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序章

聖アルフ歴1887年


 夜の闇が町を支配する中、館の前に止められた荷車の周りには、仮面をつけた二人の男と中年の男性が話をしている。


「護衛助かったよ。君たちのおかげで、道中の街道で魔物や賊に襲われることがなかったからね」


 中年の男が人当たりの良さそうな口調でそう言うと、白銀の防具を纏い、狐の仮面で顔を隠した白髪の男が答えた。


「私たち隠密は、任務を全うしただけです。これからも私たちの使う物資の提供、よろしくお願いします」


 狐の面を付けた男が、謙った態度のままそう言いながら手を差し伸べると、中年の男も手を出しながら答える。


「うむ。今後とも頼みますぞ。私の会社が取り扱っている高純度マナ結晶は、他国からも狙われている可能性も十分ありますからね」


 それだけ言うと、中年の男は館から出てきた使用人たちに指示を出し始めた。そんな光景を眺めていた白髪の隠密は淡々と口を開く。


「任務は完了だ。螺旋。俺たちは、木猿がこの町に手配しておいた宿に戻ったのちに、明朝に本部に戻るぞ」


 白髪に狐の仮面をつけた男がそう言うと、そのまま煉瓦で出来た民家の屋根に飛び乗り、そのまま建物から別の建物に飛び移りながら立ち去って行った。



「今回の護衛任務が終わった後はどうなる?」


 今まで口を開かなった、濃紺のローブと着物を融合させたような衣に、脳天に黒い渦巻のような模様が描かれた無機質な仮面をつけた、短い黒髪の隠密はそう言った。


 狐の仮面付けた白髪の隠密は、濃紺の衣を纏った隠密に対して口を開く。


「ああ。今のところは本部に戻ったのちに新たな任務を受けるのみだ」


「そうか」


 濃紺の衣を纏った男は、白髪の隠密の返答に対して淡々と返した。


「そろそろ隠密の名で取っておいた宿に到着する」


 宿屋の目印を見つけた狐の仮面をつけた男は、濃紺の衣を纏った隠密にそう伝える。


「分かった。降りるぞ」


 濃紺の衣を纏った隠密がそう口にしながら屋根を飛び下りると、白髪の隠密も建物の屋根から飛び降りた。


 そのまま木で出来た建物の中に入ると、白髪の隠密は自分たちを出迎えるように出てきた宿屋の主人に向けて話しかける。


「失礼する。本日宿泊する予約を入れていた第五地区所属上忍。白夜だ」


 白夜と名乗った白髪の隠密の言葉を受けた宿屋の主は、手慣れたように二人を二回の部屋へと案内した。


「任務お疲れ様です。先輩」


 部屋に入ると、足元に猿の仮面を置いた焦げ茶色の髪をした20代前半の男が本を読んでいる。


「ああ。無事任務は完了した」


 白髪の隠密は狐の仮面を外しながら淡々と口にした。


「具体的な内容までは分からないが、この任務が終わった後には、恐らく長期にわたる任務に入ることになる。暗器や武具の準備は怠るな」


 無機質な仮面を既に外していた螺旋と呼ばれていた隠密は、白夜以上に事務的かつ無機質な口調でそう言う。


「お前。隠密になってすぐとはずいぶん性格が変わったな。学生時代の付き合いだから分かるが、正直捻くれたか」


 白髪の隠密は、顔に冷や汗でも浮かべているかのようにそう言うと、短い黒髪の隠密は、自らをあざ笑うかのように答えた。


「そうだな。中忍に昇格してからはずっと国外遠征任務に従事して色々汚いものも見てきたからな。意味のない掠奪も、大義のない戦いも多く見た。その中で俺はほとんど何も出来なかったがな」


 ローブ状の裾から取り出した短刀の手入れをしながら、螺旋は自らをあざ笑うようにそう答えると、今度は白夜に対して問いかける。


「あまりあの時のことを言うのは酷だと思うが、お前も中忍に昇格する直前に色々惨いものは見ただろう。俺もアイツが死んだあの時には、自分自身の無力さを呪わない日は無いさ」


 傍から見ていても暗くなりそうな二人の会話に業を煮やしたように木猿と呼ばれていた焦げ茶色の髪をした隠密は、読書を中断し会話に割って入った。


「二人とも何かしら暗い過去やトラウマがあることは分かりましたから、ここは抑えて。僕たち国を陰から支える隠密が、こんな風に後ろ暗いことを考えていたら駄目じゃないですか」


「第一、上忍に昇格したばかりの僕なんて木行の術式と陽行の回復、身体強化術式以外はそこまで得意分野なんかないですし。白夜先輩の雷行の身体活性とそれを生かした体術と暗殺剣に、螺旋先輩の空間転移術式と暗器や火行の術式の運用は僕だって尊敬しているんですから、自信を持ってくださいよ」


 木猿の言葉を受けた二人は、一瞬真顔になるもそのまま自分を戒めるかのように延々と自己否定を続ける。


「あの……そろそろそう言うくだらない自虐を止めないなら、両方とも頭を果実のように粉砕しますよ」


 遂に苛立ちが限界に達した焦げ茶色の隠密は、陽行の筋力強化の術式を練ろうとしながら最後通達を口にした。


「「その、悪かった」」


 二人の隠密は、顔を青くしながら口を閉じる。


「まったく。白夜さんは、遠い先祖由来の魔族として血を持っている力をほとんど制御できる生成りで、螺旋さんは、隠密を今のような正規軍である【防人】にも匹敵する戦力へと押し上げた絶影の孫何ですから、もっと自分に自信を持ってください」


 木猿は、呆れ返ったようにそう言うと、読書を再開した。


「……そう言えば、今第九地区に遠征任務に向かっている鴉と黒は無事だろか?」


 短い黒髪の隠密は、国境付近で目撃情報が多く寄せられている蛸のような怪物の調査に向かった二人の中忍を気にかけるようにそう口にする。


「あの二人なら問題は無いだろう。幸い防人の遊撃部隊も第九地区での調査に協力するそうだ」


「それに、あの二人ならば問題は無いだろう。俺が言うのもなんだが、あの二人なら余程のイレギュラーが無い限りは状況に対応できる」


 白夜は、後輩に対して全幅の信頼を寄せるようにそう口にした。


「先輩。明日も早いですし、そろそろ休みましょう」


 本をしまった木猿は、そのまま最低限装備していた防具を外して布団に入りながらそう口にする。


「そうだな。そろそろ休んでおかないとまずいか」


 白夜は冷静にそう言うと、そのまま近くに転がっていた布団に体を横たえ眠りについた。



 この物語は、他国からは忍者と呼ばれ恐れられている国の影で暗躍する隠密の物語である。


                           続く



 こんばんわ。ドルジです。

 今回の序章から、約5人の登場人物のうちの一人を主人公とした3~5話の中編完結小説集として連載していきたいと思います。(一人のキャラにつき大きなくくりでの話は1つか2つとなります)

 新たな連載を無事完結出来るように頑張りたいと思います。

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