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自称最強の双子が異世界を支配します  作者: 機巧アカツキ
第3章『剣伎の世界』
39/43

番外編(5)『千雪祭 ~後編~』

 


集点誘導インデクション・ポイント

「また逃しますか、させませんよっ!!!」



 荒れ狂う光の槍全てに回避を強制させていく。既にアヤトはフルの能力で対応している……少しでも気を抜けばその合間で全てのバランスが崩壊し、忽ちアヤトは死に至ることになるだろう。


 光の槍を放ちながらも向かってくるアイテールに、アヤトは歯を食い縛る。この状態での回避は不可能だ……だが、



「兄様には完璧なシスターがいるのです」

「____________っ?!」



 ミコトの能力で剣全てが消滅し、アイテールの動きが一瞬戸惑いを纏う。それに合わせたアヤトが今一度ネクロを纏って跳躍、アイテールの腹部を凪払った。



「あめぇ神様だな? 此方は2人で1人、油断してると落とすぞ天使さんよ」

「神の守護さえも消しますか。いいでしょう! もっと、もっと来てくださいっ!!!」

「お望み通りっ!!!」



 落下する体勢を立て直したアイテールが何らかの衝撃波を身に纏って両手を広げるやいなや、背中にある翼が光の形となる。同じく落下するアヤトもネクロを拳に集中させた一撃を放とうとしたが、それよりも速いアイテールは回転しアヤトを払い除ける。



「がっ、くっ……マイシスターッ!」

「兄様、2時の方向____________『文字削列テキストデリート』」



 指示通り、瞬間移動のようにアイテールがアヤトの2時の方向に現れ、翼を翻し、波動の一撃を放つ……が、ミコトの能力によりまるで、文字が消されていくように波動が段階的に消えていく。



「っ!?」

「マイシスターが技名叫ぶなんて滅多にない。それほど集中させた巧妙な技だって事だ……吹き飛べっ!!!」



 緩んだ意識を吹き飛ばすアヤトの一撃が刹那の速度でアイテールを殴り落とす。速度を殺そうとも勢いが落ちる高さではない。アイテールは大地に刺さる釘のように地面に落下し、大地を盛り上げていった。完璧なコンビネーション……普通ならこれで優先に運べる試合展開だろう……そう、普通なら。


 着地したアヤトは即座にミコトを庇うように構え、目の前の瓦礫に話しかける。



「くたばってねぇだろ、神様。あの一撃がガードされたことに驚いてるんだから早く出てこい。次は入れるぞ……!」

「……ふふっ、本当にそっくりですね。神ですよ? ただガードしただけだとお思いでしょうか?」

「何____________が、ぁぁぁぁぁぁああッ!?!?」



 瓦礫を退けたアイテールがアヤトに言葉を告げた途端、アヤトの拳に亀裂が入り、光の波動がアヤトの体を包んでいく。


(放った腕から……いや、これは魔力そのものに干渉しているのか?! どっちにしろ、このままじゃ……!)



「消してあげたいけど、消せませんよね? あれは魔力に直接連結させた魔力の波動。消せば、兄の魔力ごと消滅することになりますから」

「くっ、兄様……!」

「さて……そろそろ終わりにしましょう。神の前にて、よくぞここまで耐え凌ぎました。その勇敢なる闘志に敬意を表して、ここで____________断罪します」



 溢れんばかりの魔力が大地に亀裂を生み、瓦礫は忽ち宙に浮く。何も溜めない状態でのあの強さだ。これ以上の魔力向上は流石のアヤトでも、一撃で沈むことが前提になるだろう。回避しようとしたところで、先程からアイテールの速度にはついていけてない……かといって、妨害や反射を試みようとしても体が束縛されていて身動きが思うように取れない。



「……くっ、せめて相手の動きが読めれ、ば…………動き、姿……」



 考えてみれば不自然だ。

 何故、アイテールは元の姿であるユピテルへと姿を戻さない? 変化する能力があるといっても、同じ天の神だ。それに、神格であるユピテルの方が伝承的に驚異に感じる……なのに何故だ。



