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おいでませ、人魚ちゃん  作者: 琥珀 みつ花


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第一章:学校生活残り一年(4)


こんな国を巻き込む大作戦を始めたが学校はなくならない。平日の日中は学生生活を余儀なくされるので今日も今日とて馬車に乗って登校する。

昨日は夜遅くまで紙に計画を書きなぐっていたせいで少し頭が重怠い。途中、一人の女の子の未来のために作戦失敗した方がいいのでは?と正気に戻りかけたがバットをフルスイングして正気を場外へと吹っ飛ばした。

君がちゃんと幸せな生活を送れるよう頑張るから!作戦が頓挫した時の方が君の命が危ないんだ、信じてくれ!と会ったこともない女の子に酷い言い訳をしていた。


教室に行くと、俺と同じように眠そうなカーターとライアンといつもより割り増しでテンションが高いルイスがいた。ぱっと見は落ち着いてみえるが長い付き合いの俺の目は誤魔化せない。きっとお嬢さんと楽しい時間を過ごせたに違いない。内心では早く俺たちに話したいとソワソワしているのだろう。

は?今気が付いたがお前だけリア充になるのか?俺も女の子とキャッキャウフフしたいんだが?じとりとルイスを見るがにっこりと微笑まれるだけだった。背後にバラを散らすのをやめろ。朝から目がちかちかする。

今日の授業は睡魔との戦いになるだろう、勝敗は見えている気がするが頑張って抗おう。




学校生活という前座が終わり、昨日ぶりにルイスの部屋を訪れていた。

人払いを済ませたのでソワソワしているルイスに温かい視線を送りつつ、まずは惚気話を聞いてやることにした。


「で、お前は昨日どうだったんだ?」


話を切り出せばルイスは待っていましたと顔を輝かせて口を開いた。


「仲良くなれた!自己紹介もした!カッコイイって言われた!結婚!」


語彙力が溶けるほど楽しかったらしい。よかったねと柔和な笑みを浮かべることくらいしか俺はできなかった。


「それはよかった、お嬢さんに協力者は紹介してもらえそうか?」


「うん、紹介してもらえることになった。あの子自体同盟に乗り気だったのと、凄い人と知り合いみたい。紹介してくれる人が国王とか大臣とかの相談にのるアドバイザーらしい」


「とんでもない人選だな」


ルイスに人を見る目があるのか運がいいのかは知らないが、お嬢さんがそんな強い人を最近知り合った人間に紹介できるくらい交友を深められているのなら外交がまるっきりできない、ということにはならないだろう。

そうか、そうか、幸先いいぞ、よかった。若干騒音により思考が不安定になるがな。


「……なぁ、カーター、今結構重要な話をしているから、その工事中みたいなかみ砕き音は少し静かにしようよ」


俺が言いたかったことをライアンが代わりに言ってくれた。ルイスも深刻そうな顔で頷いた。出鼻をくじかれるとはまさにこのこと。

そうなのだ、惚気話のバックミュージックがゴリッ、バキッ、ボリッと骨でも砕いているのではないかと勘違いするほど音が響いている。


「え、クッキー食べているだけだが……?」


「お前の食べているソレはクッキーという名のレンガだ」


そう、カーターには二つあだ名がある。「カリカリソムリエ」と「モフモフソムリエ」という人間像が逆に迷子になる通り名だ。

カリカリしているものとモフモフしているものに目がない。モフモフに関しては王宮で良いものに触れているのか「これは最上級」「これはBランク」と頬ずりをしながら中々的確な鑑定をしてくれる。しかし、カリカリに関しては固ければ固いだけ良しという考えなので手軽に固くできるクッキーをよく出されてカーターはそれを喜んで食べる。出されたらいじめを疑うレベルで固い、歯が負ける。


「固くて味も美味いから最高だぞ……?」


理解できないという顔をしているカーターが理解できない。


「ウチのシェフたちが腕をかけていかに固くするか頑張っているからね。常人では試食ができないから大変みたいだよ」


王宮の料理人が自前の歯では固さチェックができないためクッキーをテーブルに叩きつける様子は尋常ではなかった。俺も一度食べさせてもらったが顎の力ではどうにもできない代物だ。

顎の力が異常なこと以外は普通と言いたいが実際は大体の発案者はこいつであり、いつもとち狂った提案をするので何も大丈夫でなかった。今回の嫁捕獲大作戦でも何を言い出すのか期待大だ。赤い髪と金色の目をもつイケメンのくせに中々に癖がある。


ちなみにライアンは流石騎士団長の息子なのか力が馬鹿強いし、体を動かすことは大得意。カーター用のクッキーを握力で粉砕するのでこいつも可笑しい。俺の可愛いおててが可哀想な目に合わないよう、こいつとの握手は永遠に警戒してしまう。後、コミュニケーション力も異常で俺の家と間違えて別の家にお邪魔してしまったが、その家で意気投合して夕食をご馳走になった話は伝説として残っている。ノリと勢いで生きているので大体加勢して悪化させる天才でもある。

銀髪なこともあってか、こいつのあだ名は「銀色の爆弾」である。名付けた人間と是非とも握手がしたい。


勿論、ルイスは全方向ハイスペックなので幼少期に論文を読んでその道の研究者に「素人質問で恐縮ですが……」をして泣かせた逸話がある。恐らくその研究者は人に質問されることと子供がトラウマになっていることだろう。


なんで俺の友達はちょいちょい常人を超えたところがあるのか、寂しい、俺もそんな一癖二癖がほしい。学校に入学したころは俺が一番尖ってやるぜ、なんて思っていたのが懐かしくなる。

容姿はいい方であると自負しているがこの四人の中ではかすむし、カラーが黒髪に紫の瞳の瞳と面白味がない。


インパクトのあるあだ名を急募したい。体を動かすことよりも頭を使う方が得意なのでカーターが発案した計画を現実的に落とし込む策士家タイプで、面白いことも楽しいことも大好きなツッコミ役です!

そして、悲しいことにこのグループではカーターとライアンが暴走するのが常なので俺とルイスが待て!止まるんだ!をするのだが、今回は三対一になりそうで今から泣こうと思う。下手をすれば監督責任が俺だけに降り注ぐ可能性があるのだ。苦労人ってか?そんなつまらない役目はいやだ。


「クッキーで思いだしたけど、あの子に常人用クッキーをあげたら喜んでいたよ。海にはない食感らしいね」


「そうなると海での食事は全部しっとりなのか?」


「海での食事って火を通せないからしょうがないんじゃないかな」


文化の差もかなりありそうだ。人魚と友達になれたら失礼にならない程度に海の中の文化を聞きたいものだ。

話が脱線したが、その間にカーターはクッキーを食べ終わらせていたので中々いい雑談だっただろう。


「さて、カーターの工事が終わったところで本題に入るか。問題点をじゃんじゃん出していこう。ノートも持ってきたから書記も担当する。ただ、俺の部屋に保管すると父親がエロ本探しついでに見つけるかもしれないからルイスの部屋に置いておかせてほしい」


「別にいいけど、どういうこと……?」


混乱するルイスにこの話は早かったかとさらりと流してしまう。ライアンもカーターも心を痛めたような顔をしてくれたので俺が多数派なのが救いである。


「気にするな、じゃあ話し合いの始まりだ」



読んでいただきましてありがとうございます。


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