第三章:作戦開始で大暴れ(4)
さてさて、「実は人魚でしたドッキリ大作戦」は起動に乗ったため、バネッサさん中心で進めてもらっている。次の「人間と人魚の恋愛応援し隊を作ろう大作戦」はついに本格始動させるときがきたのだ。そう、小説が書き終わり、文庫本という状態までできたので後はこれを広めるだけ。
俺たちも「海は人魚の涙でできている」とタイトルが付けられた小説を読んだがボロ泣きした。ベッドで嗚咽をあげながら小説を読んだ。ガチで涙で前が見えない状態。この本が作られた背景を知っていても泣ける良本だった。
流石ベスティアン先生、貴族がどことなくルイスを彷彿させるからこそ感情移入してしまい「絶対に二人は結婚させてやるからな!」と叫んだ。
顔面から色んな汁を垂れ流しにした状態で弟の部屋を突然して「これを読むまで寝かせない!」とほざいたのは今思い返せば奇行だったに違いない。弟は「呪いの本?」と戦々恐々としながらこの狂人を追い出すためにと本を読んで、結果泣いた。ライアンのところも同じ状況だったらしい。
早速、学校と図書館とロザリア王女に寄贈をした。ルイス経由で聞いた話では「最高かよ」と泣きながら感想を伝えられ、涙を流したままサムズアップをして「お姉様にまかせなさい」とお茶会で広めると約束してくれたらしい。かっこよすぎかよ。
ちなみに読書好きの王妃殿下にも読ませたら「私の存在でこの悲劇を招くの?」といって号泣していたとのこと。うん、作戦としてよさげ。
ロザリア王女のおかげもあってか、この本の口コミが爆発的に広まる。
ベスティアン先生のところに感想が届くようだが抜粋するとこんな感じ。
「推しカプよ、結婚してくれ」
「なんで結ばれない??人間は人魚ちゃんとの恋を応援します」
「誰がこの悲劇を防ぐんだ!私だよ!」
人魚という存在だけでなく、人間と人魚の恋愛についても受け入れられる土壌がじわじわと育ってきた。だからこそ、作戦は次の段階へと進めていく。大臣に対しての根回しだ。
ただ議会に議案を提出すれば可決されるというものではない。
四人いる大臣のうち、三人からは了承を得ないといけないのだ。議案を出す前に読めない腹を探らないといけないのだ。
俺たちの中で最初に説得する大臣は決めていた。外務大臣である。
外との交流を担う大臣は新しい交流について議会でも前向きな意見が多いため一番説得がしやすいと考えたのだ。ルイス経由で声をかけ、時間を作ってもらい、外務大臣の部屋へと訪れた。
「話の内容は最近皆さんが忙しいことでしょうか」
相手は政治という分野で百戦錬磨のつわもの。自分たちの年齢の三倍近くある大臣に一体どうやって話を切り出そうかと出されたコーヒーを飲みながらまごつくひよっこを見かねたのか、外務大臣から話を切り出してくれた。
いきなり本題へと切り込まれ、冷静でいなくてはと思うのに心臓が少し飛び跳ねた。
「あぁ、次の議会で我が国の新しい同盟先を提案するつもりだ。その議案が可決されるよう根回しをしにきた」
ルイスは答えを煙にまくことなくわかりやすく明瞭に答えた。外務大臣にアイスブレイクを必要としていないと判断したのだろう。そして口調も部下に接するモードになった。
先ほどの言葉から俺たちが最近四人で集まっていることも、国王陛下に謁見したことも把握しているようなので濁す意味はない。
「私の勝手な予想ですが、その同盟先は伝説とされている人魚の国でしょうか」
「……流石の慧眼だな。そう判断した理由を教えてくれないだろうか」
「立場上、他国だけではなく自国の流行りものを調べないといけないものでして。最近、人魚の悲恋小説が流行っているみたいですね。私も読んでみましたが、この年で恋愛小説で泣くとは思いませんでしたよ。ちょっとした好奇心でこの小説が作られた経緯を調べたらあなた方の存在が浮き彫りになりました。タイミング的に関わっていると推察したまでです。あぁ、一応ですが、ここまで予想ができているのは私だけだと思いますよ」