「ユピテルが正解じゃない……まだ続きがあるって事かよ……!」

「兄様、兄様、考えている暇は無さそうですよ」



 ミコトの指摘でアイテールが動く。

 莫大な魔力を体に纏い、それを一気に暴発させて加速。アイテールは一瞬にしてアヤトの真横に……



「……ほぅ、予測しましたか」



 それさえも予測していたアヤトの右降りの蹴りがアイテールの腕ガードを払い除ける。何時のまにやらアヤトの束縛は解除されていることに目を細め、周囲を一瞬にして把握するアイテール……大気に揺れる白髪の機械仕掛けの少女が1人。戦闘の空間にいるのはアヤトとミコト、そしてアイテールだけではない。ここはコッペリア____________デウスマキナの世界だ。



「ナイス、ノア____________ネクロ、全力で力を寄越せっ!」



 アヤトの言葉でノアは戦闘に参加しないはずだった……が、それはノア自信の意思で動けば関係はない。


 さて、どうする? 今の間合いなら全力の一撃をお見舞いできる……が、それでこいつが沈むか? 否だ。不意討ちの一撃でさえガードした反射神経を覆すなんて不可能だろうし、あの上昇した魔力の反撃を喰らえば……死ねばましってくらいだろうな。ということでやることは1つ……



「吹き飛ばすっ!!! 『圧縮再発リピート・コンバーション』」

「これ……は……?!」

「ガードしても無駄だ。吹き、飛べっ!!!」



 先程受けた力を圧縮したアヤトの拳をガードしたアイテールが謎の衝撃波に身を包み混まれた刹那____________視線さえも捕らえさせぬ速度で天高く体が激しく浮遊していった。



「兄様っ!」

「わかってる! 神格を喰らった神だとは予想もつかなかったが、ノア! 即刻終わらせるぞっ!!!」

「……ん、了解した」



 3人は飛んでいった方向に視線を送り、ノアは激しい荒れ狂う電を纏い、アヤトは眩い限りの魔力の渦を拳に宿す。


 この謎解きは最初から正解など無かった。

 アイテールまで辿り着けば、それで良かったのだ。戦闘の中で更なる真実を暴く……つまりは、述べた答えをもう一度正しく述べよということ。アヤトの中では『更なる【上の】答え』を求められているのだと勘違いしていた。だが、違う。答えは出ていた……つまりこれは、



「時間稼ぎとは趣味が悪いぜ、神様。いや____________ユピテルを喰らい、神格を得た堕天の神『アイテール』ッ!!!」



 渦を膨張させた魔力を両手を合わせて分割する。溢れるような魔力が大地に流れ、痺れる大気の稲妻がノアと波長を合わせていく。



「いくぞ、ノア……ワクワクドキドキの合体技だっ!」



 上昇させた魔力の渦にノアの電撃が流れ、周囲が弾け飛ぶような波動が大地を削っていく。魔力には個人それぞれの波長が存在する。普通なら魔力と魔力の間に存在する魔壁というものが反応し、交わるはずの魔力を阻害する……が、アヤトなら別だ。



「俺なら操れる……ノアっ!」

「……ん、了解。重点率100%、全力全開____________【天撃】」



 雲を貫く電光石火の咆哮が、アイテール向かって放たれる。放って数秒……天高くでおこる爆発と爆風の破壊音が、天をぶち破るように弾けていく。アヤトの全魔力とノアの全開の電撃を越えた天撃……勿論、神であるアイテールもただではすまないはずの威力だった……だが、



「やったか……くらい言わせろよ、神様」



 驚愕のあまり皮肉にも笑うアヤト。一撃を放って数秒、爆風の煙が消えるよりも早くアイテールは目の前に平然とした顔で微笑んでいた。



「とても良い一撃でした。貴方の束縛を解いたのは、デウスマキナでしたか」

「……効いて、ない、がくっ……」

「さて、どうするよ……あれが俺らの最高の一撃なんだが、無力な人外……いや、神外の俺らをいたぶりますかね?」

「……ふふっ、神の器は広いのですよー? かなりいい運動になりましたし、謎も解かれましたし、何より楽しかったですー」

「その早変わりの口調なんとかならないか……まぁ、クエストクリアって感じでいいなら、この空間を何とかしろ……俺は、寝る」



 だはー、と脱力した感じで冷たい地面へダイブ。アヤトとノアは崩れるように大の字に転がった。アヤトに言われた通り、アイテールは指を天に向けて何らかの光線を放ち、固まった空間を壊していく。



