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自称最強の双子が異世界を支配します  作者: 機巧アカツキ
第1章『支配する世界』
8/43

八重の民/世界より嫌われた種族/戦争はドリームの中で

シリアス続きますw

少し短いかもしれません


 

 ____________森が一変して街へ。



 なるほど、ここは夢か。

 うん、森林エリアから街エリアに早変りとか、どこのルーラだよ?


 不思議と違和感を感じさせない出来事である。

 薄暗い街並。古くはないが、新しくもない建築物。殆どが岩で出来ている民家で、所々に街灯が目立っている。


 そんな民家の屋上。

 転移されたような感覚の後、アヤトとルウシェはその場所で街の様子を伺っていた。



「ルウシェ、ここってやっぱ……」

「イエス、アルマテアンですね。ただ……人、1人いない……更には嫌な魔力を感じます」

「そういや、ルウシェもアルマテアンの種族____________ヤエガスミだっけか?」



 アヤトの質問に、コクりと頷くルウシェ。

 嫌な魔力という存在を警戒しているのか、ルウシェは屋上から身を潜めて街全体を巡回している。


 もう少し、もう少しで下着が見えそう……とと、なに考えてんだ、俺! 自分の妹にそんなことできるわけ…………妹…………ルウシェが、妹……あれ、おかしいな…………本当にそうか? チガワクナイカ?



「……アヤトくん?」

「____________っ。あぁ、悪い。で、なんだ? 嫌な魔力の原因でも見つけたか?」

「いえ、ノーです。す、シュミマセン、役立つで……み、見捨てないでくださぁい……」

「うん、落ち着こうな? 俺がマイシス____________ルウシェを見捨てるわけないだろ? で、どうしたんだ?」



 やっぱり、違和感があるな……。

 ルウシェ____________年齢16。妹。好きな食べ物『肉じゃが』。好きなテレビ『世界の隅々までイッテゴー』。好きなゲーム『戦略ゲーム全般』。うん、情報は覚えてる。勘違いか?



「…………アヤトくん、きます」

「きますって、何がく____________『消えろ』。






「…………逃げるぞ! ルウシェッ!!!」



 考えるよりも速くアヤトの体が動いていた。

 ルウシェの腕を掴み、屋上からダイブ。後の事など考えなしのアヤトの行動だったが、着地寸前で謎の風が吹き無事着する。



(ほんっと、死ぬ前の人間って何でもできそうだな、オイ。だが、助かった……どうする俺!? 逃げるか? いや、奴のスピードは未だしも、永遠と追い付いてくる耐久力はヤバい……ん? なんで、俺____________)


「アヤトくんっ!!!」

「____________っ! 取り合えず逃げるしかない!」



 ルウシェの指摘で上からの黒い獣の突撃を回避し、ルウシェと共に街を駆け抜けようと走り出す。北へ、北へ。だが、不思議なことに走っても走っても、街並みが変わる気配は感じられない……そう、それはまるで巨大な牢獄のような気がするほど。



「くそが……どうすりゃいい?! 一刻も早くマイシスターを助けなきゃいけ____________あれ……マイシスターを、妹を助ける? ルウシェ……を? いや、違う!」



 マイシスターはここにはいない!

 黒い獣を前にしてだが、ここは賭け……何故だ。


【何故、俺は《『黒い獣』が耐久力の高いことを知っている?》】


 口に出せ! 問い詰めろ!


【何故、俺は《ルウシェのことをマイシスターじゃないと思う?》】


 当たり前だ! 俺の妹は『ミコト』のみだろーが!


【何故、何故、俺は『ルウシェ』という人物を知っている?】




「永遠の牢獄、滅んだ国、ラルハの消失、そして記憶の改竄に近い現象____________これが、『ヤエガスミ』ってことかよ。ルウシェ……?」



 その言葉を口にした刹那だ。

 黒い獣はいつも間にやら消え、周りの街灯が全て消えていく。

 ヤエガスミ……『八重の霞』という言葉がある。それは、何重にも重なった内容、隠蔽を主に示す言葉に近い____________つまり、こう推測できる訳だ。



 これはルウシェの幻術かもしれないと。



「____________ふふ」



 ルウシェは笑う……いや、笑うというより嘲笑うが正しいだろう。意味深く、アヤトの存在を。今までルウシェに接してきた行動全てを。ルウシェは嘲笑ったのだ。



「嫌いになりましたか? 私を、八重の民であるルウシェを。貴方も嫌うのですか?」

「…………どういうことだ」



 アヤトは問う……が、ルウシェがヤエガスミだとすると、アヤトには既に憶測が成り立ち、確信における理由が頭の中を掻き回していた。


 ルウシェがヤエガスミ……なら。

 俺の望んだ駒なら、お前は____________。



「もう死んでるんだろ」








 ***








 ヤエガスミは世界にとって邪魔な存在だった。

 幻術を得意とする種族は、他の種族を欺き、騙し、そして勝ち上がっていった。能力だけでなく魔法さえも干渉させないヤエガスミの力、それが幻術____________大きく纏めれば『魔術』だという。そして、世界はヤエガスミを意味嫌った。


