものだな。暫くは動けないぐらいの傷は負わせてやろう」

「敵地のど真ん中でそれは困るな...」

「冗談よ、全力を出したところでアナタにそれほどの傷を負わせるなんて無理だもの...じゃあ来世で会いましょう、グレイス」

「ああ......来世で会おう、エルシア」


 二人が同時に駆け出し衝突する。


「「愛してる」」


 凄まじい衝撃波が辺りを襲い、魔王城上部が吹き飛んだ。


 その二日後、大陸全土に聖騎士王が魔王を討ち滅ぼしたとの報が響き渡った。


次話からもう少し文量が増すと想います。

お読みいただきありがとうございます(。^_^。)

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