表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称最強の双子が異世界を支配します  作者: 機巧アカツキ
第2章『先魁の世界』
30/43

信念の鎖/被り物の神様/魔女罪

少し短いです

 



 ____________考えるよりも速い先手の風が焔を含め、鳳香を巨大な竜巻となって包み込む。


 否、考える……というより、そんな暇がなかったの方が正しいだろう。不意討ちを狙うつもりが不意討ちで声をかけられたのだ。緊急回避……いや、それも違う。これでも恐らくは、



「……へぇ、驚いた。能力は違えど、俺と同じ力を持つ奴がいるなんて。それじゃ、俺も披露しないといけねぇよ……なっ!」



 無駄である。


 鳳香の作り上げた風は、焔の気迫の込めた一風により弾けとび、跡形もなく吹き飛ばされた。だが、わかりきっていた光景に鳳香は怯むことなく、両手を握り締めて訴えるように、



「答えて! 確かに君は化物って見られてるかもしれない……私だってもうそうなっちゃう。けど、人を……命を壊すのだけはやっちゃ駄目っ! これ以上やるなら、私が全力で止めるからっ!」



 そんな鳳香の言葉が焔を……通り過ぎた。


 まるで「何を言ってるんだこいつ……?」と、馬鹿にしたような顔で、焔は少し苦笑。だが、鳳香にはそうは写らないだろうと、即座に判断した焔は両手を上げて降参の証を示す。



「言っとくけど、この惨事は俺じゃないんだわ」

「……へ?! え、でも、こんな大被害の中に君がいるんなら……」

「それなら俺からしてもお前、怪しいってことになるぞ? 恐らくだが、お前も俺も目的と標的は同じと見た」

「そ、そんなの信じられないっ! こんな事が出来る存在がそう何人もいるわけ……」

「____________俺は人を殺せない。下界では化物……だっけか? そう呼ばれているし、確信には至らないだろうが、さっきお前が言った言葉を俺は知っているんだよ」



 答えて! 確かに君は化物って見られてるかもしれない……私だってもうそうなっちゃう。けど、人を……命を壊すのだけはやっちゃ駄目っ! これ以上やるなら、私が全力で止めるからっ!


 自分で自分の言葉を思い出し、鳳香は目を細目ながらゆっくりと手を下ろす。焔も「……ふぅ」と、安堵した息を吐いて両手を下ろす。だが、手首にはいつの間にやら風の腕輪が装着されていた。



「信じられないってか……ま、当たり前だな。俺は『高崎 焔』。焔って呼んでくれていい」

「『遷宮寺 鳳香』。言っておくけど、まだ信じた訳じゃないからね? 焔君」

「既に実行している奴のツンデレって、全然萌えねぇな、うん」

「デ、デレてないわ!」



 ツンはあるのかよ……。



 一持休戦を約束した2人は1度地上に着地し、鳳香はまず焔の先程の力について真実に驚愕する。着地間際、焔は足踏みをしながらまるで空を蹴るように着地していた。つまり、焔は鳳香と違い浮遊していなかったということになる。事実、大気を蹴りあげ跳躍を繰り返していたのだ。


 もう、この時点で実力が違う……と、鳳香は力の空きに多少の悔しさを込めて「すごいね」と、呟く。焔もまた鳳香の力に関心を覚えていた。



(これ凄いな。外そうとすれば手首をぶった斬るのか。風の力、いやこれは多分……っと、まずは俺の疑惑を解かなきゃな)



 鳳香も味わっただろうあの空間の現象。もし、あれも誰かの能力なのだとしたら、鳳香の言った通り止めなきゃならない。焔にとっては関係のない事かもしれないが……それこそ関係ない。力あるものとしてその存在を示す。それだけだ。



「ま、気配によれば人間じゃねぇけどな」









 ***












 ____________始まりの神。

 神話、その命なる理を生み出した原典の化身。1滴の雫より大地を生み出し、その力は生命をも生み出す。人はそれを天地開闢の化身_______________________ 伊邪那岐イザナギと呼んだ。



「まさかそいつが相手とはな」



 確信はない。だが、疑惑に担う要素は存在する。


 雄々しくも禍々しく煌めく2つの黒白い眼。

 全身を被うようなボロボロのローブ。容姿全体的には、神話の神を象徴したような聡明な物だ。そしてイザナギとされる者の背中に浮遊する時計の針のような物質……時を司り、生命を指摘する。まさに違う意味で始まるような。思わせるのだ……不思議と。



「この事態、人間じゃ無かったの……?」

「遷宮寺さんは下がってろ。こいつは強い」

「馬鹿言わないで。私だって戦う……後、鳳香ね。名字はあんまり好きじゃないから」

「……あっそ。そんじゃ鳳香さん? もう来てるんで防御よろしくなっ!」



 そう言って、焔が一瞬にして真横に跳躍した瞬間、鳳香は目の前のイザナギに反射神経が働く。一瞬のことだが、鳳香の右腕の風は完璧にイザナギの一撃をガードし、更に左腕の風の槍でカウンターを放つ……だが、



「ガグ……ァァァァァァァァアアアッ!!!!!!」

「っ?! 効いてな____________」

「しゃがめ、鳳香っ!!!」



 狂った叫びで風が弾けた刹那、ターンしてきた焔の飛び蹴りがイザナギを吹き飛ばす。それに合わせた鳳香も風の刃をイザナギに放ち、焔が刃を辿って一瞬の到達、そして大地を破壊する渾身の一撃をイザナギと共に叩き込んだ。



