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聖域監視任務 木猿の章 【二ノ二】

聖アルフ歴1887年


 夕方頃に目的地の屋敷に到着した五名は、出迎えに現れた巫女装束を纏った若い女性に出迎えられた。


「防人特務隊の方々ですね。お待ちしておりました」


 巫女装束を纏った女性は物静かな口調でそう言うと、屋敷の扉を開く。


「こちらへどうぞ。奥で宮司様がお待ちです」


 扉を開いた巫女が、五人に屋敷の中へ入るように案内した。それを受けた五人の隠密は、屋敷の中へと進んでいく。



 五人の隠密が屋敷の奥に案内されると、奥の部屋には初老の男性が座っている。五人が部屋に入ると、初老の男性は真面目そうな口調で口を開いた。


「よく来てくださりました。私が聖域の管理を行う神社の宮司を勤めている者です。」


 宮司と名乗った初老の男性はそう自己紹介すると、改めて任務の内容の説明を行う。拠点で受けたものとほぼ同じ内容の説明を行った宮司は、生真面目そうな態度を崩すことなく続けた。


「任務は今日を含めて三日の予定になっていましたが、今晩は幸いにもこちらの人員で賄えましたので、明日の夜から監視をお願いしたく思います」


「ですので、女性の方以外は相部屋となりますが部屋のほうもご用意致します。今夜は明日に備えて英気を養ってください」


 宮司がそう言うと、廊下に控えていた巫女装束の女性が部屋に入る。


「それではお部屋にご案内致します」


 巫女に促された隠密たちは、そのまま彼女に付いていった。



 それぞれの部屋に案内された隠密たちは、荷物を部屋の端に置くと、各々が休憩を始める。


 木猿が就寝の支度をしながら部屋を見渡すと、鳩の面を外した銀二と、三本線の装飾が施された猫の面を付けた隠密が雑談をしている一方で、熊丸は身軽な格好で私物の書物を読んでいた。


(任務前の休息ならば、さっさと横になればいいだろうに……)


 焦げ茶色の髪をした隠密は、心の中で悪態を突きながら寝間着を取り出そうとする。


 すると、寝間着が出てくるのにあわせて今回の任務で派遣された班員の詳細な情報が記された資料が出てきた。


(これは、あの翁が二日前に渡してきた資料か? 足手纏いの情報なんかに何の価値が?)


 訝しむような様子で資料をしばらく眺めていた木猿は、気が向いたのか、資料を読み始めた。


(……たまにはいいだろう)


 焦げ茶色の髪をした隠密は冷めた表情で資料を読み解く。


(【銀二】は比較的経験は浅いが、中忍級の隠密として求められる感知適正が高く、高精度の遠距離砲撃を得意とする。自衛は出来る大砲といった所だな。勤務態度は人並みか)


 銀二の情報を読んだ焦げ茶色の髪をした隠密は、機械的に次の情報を読み始めた。


(この班唯一のくの一は【(ひじり)】と言うのか、陽行術式特化型で、同じ第五地区中忍の【(むすび)】とは姉妹らしいな。珍しい経歴だな)


 今まで名前を知らなかった相手の名を知って多少は興味が湧いたのか、木猿は何処か楽しげな様子で次の情報に目を向ける。


(【熊丸】は中忍にこそなっているが、隠行や探知はからきしで勤務態度も最悪か。接近戦だけは得意みたいだが、壁以外に使い道が無いな)


 熊丸の情報をゴミでも見るように流し読むと、自らの情報は飛ばして、最後の情報を読み始めた。


(この班の班長は【三味線丸】と言うらしい。上忍候補の一人で、陰行の幻術と刀を使った剣術に長ける。前衛寄りの中衛で陣頭指揮をとる役目と言った所か?)


 全員分の情報を見た木猿は、資料を片付けて就寝の支度を始める。


 それを見た銀二は、顔の前にかかった髪の毛を払いながら焦げ茶色の髪をした隠密に話しかけた。


「お前もう寝るのかよ!? 折角なんだから何か話そうぜ」


 銀二がそう言うと、木猿は落ち着いた口調で答える。


「折角ですが、僕は遠慮するよ」(曲がりなりにも仕事中だぞ。気を引き締めろ)


 そう答えた木猿が布団に潜り込むと、銀二は頭を掻きながら答えた。


「じゃあ、明日起きてから話そうぜ。雑談だけど、聞きたいこともあるしな」


 木猿が眠りに就こうとすると、無造作に伸ばされた長髪の隠密は欠伸をしながらそう呟いた。



 隠密たちが屋敷に到着した頃、神社の敷地に学生と思われる二人が話し込んでいた。


「本当にやるのか?」


 少し小柄な少年がそう尋ねると、ガタイの良い少年は自身に溢れた口調で答える。


「当たり前だろ! 裏山の聖域なんか年寄りどもの戯言だって証明してやるんだ。明日の夜裏山の前に集合だからな」



続く


おはようございます。ドルジです。

今回で始まりの部分が書けたので、次からは展開を動かせると思います。

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