第五章:いざ同盟なり(1)
いよいよ明日、アトランタの国王とメディーナちゃん改めメディーナ王女がやってきて、同盟が正式に決まることになる。
俺たちの念願がやっと叶うと思うと感慨深いもの。今までの苦労が走馬灯のように浮かんでくる。いや、頑張りすぎじゃないか?と思うくらい。
期間は五日間、初日は晩餐会や対談などを行い、二日目は実際に同盟を結ぶ。記者なども呼び、ここで国民にも公表することとなる。三日目以降は異文化交流センターや貴族学校の下見や国の視察になる。
俺たちは同盟を主導した人間ということで学校を休み、五日間同盟のサポートをすることになった。
何度確認しても落ち着かない、いや、一番落ち着かないのはルイスだろう。何といってもアトランタの国王の訪問日が決まった同日に王妃殿下から「メディーナさんがいらっしゃるようね。私のところに連れてきなさい。初日であれば問題ないと国王陛下から許可は得ているわ」と言われてしまったから。
現状でメディーナちゃんを婚約者にすることについて、アトランタ側の許可がおりていて、あの場で国王陛下は何も言わなかったので国王陛下自体もメディーナちゃんを嫁にすることを認めたのだろう。諦めたとも言えるかもしれないが。
そして、喜んでいいのか悩ましいがメディーナちゃん自体も王太子という身分を明かしてプロポーズをしたがオッケーがでたと酒でも飲んだのかと疑うくらいのテンションでルイスが報告してくれた。
同盟は九割くらい確定しているが、メディーナちゃんの嫁の件は六割弱、王妃殿下が次期王妃を認めていないことはかなり重たいのだ。その上、裏には内務大臣も絡んでいるので手強いといったらありゃしない。
だから、王妃とメディーナちゃんのお茶会で婚約が進められるか厳しくなるかが確定してしまう。
ルイスは二人が来るまで、毎日せっせとこの国の歴史や王妃殿下の好みをメディーナちゃんに教えているらしい。俺たちは応援しかできない。
落ち着かないまま、あっという間に当日を迎えることとなった。
アトランタ国王とメディーナ王女は異文化交流センターを利用したいということで、俺とルイスはセンターの人魚用の入り口で二人を待つ。カーターとライアンは王城で最終チェックをしている。
実はセンターの入り口は人間用と人魚用の二種類がある。人間用は通常の通路になっているが、人魚用は海と繋がっており、人魚のまま泳いでセンターの中に入れるようになっているのだ。
前回の視察のことを考えて、念のためセンターには男物と女物の服を大量に用意してあるので出迎える布陣は完璧だ。さぁ!どんな服装でも来い!そう覚悟を決めた時だった。
エメラルドの尾ひれをした体格のいい男性と黒い尾ひれをした小柄な女性が現れる。
どこかどっしりと構えたようなダンディな男性がアトランタ国王のネプター様、隣の絶世の美女は初めてみるが噂はかねがね聞いているメディーナ王女か。
二人は小瓶の薬を飲むと体が徐々に変化し、あっという間に銀とエメラルドでできた品のあるベストコートと銀と青の美しいドレスをまとう姿になっていた。
ま、まとも~~~!あの四人は一体何だったのかと思うくらいに二人に似合う洗練された格好だった。
ヘレナリアさんもそういえば普通の格好だった、あ、もしかしてヘレナリアさんチョイスだろうか。
「ようこそいらっしゃいました。アトランタ国王陛下、メディーナ王女。僕はマーレリア帝国の王太子、ルイス・メーアバハルと申します。隣にいるのはこの国の宰相の息子であるレオナルド・サーザリアです。お会いできるのを楽しみにしていました」
「出迎えありがとう。ルイス王太子、私も君に会うのが楽しみだったよ。うちの娘とは面識があるようだね。娘ともども五日間よろしく頼むよ」
優しいのにどこか威厳のある声で話すアトランタ国王は右手を差し出し、ルイスと握手を交わす。その顔が誰かに似ていると思ったがエイデンさんかと思考を現実に戻す。メディーナ王女は迷いのない動作でドレスの裾を持つと優雅にお辞儀をしてくれる。噓だろ、ドレスを着ない文化圏なのに様になりすぎている。
これは王妃殿下との話し合いも期待できる!
「さっそく王宮へとご案内いたします。ここから王宮は少し離れていますので馬車にて移動になります」
ルイスが先頭に立ち、二人を案内するので俺は一番後ろに回って付いていく。
前回のお忍びの視察ではないため今回は数名の護衛らしき人魚がいる。問題ないか後ろを一瞥するが、距離を置いてついてきているようなので海も陸も関係なく護衛は遂行しているらしい。
王宮に到着したら、まずは寝泊まりする部屋へと案内する。
変身薬を飲んだときの辛さや陸までの移動の大変さは俺たちではわからないため、前回から一貫して王宮についたら休む時間を設けようと決めていたのだ。
国王陛下にも納得してもらっているため、挨拶も夕方に予定している。
ただ、メディーナ王女に関しては国王陛下に挨拶するまえに☆チキチキ義理の母親からの圧迫面接☆が開催されるため二時間くらい休んだらお仕事の時間になってしまうのは申し訳ない。
本人は「アトランタまで往復できるくらい元気です!」とイマイチ元気度が測れない言葉を貰ったがメラメラとやる気に溢れていたので大丈夫と判断した。
二時間後に迎えにきますと伝え、俺たちはルイスの部屋で待機する。
ルイスの部屋に行けば、カーターとライアンは家主より先に居座っていたので最終チェックも問題なかったことが伺える。
明日以降の予定を確認したり、メディーナちゃんめっちゃ美女と話をしたりと二時間はあっという間に過ぎていく。ちなみに「メディーナちゃん可愛い」と言っただけなのに「絶対にやらん」とルイスに胸倉を捕まれたので友達を続けていく自信がちょっぴりなくなった。
四人でわちゃわちゃと話しながらメディーナちゃんの部屋に向かうと何故かその近辺は異常なほど人がいなかった。侍女や騎士など最早いないようなもの。
貴賓に対して一体何をしているのだと眉をひそめて、部屋から少し離れたところで仕事をしている侍女に詰め寄るようにして確認をする。
「貴賓相手だから侍女や騎士を部屋の傍に控えるように言ったはずだが?」
「も、申し訳ございません、そ、それが、別の侍女がお部屋にいらっしゃるお嬢様に『人の気配や音に敏感で休めないから人を離れさせてほしい』と言われたようで人を減らして、少し距離を置いて控えるようにしていました」
それほどまでにメディーナ王女は疲れていたのだろうか、それとも人種的に音や気配に敏感なのか?前回の四人はそんなこと一言もなかった。
しかし、万が一のことに備えることも必要なので、侍女はともかく騎士は傍に控えさせておかないといけない。
いや、時間が時間なのだ、先に王妃殿下のところに案内しなくてはいけない。お茶会が終わった後にでも相談しようと決め、扉をノックしながら声をかける。
「メディーナ王女、王妃殿下との約束の時間になりましたため、お迎えに上がりました。扉を開けてもよろしいでしょうか」
しかし、いくら待っても返事はこない。
眠ってしまったのだろうか、しかし、この後の予定的に困る。念のため扉の取手に手をかければ鍵はかかっていない。それにどうにも嫌な感じがした。なぜか頭の中で警報が鳴り響く。
俺たちは顔を見合わせれば、頷いて、部屋の中に入る。部屋の中はがらんとしており、メディーナ王女はどこにもいなかった。
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