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おいでませ、人魚ちゃん  作者: 琥珀 みつ花


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第四章:人魚ちゃん、いらっしゃい(5)


「どうします?助けますか?うちとしては三日と言わず一週間くらい放置していただいて構わないのですが」


先にこの場に到着していたカーターから誘拐犯たちの会話を聞けば、全員が深刻な顔から淀んだ目になる。通りでカーターが死んだ顔をしていた訳だ。色々とおかしい。

エイデンさんも、放置でいいと言うくらいには助ける気が起きない事件なのだ。

この心に素直になってしまうと、「じゃあこのまま放置して、美味しいものでも食べに行きますか!」と元気よく口にしてしまう。政治的な諸々を考えると俺たちの回答は「いやー、気が進まないですけど、一応?助けますか……?」になる。

渋々といった態度を隠さずフィジカル化け物のライアンを先頭に俺たちは堂々とジョシュアさんたちがいる廃倉庫に入っていく。


「すみません、お邪魔します……」


ライアンの掛け声はおかしい、でも突っ込む気力もない。投げやりな気分なので。


「お、お前たち!なんでここがわかった!」


小悪党のようなお決まりのセリフに変な感動をしつつ、俺とカーターもライアンに続く。

ルイスとエイデンさんはダブル王太子なので入口で何時でも逃げられるよう待機している。


「取り敢えずジョシュアさん解放してねー」


気の抜けた言葉ではあるが、動きは俊敏で誘拐犯を連続で腹パンをしていくライアンは強すぎる。ドムッという効果音を響かせる重たいパンチに誘拐犯は床に転がりだす。

俺とカーターはライアンの無駄のない動きに拍手をしつつジョシュアさんを回収して、縄を解くだけの簡単なお仕事をした。

ライアンは誘拐犯の持ち物だろうか、床に転がっていたローブを素手で三等分にするとのんびりとした動作で誘拐犯を縛りだす。

ローブを素手で引きちぎるのは控えめにいって怖い。人間の腕とかもプチプチ引きちぎれそう。


誘拐犯は漸く自分たちが依頼されたからとはいえ、この後罰を受けることになると理解したのだろう。俺たちは悪くない!と今更ながらに騒ぎ出す。

でもライアンが肩をぶん回しながら「もう一回殴られたい人~!」と募集をかけると水を打ったように静かになる。俺も静かにしちゃう。


「で、でも俺たちは薬中の男に脅されたんだ!」


リーダー格の男だろうか、無い頭を必死に捻った言い訳はお粗末だった。


「おいおい、お前たちが金貰ったこともジョシュアさんを女だと思って犯そうとしていたのは聞いていたぞ」


カーターの言葉に誘拐犯全員の肩が跳ねた。


「お、犯そうとしたのはジョークだよ!実際にはしてない!金は、ほら、危険手当みたいなもんだよ!本当だって!俺たちだって薬中の男に恨まれないために必死だったんだよ!あんなやばい男に目を付けられたくなかった!噓じゃない!許してくれ!」


その薬中の男らしき人間は目の前で女装している。

実際ジョシュアさんは薬中でも何でもない、話を盛って罪を免れようとしているだけだろうに。


「薬中の男ってなんだ、そんないい加減な噓をつくな」


自分の口からは酷く冷めた声が吐き出された。


「本当なんだよ!依頼した男はハート柄のスーツの上にエプロンと涎掛けを装備して、鳥の羽がついたマスカレードの仮面をつけたやばい人間だったんだよ!薬中に決まっているだろう!」