 エルフさえも関知できない幻術だ。

 勝利……いや、それ以前に戦うことすら難しいのだろう。


 戦わずして勝つという言葉がある……だが、それも遠回りに言えば、戦う必要がないから勝てるという変な理屈だ。

 まさにヤエガスミはそれ____________変な理屈に睨まれたのだ。



「私達は何も悪くない……世界の秩序に乗っ取り生きている! なのに何故、殺される……!? 私達が、ルウシェが、ヤエガスミがっ!」



 少女は嘆いた。

 この理不尽な世界に。この理不尽な生命に。この理不尽な力に。

 全てを怨み、妬み、戦き、睨み、叫び、怒り、悲しみ、哀れみ、そして呪いをかけた。


 最後の一隅、一矢報いるように……八重の民が放った生き残りの幻術。


 代償は命として。対価は存在として。


 ルウシェは____________『この世界に○○を呼んだ』。








 ***









「その結論に至った理由は?」

「単純な話だ。世界の敵となった、たった1つの種族……どう足掻いても勝てないわな? なら、俺だったら一矢報いるね。全てを使って御得意の幻術をかけるさ____________『自分を死んだこと』にしてな」



 ルウシェにはそれが出来る。

 生命を対価にするような幻術と共に己さえも消すことが。そうすれば、ヤエガスミの生き残りであるルウシェが狙われる事もなく、もう【アルマテアン】に足を踏み込む者はいなくなる。そして、世界にかけた幻術の効果を待つ……全種族に世界だ。時間はかなり掛かると予想していい。



「その事を誰にも伝えない魔術をかけます……本職ではないので、時間が掛かりますが。そうすれば、帰してあげますよ? ここは、ルウシェの空間……幻術の世界ですから逃げることは不可能です」

「だと思ったよ。道理で淡々と道が続くもんだ……だが、断るぞ? 俺は、この事を封印して貰う気はない」

「っ!? ならっ……!」

「だが、ここに残るつもりもないし、万が一ここから出られたとしても、俺はお前の事を伝えない」

「……何を言って……信じられると思いますか?!」



 うん、信じられる分けねぇよな?

 だけど、それでいいんだ。それじゃなきゃ……俺の支配する駒には程遠い憎しみだからよ。



「戦争と行こうぜ、ルウシェ」

「…………」



 アヤトの提案に黙るルウシェ。

 当たり前だろう……この戦争はルウシェにとって、何のメリットもない。力づくでもアヤトを殺せばいいのだし、結局はここから出られない。ルウシェは無言のまま、右手を平行に浮かせると幻影のエフェクトから巨大な鎌を生み出した。



「助かりたいなんて思うなよ」

「____________っ!?」

「お前はお前であれ。それ以上でも、それ以下でもない。憎しみは生命にとって必要だ。だから、助かりたいなんて思うな! 憎しみから逃れようとするな! 俺はお前を助けるんじゃねぇ……支配してその憎しみを共に背負うんだよっ!」



 戦いの火蓋は切られた。

「うるさいっ!!!」という、ルウシェの怒号によってだ。その刹那、アヤトは自らの身体を引き裂かれるような未来予知に走馬灯を描き、避ける為に身体を地面に無理矢理しゃがませた。


 予測通り鎌は通りすぎ、アヤトの能力が発動する。



「……っ、これはっ!?」

「つぅらぁっ!!!」



 ルウシェの視線が真横にずれた瞬間、アヤトの拳の一撃が腹部をえぐり、そのまま地面に叩きつける。相手がラルハみたいな重量ならアヤトの攻撃など通らないであろう。いくら、幼き頃に体術を習っていたとしても、アヤトは人間だ。人間は人間の限界点がある。しかし、それが魔術師なら別だ。



「間合いさえ入れれば反射神経でどうにかなる……と、思いたいんだが……ぐっ、くそが」



 ルウシェを叩きつけた右腕に幾つもの刻まれた剣筋がある。

 やはり、異世界なのだ。現実ではない、異世界なのだ。普通ならあんなにか弱き美少女に一撃入れれば沈むだろう。だが、もう一度言おう、ここは異世界なのだ。


 立ち上がるルウシェ。ほぼ無傷……なのだろう。

 最早、何処が傷ついているのかわからない。心の傷はありそうだが、果たして精神面でどうにかなる相手なのだろうか。



「……やって、くれましたね」

「お、意外と効いてる? その後で、ゴフッと血を吐いてくれると、勝利フラグなんだけど」

「何のことでしょう?」



 うん、ピンピンしてらっしゃる。

 だよねー、知ってた。さて…………隠し芸の体術は効くわけないと確信ができた。パワー上がれば効くのかなぁ?



「……戦争のルールは……?」

「憎しみ同士の対決だぞ? そりゃ、タコ殴りしかないだろうよ____________つまり、実力行使だっ!」



 そういって、ルウシェに走り出すアヤト。

 叩きつけた時に拾っておいた石を投げ、能力を発動。その石にアヤトの力を移転させ、アヤトは真横に進路を変える。


 しかし、それは無駄であった。


 ……おいおい、なんだよそれ……なに、アドラメルクみたいな巨大な魔法使っちゃってんの?! 本職ではないのでとか言ってたよね?! 本職じゃくても、そんなの出来るの? マジでかっ!




「『エグゾード・バースト』」




 刹那____________巨大な漆黒の剣は、街を斬り落とした。



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