いくら小説が人魚を題材にしているとはいえ、同盟先として予測できるなど発想が柔軟すぎる。確かに外交の要として話のネタになる情報を集める力は国の随一。実際に出されたマーレリア帝国では珍しいコーヒーも確か隣国で今流行りの飲み物のはずだ。見習いたいものだ。
というかこの人もあの小説を読んだのか。大臣が悲恋小説で泣いている姿はちょっと見てみたい。
「なるほど、その推察は間違いではない。実際に海底の国の重鎮と協力して同盟を結ぶために動いている。父上からも口頭ではあるが了承を得た。我が国より発展した薬の知識や海難事故の手助け、海の資源の貿易などメリットが多い。この件であなたの見解が聞きたい」
「そうですね、私は海底の国との同盟は賛成だと思っています」
考える時間は一切なく、今日はいい天気ですね、くらいのテンションで賛成してくれた。
ヌルっと賛成されたせいで手ごたえを感じられない。
「随分とあっさり賛成してくれるんだな」
ルイスは表面上の変化はないが、その声は驚きというより疑いの念を感じさせる。
「簡単ですよ。海底の国と同盟をすることで我が国が発展するからです。文化が違うことは尊ぶべきです。違えば違うだけ互いに発展の兆しがある。外交を広げることで我が国の成長が見込めるのなら後押しをするのが私の立場ですので。それに海底の国と同盟したとなれば他国との交流で話のいいネタになる」
簡潔でいて外務大臣らしい言葉は疑いの気持ちを払拭してくれる。
「あなたらしい理由だな。他の大臣もそのようにあっさりと賛成してくるといいのだが」
ルイスの上手い話題転換に心の中で拍手する。他の大臣が皆外務大臣のようだとは思えないので少しでも情報収集をしたい。
「中々難しいかと、特に軍務大臣はこの国を守る人間。未知のものに警戒するのも仕事の一つなのでね。私の次に賛成してくれるのは財務大臣かと。この国に経済的なメリットがあるなら彼は賛成します。個人的には海の特産品や観光地だけでは同盟としては微妙ですね。後一手必要かと思います。内務大臣は軍務大臣よりかもしれません。国民へのメリットが求められるため厳しい視点で判断するでしょう」
「具体的な助言、礼を言う。その言葉が無駄にならないようこちらも対策を練って説得しよう」
「議会での結果を楽しみにしております。個人的に人魚にロマンスを感じておりましてね、是非会わせてください」
茶目っ気たっぷりに笑う外務大臣に漸く肩の力が抜けた。と同時に今後これが三回もあるのかと少し憂鬱にもなる。
次に説得する大臣について話し合いをしたが全員が「財務大臣」と言ったため即決で決まった。外務大臣の言葉を参考にするなら現状で挙げられているメリットでは同盟の必要はないと判断されるのだろう。確かに同盟は重たい。戦略的にも経済的にも常に同盟国の存在を視野に入れないといけない。その上、同盟国が危険な目に会えば手助けも必要になる。
生半可な理由で同盟を結べば後々困る可能性もあるし、他国から「うちとも同盟してよ!」と言われて断れなくなってしまう。
友好的な国でもいいのだが、俺たちの裏事情である「メディーナちゃんをルイスの嫁にする」ことへのハードルが高くなる。
人間じゃないことで横やりが入りまくるし、アトランタも納得してくれないだろう。向こうは人魚という珍しい種族であることを守ってくれる絶対的な理由を欲しているのだ。
安全じゃない国にメディーナちゃんは渡さない、をされる可能性がある。
でも、他にメリットがあるだろうかと四人で頭を悩ませるが中々いいアイディアはでてこない。議会の日程を考えれば財務大臣への根回しはすぐにでもしたいのに、今回ばかりは無言が多い話し合いになり、泣く泣く解散となった。
自室に帰ってきても、一晩寝たスッキリとした頭で考えても、何にも思い浮かばない。
ここにきて初めて行き詰まりを感じていた。
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