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幕間7 鍛練

聖アルフ歴1887年


「以上が造船所護衛任務の経緯です。アメスリア所属と思われる工作員と交戦。撃退には成功するも、捕縛直前に自害。」


「遺体の回収は行いましたが、遺体と所持品の損傷が激しく、情報を得ることは難しいと思われます」


 黒い猫の面を付けた隠密は、指令室で紅に報告を行っていた。


「報告ありがとう。黒猫丸以外は下がってもらっていいかな」


 赤毛の男が柔和な態度でそう言うと、黒い猫の面を付けた上忍以外の隠密は、指令室から立ち去る。


 他の隠密が指令室から立ち去ったことを確認した紅は、柔和な態度を崩すことなく話始めた。


「部隊長である君の所感を聞きたい。相手の力量を含めて詳しく知りたい」


 赤毛の男がそう言うと、黒猫丸は申し訳なさそうな口調で答える。


「失礼を承知で申し上げますが、私よりも敵とより近くで戦った白夜のほうが、適任ではないかと思いますが?」


 黒い猫の面を付けた上忍がそう言うと、紅は、落ち着いた物腰で答えた。


「確かに彼の方がより近くで相手を見ていたのだろう。けれど、君だって狙撃に専念していたとはいえ、交戦したことに変わりはない」


「それに、観察力は君の方が白夜より上だ。だこら、君の所感を聞きたいんだ」


 赤毛の男がそう言うと、黒猫丸は、僅かに間を置いてから答える。


「……相手は最初は黒の外套に深緑色の革鎧を装備した比較的若い金髪の男です。得物は双振りの短剣に、魔術適正は火と土、聖アルフ教の術式の使用が確認されました。」


「技量もかなり高く、技術なら白夜以上で、彼が鬼の力を解放しなければ仕留めきれない程の相手でした。」


 上忍がそう言うと、紅は柔和な態度のまま答えた。


「戦闘能力については分かったよ。仲間が居たりはしなかったかな?」


「その点に関しては問題ありません。後日魔力感知、及び肉眼による探索を行いましたが、それらしき不審な人物は発見されませんでした」


 黒猫丸がそう答えると、紅は満足気な様子で口を開く。


「それなら大丈夫かな。明日の進水式を無事に向かえられそうかな」


 満足そうな様子でそう言った赤毛の男は、続けた。


「呼び止めてすまなかった。下がって大丈夫だよ」


 紅がそう言うと、黒猫丸は、一礼した後に指令室を後にする。それを見届けた赤毛の男は、姿を眩ませた。



 黒猫丸が指令室から出た頃、白夜は拠点に設置されている鍛練場に来ていた。


 鍛練場に入った白髪の隠密は、開けた広場で青黒い魔力の巨人を生成している中忍の女性が目に入る。


「精が出るな鴉」


 白夜が声を掛けると、長い黒髪の隠密は、魔力の巨人を解除しながら答えた。


「任務お疲れ様です。黒が足を引っ張ったりしませんでしたか?」


 鴉がそう言うと、白髪の上忍は苦笑いしながら答える。


「その点に関しては問題ないよ。むしろ黒のおかげでかなり助かった」


 白夜がそう言うと、長い黒髪の隠密は安堵したような様子で呟いた。


「ならよかったわ」


 鴉はそう言うと、白夜に会釈をして、そのまま鍛練に戻る。


「大黒天の鍛練か?」


 鴉が青黒い巨人の上半身を形成させている所を見ていた白夜は、そう訪ねた。黒髪の隠密は、魔力の巨人を消すことなく答える。


「はい。以前の任務の際に今まで使えなかった段階まで解放出来ました。なら……!」


 鴉は、大黒天の装備している円盤状の手裏剣に水流の刃を纏わせながら続けた。


「今まで使うことの出来ていた段階をより上手く使えるはずなんで!」


 鴉がそう言ったのと同時に、水流の刃を纏った大黒天の手裏剣は、広場に備え付けられた的に目掛けて飛んでいった。


「次の任務はもう少し先ですから、それまでにもっと強くならないと」


 手裏剣が的に命中したことを確認した黒髪の中忍は、決意に溢れた様子でそう言うと、今度は大黒天に小さな手裏剣を複数装備させる。


 それを見届けていた白夜は、修行熱心な後輩を感心するように目を細めながら、口を開いた。


「修行熱心なことは関心だが、あまり無理はするなよ」


 そう言った白夜は、奥の筋力強化場へと足を向ける。



「986! 987!」


 筋力強化場に入った白夜は異様な光景を目の当たりにした。


 他のトレーニングを行っている隠密からは離れた場所で、凄まじい形相と掛け声でダンベルを上げ下げしている焦げ茶色の髪をした男が居たのである。


「993! 994!」


 あまりにも異様な光景に、白夜が呆然としていると、焦げ茶色の髪をした男は、いつの間にか回数をこなしたのか、ダンベルを上げ下げするのを止めて、休憩用の椅子に倒れこんでいた。


 我に帰った白髪の上忍は、焦げ茶色の髪をした男に近づいて声を掛ける。


「……お前は木猿からウッドゴリラに進化する気なのか?」


 白夜の言葉を受けた木猿は、休憩用の椅子から崩れ落ちた。


「……しませんよ」


(疲れてる所で下らないことをいうな)


 疲れきっている木猿は、心の中で毒づきながらそう答える。


「それは良かった。お前は明後日から任務らしいが、あまり無理をするなよ。それと」


 白夜は真剣な面持ちで続けた。


「今お前がやっていたダンベル。肉体強化を前提にかなり重いダンベルを凄まじい回数持ち上げるようだが、いきなりそんなにキツくしたら、体を壊すぞ。持続的な鍛練こそ大事だからな」


 白夜がそう言うと、木猿は、少し間を置いてから答える。


「……分かりました」


(持続的な強化が重要なのは確かにそうだな)


 焦げ茶色の髪をした隠密がそう答えると、白夜は何処か嬉しそうにしながら口を開いた。


「まぁ、お前が元気そうで良かったよ。あまり

無理はするなよ」


 そう言った白夜は、別のダンベルに向かっていった。


次章へ


お久しぶりです。ドルジです。更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

今回は繋ぎの話になりますが、次の話は頭の中ではある程度出来ているのですが、更新が遅くなってしまう可能性が高いです。気長に待ってくださるとうれしいです。

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