夢 -Father-
はじめまして。大藪鴻大です。ネット投稿は初めてなので、いろいろ戸惑っています。そもそも、ここにあいさつを書いてよいのかどうかも分からず書いています。
私は、暇を見つけてはパソコンのキーボードをパチパチ叩いて物語を書いています。他人に見せるには恥ずかしく、かといって、このまま誰にも見せずに物語だけがたまっていくというのも見ていられず、今回、思い切って本サイトに投稿させていただきました。そのため、この作品は実験的な意味合いも含んでいます。
そんなに頻繁には投稿できないと思います。しかし、読者の皆様の希望があれば、もしくは自分の気が向けば、もっといろいろな物語を投稿していきたいと思います。
長くなりましたが、今後とも大藪鴻大をよろしくお願いします。
目の前に広がる海。どこまでも続くアクアブルーの空にところどころに浮かぶ白い雲が空に開放感を与えている。僕は断崖絶壁の上からその風景を見ている。ここはヨーロッパのどこかではないだろうか。なんとなく僕がそう思ったのは、澄んだ空気と見慣れない地形のせいだろうか。
後ろを振り返れば、一面緑の草原に何枚かのブルーシートが敷かれ、そのうちの一枚の側で僕の家族が昼食の準備をしている。家族旅行など滅多にしない僕らがピクニックに出かけ、このような場所で昼食をとることなど初めてのことであり、おそらく最後のことであろう。僕は、ブルーシートから離れて立つ父の背中をぼんやり見た。
そのとき、聞きなれた声がきゃっ、と短く鋭くなった。僕は慌ててブルーシートの側に近寄る。母は性にもあわず腰を抜かし、ブルーシートの下の一点に視線を集中させていた。そこに何かがいるのだ。僕は兄と一緒にその視線の先を見やる。
そこにいたのは、見るからに禍々しいサソリのような生き物だった。全身は腐敗したブルーベリーのような暗い青紫色に覆われ、大きさはドブネズミくらいだった。その姿はサソリに近いのだが、唯一異なっているのは蜂のように膨らんだ腹の先に太い針が付いており、その針がこちらを向いている点である。僕と兄はその場に立ち尽くしてしまった。
すると何やら小さな生き物(おそらく、ネズミであっただろう)が立ちすくむ僕らの後ろを走り去り、別のブルーシートの下に消えて行った。次の瞬間、この機会を待っていたと言わんばかりにサソリのような生物はその大きさからは想像できない速さで小動物が隠れたブルーシートの側に駆け寄った。外で一瞬止まり、体を曲げるとそのままブルーシートの下に飛び込んだ。その生物が消えると同時に、断末魔の叫びが聞こえそれは徐々に風船のように力なく消えた。
やられた。あの恐ろしい針で刺されたのだ。そう思っていると、どこからか幾重にも重なった叫び声が聞こえる。いつの間にか父があの生物が潜むブルーシートの前で構えていた。何をやっているんだ、危ない。
「家族は俺が守る!」
その言葉を聞いた瞬間、呆気にとられてしまった。自分のことで精一杯で家族のことを考えていなかった自己中な父。いままでそう思っていた。その父が今、家族のために命をかけて毒虫に立ち向かっている。しかし、この時心を占めていたのは、信頼どころか不安だった。
「次のニュースです。昨日ヨーロッパの―――――で日本人観光客が別の観光客を毒殺しました。その日本人観光客は40代男性。毒をもった生物を用いて他の観光客に襲いかかったということです。現在、男は『家族を守るためだった。事故だった』と主張しています・・・」
僕は座イスに座り、コタツに入りながらテレビを見ている。テレビに映っているのは父の顔のようだ。男は謎の生物を捕まえた後、暴れ出す生物をどうすれば分からなくなり慌てる。取調室で半泣きしながら無実を主張する情けない姿。その必死さにこちらまで悲しくなるその表情。そんな情景が容易に想像できた。
「怖いわねぇ。」
箸を持ちながら他人事のようにつぶやく母。もう一度、テレビ画面に映し出されている写真を見る。なんだかどうでもよくなってきた。
「知らね。」
そう短く言い放ち、僕は座イスによりかかり、目を閉じる。
次に目を覚ましたとき、僕はベッドの上でいつもの朝日に照らされていた。いつもと何も変わっていない。そんなことぐらい、すぐに分かった。