「いいアシストだ」

「ふふ、ありがと……でも、全然みたいね」

「……っち、ほぼ無傷かよ。俺もまだまだか」



 崩壊した瓦礫を吹き飛ばし、息つく暇もなくしてイザナギが焔へ迫る。一気に距離を詰められ、多少体勢を崩したが、全ての連撃を弾き返す。



「力はあってもそれだけだな、神様っ!」

「……ダマ……レ」

「_____っ?!」

「ダマレ、だまれ、黙れぇぇええええええ……!!!」



 片言から和らぎ、そして人の言葉へと換わる。

 最後の一撃のみ、まるで人が変わったような強烈な一撃が焔の体を浮かせ、その上から膨大な圧力にも似た重圧が焔の体を沈める。



「かはっ……! 今のは、ぐっ!」

「焔君っ!? くっ、吹き荒れて重りとなれ____________『融風エル・ウィンド』」



 追撃を加えようとするイザナギを鳳香の塊のような風が突き抜け、焔から距離を強制的に放させる。しかし、大地に2回バウンドしたイザナギは大地を殴り踏みとどまった。


 即座に起き上がった焔は、先程のイザナギの言葉に疑いの声を発する。有り得ないはずの言葉を。



「……お前、人間なのか?」

「ガァ……ァァァァアアアッ!!!!!!」

「……っち、ややこしいな、おいっ!」



 何故、この化物をイザナギと呼ぶ自分がいるのか違和感を得てしまう。誰に教えられた訳でもない……寧ろ、イザナギというイメージは壮大で聡明で気高い。そんなイメージだった。


 なのに何故だ。

 何故、こんな破壊のみの化物をイザナギと呼べる? 事実、焔や鳳香もイザナギに出会ったことなどない。それが当たり前だからだ。なのに……何故、そう呼んでしまうのだろうか。



「……まさか、てめぇ…………」



 狂った瘴気を具現化させたイザナギの衝撃波をかわし、焔は自分の脳裏に、とてつもなく有り得ないもの描いてしまう。だが、それも焔や鳳香が存在していることを当てはめればゼロにはならない。絶対に無いとは限らない。



「鳳香、少しいいか?」

「……何?!」



 回避していたのは焔だけではない。鳳香もまたイザナギの一撃一撃を回避しつつ、生き延びろうと奮闘していた。


 鳳香は人を殺せない。そう自分で鎖を放った。

 それは焔も同じであり、信念は違えど根本的には相違ないだろう。だがらこそ、だがらこそ聞かなきゃならない。答えによっては……その信念は曲がってしまう。



「奴は神を纏った人間だ。簡単に言うと《憑依》……俺達が奴をイザナギと呼んでしまう理由はそれだ」

「……そう、まさかそんな能力まであるなんてね。それで……どうやったら戻せるの?」

「戻らない……とは、断言できないが、今の俺達にその手段はない。押し付けて悪いとは思うが、お前が決めろ。お前は人を殺してはならないって言ったな。命を壊すのだけはとも。なら奴はどっちだ?」



 焔の問いに覆い被さるようにして、イザナギの拳が大地を盛り上げる。回避した焔は砂煙を払いながら焔は空中を旋回、イザナギに落下するような形で徐々に落ちていく。



「責任なんて無い! その言葉が紛い物でなければ何度繰り返してもいい! 口にする以上、決断する覚悟を見せろっ!」



 人を殺せない。命を壊せない。


 膨大な力を持つ者にとって、絶対に決断しなくてはならない道。それを誤れば堕ち、正したとしても闇を突き進むことになるだろう。だが、必要なのだ。絶対に。1人の……生きる理由として。



「……私は守る……この世界を! 皆を!」

「……ハッ、いい! 最高だお前! 忘れんじゃねぇぞ、これがお前の決断した末路だっ!」

「グァァァァァア____________!!!!!!!」

「うるせぇよ……被り物はもう捨てなっ!!!」



 刹那____________焔の一撃は光をも超越し、爆発をも凌駕させる星の一閃となった。





 そして____________







 ***








 ____________代わりに謎の穴が鳳香の真下に出現した。



「……へ?」

「全く、能力持ちだが戦闘は素人ってのは最悪だぞ?」



 ドンッ! と、鳳香を勢いよく突き飛ばしてその穴より強制的に遠ざける。だが、焔が通りすぎようとした瞬間、その落下する力……いや、吸い込む力は強度を増し、焔が徐々に吸い込まれていた。



「……つぅ、焔君っ?! 待ってて、今助け____________あ、あれ……体が……重、く……ほむ、ら……く……」



 ……やべ、力入れすぎたか? ま、時期に目が覚めるしいいか。

 ひっさしぶりの外だから少しはしゃぎすぎたか……その結果がこれとは様無いなマジで。だが、まぁ……こんなくだらない世界から消えられるのなら本望____________頑張れよ、鳳香。



 霞む鳳香の目を遮って消える焔。

 それを悔やむ暇もなく……鳳香は眠りについた。










「ありゃぁー、まさかの男の方がいっちゃったかー。ま、いいか。それよりねぇーねぇー! どーでした? 私の演技!」

「あぁ、素晴らしかったよ。まるで3年間本当にいたみたいな口ぶりだったな」

「アッハッハ、なわけですよー。さてさて……後は、お願いしますよ? あんな世界、ぶっ壊してくださいね? ラルハ・・・さん」

「…うむ、約束しよう。我が旗元に誓って____________【魔女罪クリムゾン・シン】の名の元に。では、後のことは頼んだぞ」

「はいはーい。それじゃ……遊びましょーかねぇ。裏切りの____________鳳香ちゃん」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