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おいでませ、人魚ちゃん  作者: 琥珀 みつ花


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第二章:始めまして人魚ちゃん(8)


俺たちはどうなったかというと現在進行形で床に正座をされている。

国王陛下も騎士団長も父上も胃が痛いのだろう、腹を擦りながらいい年した息子たちの奇行に泣きそうになっていた。

流石はカーターの父親なだけあって王弟殿下は腹を抱えて笑っていた。


何があったか語るほどでもないが、まぁ、テンションが上がりすぎてしまったにつきる。最初は顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったが途中から吹っ切れたのか楽しくなってしまったのだ。

床を横に転がったり、ライアンは至ってはでんぐり返しをしたりと思うがままに行動した。

最終的に国王陛下の「わかったから止めろ!」という悲痛な声で終了となった。

ルイスが起き上がって「契約書にサインください」と国王陛下を脅し、ではなく交渉をしている。その間俺たちは直ぐにでも第二弾を実施できるよう寝っ転がったまま待機していた。

もう国王陛下は泣きそうだった。完璧であった息子が跡形もなく消え去ってしまったのだからそうもなる。


「……色々と言いたいことはあるが、こうして私に提案をしたということは多方面への準備は進めているのだろう。私が聞きたいのはたった一言。上手くやれるのだな……?」


ルイスの今までの行動ゆえの信頼なのか、上手くやれなければ王座はないという脅しなのか。きっとあの視線を直接受けているルイスは考えられないほどの重圧を受けているだろう。それでもルイスは国王陛下から視線を逸らさなかった。


「はい、最善の結果を出します」


その言葉に国王陛下はにわかに表情を和らげた。


「そうか、そうか、ならいい。お前たちの提案については許可を出そう。次に正座をせい」


俺たちは口答えをすることなくそっと正座をすることとなった。


「お前たちはあと一年で貴族学校を卒業して社会にでるのだ。そろそろ年相応の振る舞いというのを身につけなさい。後、いい年した親に心労をかける行動は慎むべきだ」


ぐうの音もでない正論に俺たちは項垂れる、なんてことはなく、開き直っていた。


「弁論対決になったら負けるのでパッションで押し切ろうと思いました。後悔はしていません」


キリっとした表情で父親たちを見れば、恐らくであるが「はわわ、帰ったら躾しなきゃ!」という心の声が駄々漏れな表情をしていた。ごめんなさい、嫌です。

額を抑えた国王陛下は重々しく口を開いた。


「同盟をするには次の議会で四人の大臣から三人以上の指示を受けなくてはならない。軍務大臣、財務大臣、外務大臣、内務大臣それぞれに根回しが必要になるだろう。一筋縄ではいかない。よくよく計画を練って進めなさい」


国王陛下の助言を最後に謁見は終了となった。

失うものは多かったが得られるものも多かった。俺の脳内には「弁舌対決で負けそうならば、パッションを見せつけろ!」という体育会系的な考えがインプットされることとなる。ただ、二度とこの戦法は使いたくないし、今日の出来事も振り返りたくもない。

ちなみに自宅では仕事から帰ってきた父上にどんな叱責を受けるかと思ったら、「弱みでも握られたか……?」とガチで心配そうな顔をされた。どんな叱責の言葉よりも胸が痛かった。


こうして海底の国アトランタとの同盟は小さい一歩であるが確実に前に足を進めている。進んでいるのは同盟の準備だけではなく、ルイスとメディーナちゃんとの仲も着々と深まっているようだった。

