第五章:いざ同盟なり(3)
辺りは木々ばかりで少し薄暗い場所。転げ落ちるように急いで馬車を降りると、古びた小屋がぽつんとあった。
こんなところに小屋があるなんて誰が考えるだろうか、きっと誘拐されていたら見つけ出せなかった。
後をつけていた騎士だろうか、ぱっと見だけでも三名ほどが小屋の中からは死角になる場所に立って様子を常に伺っている。
俺たちも音を立てないよう、そして中からバレないようしゃがんで移動をし、窓から中を伺うと目を見開いてしまう。
ルイスも口をあんぐり開いていた。
「お嬢ちゃん、この国は初めてなんだって?それなのに怖い思いをさせて悪かったよ」
「依頼元には俺たちが良い感じに言っておくからな!あと一時間くらいここに居てくれたら、その後城下町の美味い店に連れていってやるよ!」
「え、本当!行きたい!」
なんか誘拐犯に丁寧に接待されている。凄く馴染んでらっしゃる。
え、なんかお茶だされているし、膝に毛布かけられているし、楽しくおしゃべりしている、なんて和気あいあいとした雰囲気でしょう。
いつの間にか到着していたカーターもライアンも「これ現実?」みたいな顔をしていた。
なるほど、誘拐犯とも仲良くなるコミュニケーション力は王妃としての素質すぎる。
怪我等の酷いことはされていないようなので一安心、ルイスとカーターは涙目で鼻水をすすりだす。
取り敢えずはあの誘拐犯を捕まえなくてはならない。
軍務大臣や騎士たちと会話をして、土壇場でメディーナ王女を人質にされると困るので騎士二名が先陣をきって入り、もう一人は窓の傍で待機となった。
騎士がドアをけ破り、俺たちも後に続き、小屋の中に入る。
誘拐犯は慌てて立ち上がり、メディーナ王女の前に立ちはだかると剣を構え、威嚇するように叫んだ。
「お前ら誰だ!メディーナちゃんに酷いことはさせねぇ!」
「いや、お前たちが誘拐したんだろ!」
思わずツッコミを入れてしまった。なんか悔しい。
「た、確かに誘拐はした!でも、こんないい子に酷いことなんてできねぇ!」
「お前らは内務大臣の部下だろ!」
「違う!違うからな!内務大臣からメディーナ王女を守る側だ!」
なんで誘拐犯に弁明をしないといけないんだよ。
「噓つけ!」
「信じないからな!」
普通に人質にされるよりたちが悪い。面倒なことになってしまった。
そんな時、誘拐犯の後ろからぴょこっと顔を出したメディーナ王女はぱぁっと顔を輝かせる。
どうやら誘拐犯のせいで誰が入ってきたかも見えなかったらしい。誘拐犯、色々と邪魔。
「大丈夫よ!本当に知り合い!大好きな人!」
メディーナ王女が直々に説得してくれたお陰で誘拐犯は渋々どいてくれた。
騎士は誘拐犯に近づき縄を出すと抵抗なく捕まっていた。どうやら罪の意識はあるらしい。
メディーナ王女はにこにこの可愛らしい笑顔を浮かべてこちらに走ってくる。
ルイスも「大好きな人」発言なのか可愛い笑顔で走ってくれることが嬉しいのかにこにこで手を広げる。
感動の再会、余程ルイスが好きなんだと思っていた。なのに。
メディーナ王女はルイスを素通りしてカーターに抱きついた。やばい!色々とやばい!
ルイスの顔が闇を煮詰めたような酷い顔になっている。
俺とライアンは両手を口にあてながら、修羅場に巻き込まれて死ぬことを悟った。
そんな俺たちに気がつかないカーターは顔から汁という汁を垂れ流して、メディーナ王女を抱きしめる。お前死ぬぞ、今日は命日だぞ。
「ぶじでよがっだ!」
泣きすぎてだみ声のカーターにきゃっきゃとはしゃぐメディーナ王女。
もしよろしければ般若みたいな顔をしたルイスの機嫌を取ってもらってもよろしいでしょうか。でもメディーナちゃんはカーターにべったりだし、可愛い笑顔のままとんでもないことを口にする。
「会いたかったわ、お兄様!」
「「「えっ?」」」
三人の声が綺麗に揃った。
お前、メディーナ王女の兄貴なの!うっそだろ、お前!人魚だったんかよ!
「お義兄さん、妹をください」
「ぜっだいに!みどめない!」
ルイスの反射神経はおかしいし、カーターは即答で断った。
メディーナ王女を必死になでなでしているカーターに薄っすら犯行動機が見えた気がする。
「感動の再会は結構、ただ両国の国王陛下がお待ちですので王宮に戻りますよ」
軍務大臣の呆れた声を聞くのは何度目だろうか。
再び馬車に揺られながら俺たちは王宮にもどった。
ちなみに馬車で誰がメディーナ王女の隣に座るか戦争を勃発させたので、ルイスとカーターとメディーナ王女を一つの馬車に押し込んで後はメディーナ王女に任せることにした。
さっきの誘拐犯のことを考えると上手い具合に手綱を握ってくれそうなので。
軍務大臣の「王の間で皆さんお待ちです」という案内に従って王の間に移動する。
部屋には我が国の国王陛下とアトランタ国王、王弟殿下、そして縛られて床に跪かされている内務大臣がいた。罪人扱いなのだろう、両脇には騎士団長と宰相がおり、これ以上罪を重ねるのならいつでも首を落とすぞという布陣に見えた
「あの娘は王太子殿下以外の男の名前をだして、部屋の扉を開ける売女だぞ!」
わーわーと叫ぶ内務大臣にルイスはメディーナ王女の耳を塞ぎ、カーターは内務大臣のところにダッシュで移動した。
どうやら内務大臣はカーターがメディーナ王女の兄と知らず、ルイスの婚約者に横恋慕している男だと思ったのだろう
「てめぇ!ふざけんな!うちの可愛い妹に何してくれてんだよ!俺は!兄として!拗らせて病んだ監禁野郎から!守るためにお前に協力したんだよ!危害加えてんじゃねぇ!」
カーターは内務大臣の胸倉を掴むと勢いよく上下に揺すりだす。あれをされたら絶対に吐く。
ちなみにカーターの発言中もルイスはメディーナ王女の耳を塞いでいたので注意勧告は一切聞こえていない。十中八九といわず十割故意。
読んでいただきましてありがとうございます。
面白かった、続きが気になる、と思ったら下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、イマイチでしたら星1つと正直に評価いただけますと幸いです。
ブックマークもいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。




