第五章:いざ同盟なり(4)
「カーターやめなさい、随分と大きくなったのに相変わらずシスコン・ブラコンは変わらないな」
アトランタ国王がどこか懐かしいような嬉しいような温かな視線でカーターを見ていた。
カーターがアトランタの王族とはどこか信じられていなかったが、アトランタ国王の発言でそれが真であると理解せざるを得ない。
不服そうな顔でカーターは内務大臣をシェイクすることを止めた。
「内務大臣は誤解しているようだがカーターはアトランタの第二王子だ。その昔、私が船の上で敵襲にあって海に落ちた時にカーターに助けてもらった。礼をしたいと言ったところ、王太子と王位継承争いをさせられそうになったため陸に避難したいと言ったのでな、養子として迎えいれた」
王弟殿下が内務大臣に説明をする。内務大臣は「そ、そんな」と分かりやすく動揺する。
俺たちも「へぇー、そんな話だったんだ」とさらっと流しそうになるが、はたと気がつく。
「……え、もしかしてですが、国王陛下たちはアトランタがあることも知っていたんですか?」
俺の言葉にルイスもライアンもハッとする。
「漸く気がついたか。勿論だとも、私と弟、途中から軍務大臣は知っていた。それもあってか、ネプターは旧知の仲だ」
「あぁ、久しいな、アルフレッド」
目の前で二人は気さくな態度で肩を組み、こっちに向かってピースをしてくる。仲良しかよ。いや、それ以上に問題がある。
「言ってくださいよ……!」
心の声を全力で叫んだ。そしたら過去の苦労や心理的プレッシャーはもっと楽になっただろうに。鬼!人でなし!
「お前たちがいつ気づくか賭けていたんだ。お陰で私は大損だ」
真顔で言われた内容は一回ではのみ込めなくて頭の中で数回反芻することで理解できた。憤死しそう。控えめにいってクソ。なんだよ、なんなんだよ!ふざけんな!
「無理に決まっているじゃないですか!」
「何を言っているんだ、ヘレナリア殿から人間と人魚で何組か結婚していると聞いているんだろ?誰が人魚の戸籍を作ったと思っているんだ」
ぐうの音もでない。確かに平民での結婚には戸籍が必要と知っていたのに!
今日はやられっぱなしで辛い。項垂れるように床にしゃがみ込む俺たちにアトランタ国王は諭すように声をかけてくれる。
「なに、そんな落ち込むな。私とアルフレッドでは国民への混乱を考えて同盟は夢のまた夢だった。君たちには感謝をしているんだ」
「全く、あやつらを甘やかすのは止めてもらいたいものだ。さて、話は逸れたが内務大臣よ、欲に溺れ貴賓相手を誘拐し、暴行を加えようとした。その罪は許されるものではない。罪人として即刻地下牢に幽閉、伯爵家は男爵まで降格だ。どうあがいてもお前の娘は王妃にはなれまい」
「そ、そんなっ!っ、どんな処罰を受けようとも私は絶対に人間未満の魚が王妃になるなど認めない!」
内務大臣だった男は負けじと国王陛下に噛みついていたが、まさしく負け犬の遠吠え。
誰も罪人に耳を貸すことはなく、冷めた視線をむけるだけ。
「よいか?諭しても馬鹿な考えが治らぬ者は行動できる手段をなくせばよいのだ。人のいない地下牢で好きなだけ叫んでいればいい。連れていけ」
罪人はまだ諦めずに騒ごうとしたため騎士団長が鮮やかな手付きで口に布をあて、宰相と共に引きずるようにして扉の外へと連れて行かれた。
「最後にカーター、お前についてだが……」
その言葉にカーターは大きく肩を跳ねさせた。
誘拐計画に関わっていないがそれを証明できるものはない。全ては国王陛下の判断次第であるのに意味もなく無事であることを願ってしまう。
「内務大臣に機密情報を漏らしたという点くらいしか責められぬ。今日から五日間、アトランタ国王とメディーナ王女が不自由ないように下働きとして精一杯動くように」
「そ、そんなのでは罰になりません……!」
俺たち以上にカーターは本件に責任を感じていたらしく、下働きでは足りないとさらに重たい罰を求めていた。
「お前は問題を起こしたのは事実、だが、悪い面だけを見る訳にはいかぬ。私やアトランタ国王、ヘレナリア殿に先触れを出したお陰でスムーズに事が運んだのも、また事実。よって罰は先ほどの内容と変更せん。アトランタ国王もメディーナ王女もよろしいかな?」
「問題ない」
「はい、問題ございません」
あぁ、そうだったのか、こんなにスムーズに事が進めたのは裏でカーターが一人頑張ってくれていたのか。
裏切りという行為に突っかかっていた最後の棘も何だか取れた気がした。
それはルイスもライアンも同じ気持ちだろう。その顔に恨みも辛みもない。
「では、この件は以上だ。さて、ネプターよ、お前さんと旧知の仲とバレた以上、堅苦しい挨拶は不要だと思うのだが、そうなると晩餐会までの時間が空いてしまう。先ほど提案した件をするのはどうだろうか」
「おぉ、ありがたい。では、そうさせて貰おう」
意味深な笑顔で会話をする二人に嫌な予感がするのは何故だろうか。にっこりと笑いながらアトランタ国王は視線を俺たちに向けた。
「君たち、特に王太子殿下とは会話をしたいと思っていたんだ。せっかくだから男五人で会話をしようじゃないか」
やべぇ、「娘はやらん」のやつだ。メディーナ王女の身内凄くない?ブラコンとかブラコンとか。メディーナ王女は「みんななかよし」みたいな微笑ましい顔で見てくる、違う。
「承知いたしました。でも、事件が起きたばかりなのでメディーナを一人にしておくのは……」
「俺がメディーナと一緒にいます」
「は?駄目に決まっているだろ」
喧嘩しないで、仲良くしようね、これから強敵が待ち受けているのだから。
というかルイスとカーターは従兄弟から義兄弟になるのか、現実逃避から関係ないことを考えてしまう。
「安心なさい、メディーナさんは私と女子会をするから一人にはさせないわ」
喧嘩が勃発しそうな空気感を壊すように入口からヒールの音と共に王妃殿下が登場する。
もう遠い昔の話のように思えるが、メディーナ王女とのお茶会が予定されていたな。
「初めまして、メディーナさん。今日は大変だったでしょう。お疲れでしたら後日でも構いませんが、私とお茶会はいかがかしら」
「お誘いありがとうございます。ルイス様からお話を伺っておりまして、お茶会するのが楽しみでした。ぜひ、お伺いさせてください」
少し威圧感のある王妃殿下に怯むこともなく、にこにこと嬉しそうにするメディーナ王女に王妃殿下は早速毒気を抜かれている。メディーナ王女強すぎる。これなら一方的に虐められることもなさそうだ。
「……そう、では私の部屋にいらっしゃい」
ルイスなのかカーターなのかわからないが、メディーナ王妃殿下は手を振ると王女の後をついていった。
俺もこのままどさくさに紛れて逃げようかと思うくらい、この後の圧迫面接が怖い。
「では、私たちも移動しようか」
カーターはともかく、なんでルイスもライアンも何食わぬ顔をしているのか。俺は今から胃が痛い。
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