「……お疲れ様?」

「ふふ、えっと、名前は……」

「ミコトです」

「お疲れ様です、ミコト様。そろそろお仕事の時間なので、私は消えますねー?」

「……仕事? えと、頑張れ?」

「ふふっ、神様もお仕事はあるのですよー? それでは……あ、最後にミコト様、1つよろしいですか?」

「……?」



 翼を翻して飛び去ろうとしたアイテールがミコトの目の前まで浮遊移動し、額に翼を置く。すると、謎の光がミコトの体を包み込み終わったかと思うと、アイテールは目を大きくして驚愕を表す。



「……なに?」

「いえ、なんでもありません。では、また何処かで会いましょう? 自称最強の双子様」



 ミコトが聞き直そうとして手を伸ばす……が、アイテールは既にいない。周囲を見渡せば、壊れていた建築物は元に戻っており、止まっていた時も普通の風景を取り戻していた。ミコトは兄を起こそうと近寄る……と、そこには兄の腰辺りに股がる紫髪の少女が現れていた。



「あはは、どーもどーも。2度目の魔力切れにより、緊急自己回復機能にベース変更しました。僕、マスターさんの化身『ネクロ』でーす。よっろしくー」



 また濃いのがきた。













「さてさて、面白くなってきましたよー。まさかあの双子が……ふふふふふふふ、あははははははっ!!!!!!!! とぉーーーーーっても、面白いですねぇー!」



 天を仰ぎながら空を駆けるアイテール。


 最強の双子と最弱の双子…………本当にこの世界は昔からアンバランス。昔を思い出させる程のアンバランス。この世界を何処へ導くのでしょうか……本当に、



「許されませんよ……『ファルトゥーナ』











 ***









「らっしゃーい、お兄さん、かき氷いらない?」

「このくそ寒いのにかき氷食う勇気は俺にはないわ……デウスマキナの主観っておかしいのか?」

「……ねーねー、マスター。僕、カキゴオリって食べたことないんだー。どんな味がするのかな?」



 アイテールの一件から数時間後、アヤトとミコト、そしてノアは無事千雪祭を迎えることが出来ていた。千の雪が降り積もる中、コッペリアの街並みは光輝くような風景へと変貌し、街の中はお祭り騒ぎとなっていた。


 全員機械仕掛けの少女という楽園での祭りは、大いに盛り上がりを見せ、多くの同盟国関係者が訪れている。アヤトもまたその中の1人なのだが……今は、魔力の回復を専念させる為、人型となったネクロに付き添っていた。


 可愛らしい幼い体型、紫髪の美しいロングヘア、容姿端麗の抜群美少女だ。これがあのネクロの化身だとは、今でも信じられないが……アヤトがネクロを使えないことを知り、確信している。



「氷に甘い液体をかけ……ん、論より証拠だな。1つ頼む」

「まいどー、味はどうしますか?」

「あ、マスター! 僕ブドウ味がいい!」

「そんじゃそれで」



 かき氷のシロップなんて俺らの世界では同じ味らしかったが……そういや、ブドウ味なんて初めて聞いたな。



「わーい、いっただっきまーす____________んー、冷たいよ?! マスター!」

「氷だからな。にしても、アイスキャンディにソフトクリーム、あれは……たい焼き? 後ろに冷蔵庫っぽいのがある時点でおかしいんだが……ろくな屋台がないな」

「ごちそうさまー。ねぇ、マスターは何か食べないの?」

「帰って鍋が食べたい」

「鍋? どんな味がするのか知らないけど、マスターが食べるものなら美味しそうだね」



 食べ物は魔力と言わんばかりに食いついてくるネクロ。なんだろう、ネクロはパートナーや化身というイメージがしない。そう、例えるなら……娘? 僕っ子娘だな。さて、そろそろ本当に帰るとするか……寝たいし。



「ねぇ、マスター! あのスノーダーツってのやってみたい!」

「帰る」

「はーい」

「……わかった。わかったから後ろ歩きはやめろ……1回だけだぞ? それやったら帰るからな? マイシスターだってとっくにかえってるんだか____________」



 バスンッ! カランカランー。



「おめでとうございます、1等『祭一時間サービス券』でーす」

「わぁ、本当に?! マスター、僕やったよー!」

「…………ど真中ドストライクかよ」

「えへへ、これでもっと遊べるね? マスター!」

「……かえ」

「あ、次あれやりたいなぁ!」



 後悔した。来なければ良かった。

 あと1時間?! ふざけんなよ?! 帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい! もう雪はいいから帰え、



「離れられないから仕方ないよねー。さ、いこ! マスター」

「……さいですか」



 この日、結局祭が終わるまでネクロの暴走は止まらなかった。





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