出逢いII
「ん…?なんだこれ。鍵か…S.K?」
随分と可愛らしいキーホルダーばかりが付けられている。
「女物か…。え?」
よく見ると、そこには女のように美しい男がいた。
「つっー…浩太…?」
何人かの友人と楽しそうに笑っている写真が貼ってあった。
なぜか無性に腹が立って仕方なかった俺はそれを無造作に自分のポケットへと入れた。
「あぁぁぁ…。どうしよう…。」
さっきのクラブで落としたに違いないけど、あそこにもう一度…しかも一人で行くという勇気がない。
「でも…アレがなかったら家入れないからな…。 彰人のバカ。」
気分は下を向き、それに伴うかのように自分の足取りも遅くなっていった。
「ついちゃった…。」
キィー…
重たい扉を恐る恐る開ける。
「いたっ…。」
楽しそうに踊る人達と肩がぶつかる。
ーそれより、早く鍵を見つけなきゃ…。ー
チャリン
僕の耳のすぐ側で金属音が鳴った。
「えー…。」
咄嗟に振り向くとそこには僕の鍵とー
さっきのぶつかった人がいた。
「あ…すみません!何度も…。それ、僕の家の鍵なんです…拾ってくれたんですね!ありがとうございます…。」
そう言って、その人から鍵をもらおうとしたとき「ちょっと来て」と呼ばれてしまった。
せっかく鍵を拾ってくれた人の願いは無碍に出来ないので、僕は黙ってその人の後について行った。
「あの…どうしたんですか?」
「お前、名前は?」
いきなりの質問に戸惑ったが「柿沼 誠也です」と答えた。なぜ初対面の人に名を名乗ってしまったかは、よく分からない。でも、そうしないといけない気がしたんだ。
「だからS.Kか…。」
-鍵を返してくれないのかな…ー
そう思いながらそわそわしていると、向こうから僕に話しかけてきた。
「あのさ…。ちょっと家に来てくんない?鍵はそれから…ってことでさ。」
「え?いや、でも…。」
僕が躊躇していると彼は僕の腕を引っ張って前へと歩き出した。
「たっだいまー。じい。」
そう彼が元気よく向かって言った相手は、初老を過ぎた男性だった。
「おかえりなさいませ坊ちゃま。」
「ちょっと今連れがいるから、部屋に案内するけど静かにしてってメイド達に言っといて。」
ええええ…この人一体何者⁈