この場にいる人間四人は目が再び死んだ。誘拐犯は恐ろしい光景を思い出したのか涙目だった。薬中ファッションと脳内で新しい造語ができたが二度と使いたくない。

きっとその言い訳が通じるのは俺たち四人とあの日の服屋の店員のみだろう。その他の人間には「お前たちが薬中だろ」と現実的な返事が返ってくるに違いない。

確かに想像だけでも恐ろしいファッションセンスなので言うことを聞いてしまう理由もわからないが、知らないとはいえ政治的に重要な人物を誘拐しているので温情はない。

問答無用で彼らは王宮の地下牢で国王陛下の判決を待ってもらおう。

こうして迫力も何もないジョシュアさんの捜索劇が幕を閉じた。






げっそりと疲れたまま俺たちは王宮へ戻る。休む暇なんてない、到着した足でそのまま王の間に向かう。

作戦は大失敗だとわかっているからか、ジョシュアさんの足取りは重たかった。

王の間には国王陛下たちとキャロルさん、クロエさんが先にいた。キャロルさんもまた顔面蒼白で涙をボロボロと流しているので先にひと悶着あったのだろう。


「この度は我が国の人魚がご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ございませんでした。アトランタがマーレリア帝国と同盟したいのは揺るぎない本心です。今回の件はジョシュア卿とキャロルが単独で考えた事件ではありますが、このような重要な局面にて起きてしまったことには言い訳もできません」


エイデンさん、そして続けざまにクロエさんも国王陛下に深々と頭を下げた。二人は本件に関わっていないから無関係とは言えない。

同盟が結ばれる直前という重要なタイミングでの事件、その心労は想像もつかない。


「二人の処罰についてはジョシュア卿については軍務大臣としての職を辞退させ、侯爵という爵位も男爵まで降格、家は息子に引き継がせます。そして屋敷にて幽閉を言い渡します。キャロルについては婚約を解消し、修道院へ行かせます。二人とも二度とこの国に入国ができないよう手配もいたします。他に望む処罰があれば何なりとお申し付けください。もし貴国がこのまま同盟をするという意思を持っていただけるのであれば、次はアトランタ国王のネプターが直々に伺わせていただきます。その際には高品質の真珠や珊瑚の宝石であるコーラルなどをお持ちしますので受け取っていただけますと幸いです」


「アトランタの真意、しかと受け取った。適切な処罰であるのだ、私からはこれ以上は言うまい。こちらとしても同盟の話は進めたいと思っている。ただ、今回のことで優位にことが進められるのなら話し合いの場を今後も陸にしてもらいたいものだ、我が国では人間を人魚に変身させる薬はなくてな」


「ありがとうございます。では処罰は先ほどの言葉の通り進めさせていただきます。また、話し合いの場ですが勿論です。このような素晴らしい国ですので、皆が喜んで伺うことでしょう」


エイデンさんの言葉は満足がいくものだったのだろう。

人魚が高品質という真珠とコーラル、贈り物でもらえるのだから責めるよりも感謝をすることでこの場を収めた。

処罰の結果にジョシュアさんは事の重さを自覚しているのか力なく項垂れるだけであったが、キャロルさんは理解ができていないのだろう。エイデンさんに縋りつきながら泣き喚いた。


「エイデン!そんな酷いこと言わないで!ちょっと騒ぎを起こしただけじゃない!」


わーわーとごねるキャロルさんにエイデンさんは手を振り上げて頬を張った。パシンと乾いた音が響く。

予想外なのだろう、キャロルさんはその場に座り込んで呆然とエイデンさんを見上げていた。エイデンさんの視界にはもうキャロルさんは入っていない。


「今からバイアナ男爵とスコートレッド令嬢は国家の政策に関われる立場でなくなりました。明日の帰国まで部屋に軟禁させてもらえればと思います。兵士を部屋の前に付けていただくことは可能でしょうか」


「構わんぞ。ジェイコブ、二人を部屋に連れていき、扉の前に騎士を数名配置しろ」


「かしこまりました」


騎士団長は国王陛下に一礼をすると、ジョシュアさんとキャロルさんを連れて王の間を退室した。


「さて、場所を変えて今回の本題を話そうじゃないか。主導者であるお前たちも付いてきなさい」


「かしこまりました」


手を叩き、場の空気を一新させた国王陛下は玉座から立ち上がるので、俺たちもその後へと続いていく。



読んでいただきましてありがとうございます。


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