相変わらず毎晩メディーナちゃんと逢瀬を重ねているらしく、毎度学校の昼休みに報告してくれる。

王族が二人もいるので学校のお偉いさんたちが身の安全を考えて、俺たちがランチを取るのは通常の食堂ではなく食堂に隣接された別室であるため話をしても安心安全。

朝からそわそわしていたルイスは興奮した様子でいつも以上に身振り手振りが大きくなりながらメディーナちゃんとの時間がどんなに素敵だったかを教えてくれる。


「あの子がね、海で採れる珍しい花をくれたんだ。絶対に枯れさせたくないんだけど、どうすればいいと思う?」


きっと逢瀬自体は素敵だったのは事実だろうが、ルイスの主観を挟むと耳を塞ぎたくなる思い出話になる。毎日、昼食を食べながら恋愛と見せかけて人間は実は怖いんだよ系のホラーストーリを聞かないといけないのか。此間いい年した父親に心労をかけた罰だろうか。ルイスだけ免罪になるのは許せないが。


「無理だと思う」


「お前は何で毎回俺たちを怖がらせたいんだ?」


「それを正直に言って定期的にプレゼントしてもらったら?」


「ライアンの考えはありだね、でも貰った花は枯れたからって捨てたくない。どうしよう、食べるしかないかな」


「「「やめなさい」」」


好きな人に花を貰って枯れさせたくないはまだ人間として理解できるが、食べるという発想はまずでてこない。

どう考えても「素敵な人!」とはならない。「ふーん、最近は人間に擬態した化け物が多いんだ」と双眼鏡で漸く観察できるくらいの距離で眺めたくなる。決して交流する類のものではないと断言できる。

後、普通に食したら毒があるかもしれないだろう。まぁ、ルイスはメディーナちゃんから貰ったプレゼントで苦しんでいる!メディーナちゃんのことを何時でも感じられて最高!と喜びそうなのが何とも言えない。


「それにプレゼントをもらうだけでは悪いよね。此間、王室に献上されたブルーダイヤモンドとかどうかな」


もう嫌だ。ルイスの常識が日々迷子になっている。何をしたら帰ってきてくれるのか問いたい。いや、常識もこんな人間が嫌になって家出した可能性がある。

ブルーダイヤモンドって王都に屋敷一つ軽々と建てられるくらいの宝石だろ?

珍しすぎて見つかれば王族に献上される類の宝石だよな?


「お前!花の対価が国宝級の宝石とかやめろ!」


「馬鹿じゃねーのか!相手は萎縮するだろ!」


「なんでそんなに重たいの!花のお返しだよ!」


食事中にも関わらず席を立って叫んだ。その瞬間だった。


「おい!レオナルド!ライアン!カーター!廊下まで声が漏れている!少しは大人しくしろ!」


なんで俺たちが怒られるんだよ!確かに騒いだけど、仕方ない出来事があったんだよ!


「すみません、よく言っておきます」


ルイス!この野郎!お前が騒がせたんだろ!俺たちをさらっと悪者にするな。






「不在にしていた間に野良猫が入り込んでいたようだな」


ここは王宮の一室。不在だった部屋に男が戻ってくれば部屋を出る前には無かったものがあることに気がつく。

わかりやすくデスクの上に真っ白な便箋が置かれている。封筒にも入っていないそれは、インク瓶が重し代わりに置かれているだけ。不在にした間に誰かが侵入したことは明確であった。

封筒に入っていれば面倒だと即座に捨てていただろうソレ、それなりに自分のことを知っている人間の仕業か、はたまた入念に調べられていたのかと頭で何パターンもの考えが思い浮かぶ。興が乗ったため、その便箋を手に取り、美しい文字で書かれた手紙を読んでいく。


「突然、このような形で手紙を出すことになり申し訳ございません。実はルイス・メーアバハルが人外を嫁にしようとしている話を耳にしました。私はこれを防ぎたい。どうか大臣であるあなたにお力添えいただけないでしょうか。次期国王の隣にはあなたの娘が相応しいと思います。もしこの話に乗っていただけるのであれば、実際に直接お会いしてお話をしたいと思います。つきましては……」


男は手紙を読み終わると心底楽し気な笑い声を部屋に響かせた。



読んでいただきましてありがとうございます。


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