出逢い
「ちょっと…彰人っ。やめてってば…。」
「何でよ…イーじゃんよたまにはさ…お、カワイイ子はっけーん!」
まただ。お腹のあたりに重くのしかかって来る感じ…だからいつまでたっても好きになれない。
「誠也!俺めぼしい子見つけたからさ、あとは好きにやっちゃって」
そう言って彰人は店を後にした。
「何なんだよ…彰人のやつ。」
ここは世間でいうナイトクラブ
「マーメイド」という店。
下品な場所ではなく、どことなく妖艶な香りを漂わせている。
そんな場所に普段足を運ばない僕が1人でここにいる理由はー…ない。
「帰ろ…。」
そう言ってクラブを後にしようとしたときのことだった。
「あいてっ…。」
向こうからやって来た男性にぶつかってしまった。
「あっ…ごめんなさい!」
「うん。大丈夫、大丈夫。」
「でも…。」
次の言葉を言いたかったが、それは憚れた。
なぜなら貴方の瞳があまりにも綺麗に澄んでいたからー…。
「すいませんでした…。」
少しの間があったが、もう1度謝って店を後にした。
「徹〜、どしたの?連れ?」
「いや…なんでもない。 ん…?」
はあっ はあっ
どうしたんだろう僕…さっきから心臓がいうことを聞いてくれない。
走ったから…?でも…。
「変だな。僕…。」
不思議な気持ちを抑えられないまま家に入ろうとした時だった。
「あれ…?嘘でしょ。鍵が…ない。」