第三章:作戦開始で大暴れ(1)
「なぁ、国民にドッキリ大作戦を仕掛けようと思うんだが、お前らはどう思う?」
もはやルイスの部屋に集まることが定期開催になったこの頃。部屋に四人になるや否やカーターは訳が分からないことを提案してきた。
どうしてこの部屋にいると紅茶を大人しく飲むことは叶わないのか。俺の死因が紅茶を飲んでいる最中にむせて溺死とかになりそう。
「頼む、いっぱい説明してくれ」
俺の切実な提案にルイスもライアンも神妙な顔で頷いた。
「いや、対国民への人魚受け入れてもらう作戦を考えていたんだよ。此間の王妃のことを考えると人魚っていう先入観だけで抵抗を露わにする人はいると思うんだ。なら、人魚と知らないうちに交友関係を結んでいて同盟の後くらいに、『じゃじゃーん!自分人魚でした!』ってネタバレをして、案外人魚いい奴じゃんってなれば受け入れやすいんじゃないかと考えた。仮に人魚だとネタバレされた途端に抵抗感を覚えるなら本人も人魚に対して良くない偏見を持っているって自覚できるんじゃないかって。どうだ?悪くない案だろ?」
なるほどね。「実は人魚でしたドッキリ大作戦」ってことか。突然何を言い出すのかと思ったが中々いい計画じゃないか。
ヘレナリアさんが人間変身薬を作れると分かった今、その案を実行できることもわかっている。ルイスもライアンもいい案だと思っているのだろう、「流石カーター」という顔をしている。
「いい案だと思う。問題は『実は人魚でした』をしてくれる人を誰にするかなんだが、一つ提案したい。その人魚にはこの国で店を開いてもらうのはどうだろうか。海の特産品や便利グッズなんかを販売する店。それなら人魚に関わる国民も必然的に増えるし、店の商品が気に入ったなら人魚とばれた後も関わる必要がでてくるので差別もなおの事しにくいはずだ。その上、貿易の試運転としてこの国で需要が高い海の特産品がわかる。一石二鳥どころか、一石三鳥くらいある。ヘレナリアさんに国王陛下の承諾の件を連絡するついでに人を紹介してもらえば勝算はある思う」
「え、なに、カーターもレオナルドも天才なの?」
ライアンは目をキラキラと輝かせて拍手をしながら俺たちを見た。照れるやい。
俺とカーターはちらりと最終決定権があるルイスの顔色を伺う。
国民を巻き込むことなのだ、俺たち以上にこの国の経済やら安全やらを教育されているルイスの意見は重要になる
「妙案だと思う。僕には考えつかなかったよ。凄いな」
こいつは褒めるときは素直に褒めてくれるのだ。口元をにやつかせながら俺たち二人は胸を張った。
「その作戦自体は決行するけど、店のターゲットは働き盛りの人間だろう。子どもや老人なんかも取り込みたい。あと、その作戦だとあの子を嫁にするには薄い。対国民に向けてもう一つ作戦を提案したい」
上げて落とすのは卑怯なり。でも、もっともな意見だった。
ルイスが嫁のために発案した内容とはどんなものかと戦々恐々としながら先を促す。
「……おう、その提案ってなんだ」
「人間と人魚の恋愛小説を流行らそうと思う。貴族の人間と平民の人魚のラブストーリーでハッピーエンドのやつはどうかな。小説家にはあてがある」
やべぇ、とち狂った発言をするのはカーター専売特許なのにルイスまでもとんでもない提案をし始めた。逆立ちをしたとしてもこの発言がでてくるとは思えないことが悲しい。
しかし、この提案も実践的だ。本を読むことが多い子どもと老人がちゃんとメインターゲットになっている。
「概ねいいと思うが、結末はバッドエンドの方がいい。しかも権力によって離れ離れになるやつ。そっちの方が爪痕が残って頭に残りやすいし、何よりルイスとお嬢さんという実例ができたときに『応援しなきゃ!』になると思う」
「はい!俺からも提案です!その小説ができたら貴族学校と図書館に寄贈するのと、ロザリア王女にお茶会で話題に出してもらうのはいかがでしょうか。あと、個人的には王妃殿下にも読んでもらいたいです!」
挙手をしながら補足をしてくれるライアンによって中々いいアイディアが生まれたのではないだろうか。国民全員を泣かせようという気概を感じる。
カーターは現場監督のように腕を組みながら深々と頷いてくれた。
「採用だな、よくそんな規格外の考えができるな」
お前に言われたかねーよ、という言葉は三人とも飲み込んだ。
「あと考えないといけないのは金だよな。店の建物の賃料についてはその人魚と相談だが、小説家への依頼代は必要だろう。ぁー、その、去年の冬期休暇でやった研究が表彰されたときの賞金がそろそろもらえるはずだ。個人的にそれを使うのがいいと思うけど、どうだ?」
悲しいことにアトランタとの同盟に国家予算は割り振られていないのだ。議会で可決されれば国家予算を使うことができるのに。
逸らしていた問題を敢えて口にし、恐る恐る確認をする。
別に金に困ってはいないが、金の切れ目が縁の切れ目と言うだけあって各個人が負担をして失敗したときに関係がギスギスするのは避けたい。プラスアルファで貰える金であれば痛手ではないし、もし成功すれば収入源にもなる。
「そういえば、そんなのあったな。普通に忘れていた。俺はレオナルドに賛成だ」
「賛成!俺も忘れていたや」
「僕も賛成、というか提案してくれたのも、賛成してくれたのもありがとう」
ルイスは嬉しさを噛み締めるように頬を緩めた。
「これは投資みたいなもんだよ」
「そうそう、成功すれば更に金は増えるだろ」
「良い小説家、紹介してよね!」
さて作戦開始だと俺たちは気合いを入れ直した。まず時間がかかりそうな「実は人魚でしたドッキリ大作戦」の店の準備から。
いつものルートでルイスからメディーナちゃん、そしてヘレナリアさんに連絡をしてもう一度会いたいと日程調整をした。
対面でヘレナリアさんに国王陛下から承諾をもらったことを伝えつつ、人魚差別をなくすために「実は人魚でしたドッキリ大作戦」と「人間と人魚の恋愛応援し隊を作ろう大作戦」を実行する予定です、と報告したら大爆笑された。
相変わらずヘレナリアさんの横から離れないロイさんは「人間って脳みそおかしいの?」という顔をしていた。失礼だな。
「つきましては、陸への出店にご協力いただくことは可能でしょうか。もし、アトランタでお店を出すことを目指していて、お金や場所で出せない方がいうれば俺たちで支援します」
「んー、そうだね、ならバネッサが丁度いいかもね。私の二番目の弟子なんだが、店を持ちたいが既に私とロイがいて店の利益が見込めないから店を開けないとしょんぼりしている子がいてね。是非とも陸にでも店を構えさせてやりたいと思っていたんだ。あの子ならコミュニケーション力もある。ついでに私も何度も陸に来られるもんじゃないからバネッサに通信機器を持たせて、バネッサ経由で私に連絡、私から海の王に話をするという連絡経路を取りたいんだ」
ヘレナリアさんにはもう頭が上がらない。俺たちは深々と頭を下げてお礼をいいバネッサさんを紹介してもらった。
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