悪役令嬢、1人の冒険者として騎士団員にお願いする。
夕方時を迎えたばかりのダナン村。
その村内にある、村長達上役が集会や会議に使われる集会所の小屋内にて、私達4人の冒険者、コンロッド様を筆頭とする炎の騎士団分隊、そしてダナン村の村長を始めとした猟師頭、鍛冶師、農夫頭、自警団長で構成された上役の面々が集まり、魔獣対策の合同会議が行われていた最中。
私は席に立ち上がると同時に、魔水石を使った魔獣に対する攻略方法を皆さんに報告した。
セレナ「___以上が、魔獣オクトルーパーに対する対処法です。」
炎の騎士団員A「…どう思う?コンロッド。」
コンロッド「確かに、この対処法なら魔獣を何とか出来るかもしれないな。」
そう言いながらコンロッド様は、用意された茶の入った木製のグラスを右手で掴み取り、一口だけ茶を啜り飲んでから、静かにグラスを置いてからコンロッド様は右手で自分の橙色のオールバックを少し掻きむしりながら言った。
コンロッド「……にしてもだ。まさか現れた魔獣が海に生息する海獣系とはな。村長、村や森に魔獣が現れる前、何か変わった事は無かったか?例えば、他所から冒険者とか旅商人とか。」
ダナン村老村長「他所からですか、ううむ、些か、検討掴めません…。」
すると、村長の隣に座ってた上役の1人が何かを思い出したのか、村長に代わって証言した。
ダナン村の上役A「村長、まさかと思うが『奴等』なんじゃ!?」
ダナン村老村長「そ、そんなまさか…。」
シンシア「村長さん、『奴等』って一体何ですか?」
村長さんに代わって上役が話し始めた。
ダナン村の上役A「…このダナン村を始め、各村に7日に1度、王都から行商販売の馬車が村に商売にやって来るのです。傷手当に使われる薬草や回復薬。また。食材、調味料、釜戸や風呂に使われる魔石など色々と。」
ダナン村の上役B「魔獣が森に現れる3週間近く前、次の行商販売が来るまで後5日の頃に珍しく行商の馬車が村にやって来たんだ。その日に来た商人達は何か何時もの顔見知りの商人じゃなく、見たこと無い連中ばかりで護衛らしき傭兵も何人かは。」
見たこと無い商人とその護衛…。
ダナン村猟師頭領「けど、彼奴等の俺達への対応が酷くてな、村に付いて商売すんのかと思ったら一休みに来ただけだと言って直ぐに村から去ったんだ。あの時、何か急いで村を出て森の方へと向かったがな…。」
サリーシャ「シンシアはん、これってもしかしてと思うやけれど…。」
シンシア「……一応、聞きますが、その馬車やには頭に王冠を被った『黒い蛸』の紋様をしてませんでしたか?」
真剣な表情でシンシアさんは、上役の皆さんにその紋様を見たかどうか聞き出すと、何人か思い出したのか上役の1人が答えた。
ダナン村の上役A「……ああ、確かに見たぞ、馬車に見慣れない商会の紋様があったから間違い無い。」
サリーシャ「オクロック商会……。」
サリーシャはボソリと誰にも聴こえない声でその商会の名前を呟く、シンシアさんとロザリーさんも同じく、互いに頭を縦に頷かせ、
ロザリー「シンシア。」
シンシア「分かってる、明日の朝直ぐにダナンの森に調査に行こう、私がセラフィナさんだったらきっとそうするしさ。」
すると、コンロッド様は席を立ちながらシンシアさんに向かって叫んだ。
コンロッド「ちょっと待て!まさかと思うが、お前等4人だけでダナンの森の中に調査に向かうんじゃないだろうな!?」
シンシア「…何か問題でも有るのですか?」
コンロッド「大有りだ!!冒険者が森に行くのは別に構わない、けどな、問題はお前等の所にいる其処の2人、良く見たらまだ子供じゃねえか!?」
コンロッド{それにだ…。第一セリスティアの身に何かあったら冗談抜きでカレンにぶっ殺されてしまう……。}
私とサリーシャがダナンの森の調査に向かう事を強く反対するコンロッド様、しかし、シンシアさんは怯まずにコンロッド様相手に冷静ながら、私とサリーシャの事を理解しながら実力を伝えた。
シンシア「確かに、家のセレナとサリーシャは貴方の仰る通りに12歳の子供に過ぎません、しかし、サリーシャは冒険者になる前にスタンピードで魔物達を活躍して、セレナに至ってはまだ見習いの白級の立場ですが、昨晩、私の目の前で単身、魔獣を討伐しました。私とロザリーが驚く程に2人は強いです、これでも貴方はまだ反対を通す積りですか?」
髪を掻きむしりながらコンロッド様はオールバックを乱暴に掻き上げ、深い溜息を吐いた。
コンロッド「あのなあ…。強い弱いとかの問題じゃねえんだ。」
ロザリー「確かに、2人は12歳で冒険者を始めた事は知ってます、けど、ギルドに所属してる冒険者の中には明日の生活費を稼ぐ10歳で活動してる少年もいます。」
彼は席を立って、集会所の粗末な床板をドスンと踏み鳴らしながら私たちの方へ近づいてきた。炎の騎士団の分隊長らしい威圧感が、狭い小屋の中に満ちる。
コンロッド「特にそこの嬢ちゃん。お前、昨夜オクトルーパーを単身で倒したってのは認める。だがな、森の中は1匹だけじゃねえかもしれないんだぞ?……それにだ。もしお前が本気でセラフィナの後継者気取りなら、もっと自分の身を大事に考えろ。無茶な真似はするんじゃねえ。」
その言葉に、シンシアさんが少し眉を寄せた。
シンシア「コンロッド様。セレナの身を案じてくださるのはありがたいですが、彼女はもう私たちの仲間です。子供扱いされるのを一番嫌がる子ですよ?」
サリーシャ「シンシアはん……。」
サリーシャが少し困ったように私の袖を軽く引いた。彼女もまた、コンロッド様の言葉に複雑な表情を浮かべている。
私は静かに息を吸い、立ち上がったままの姿勢でコンロッド様の目を見据えた。
セレナ「コンロッド様、ご心配して下さって有難う御座います。確かに、貴方様の言う通りに私はまだ12歳の子供に過ぎません。ですが、1人の冒険者でもあるんです。」
コンロッド「しかしだな!」
セレナ「それに…。私にとってこの『逸れ魔獣』の依頼は初めての依頼なんです。このまま依頼を放棄して帰る何て私には出来ません、だからお願いします、どうか私を、いいえ、私とサリーシャの森に向かう許可を認めて下さい!」
サリーシャ「セレナっち…。」
コンロッド様に向けて頭を下げる自分の姿を隣の席で見つめるサリーシャ、彼女も決意したのか自ら席を立ち私と同じく頭を下げ、コンロッド様にお願いした。
サリーシャ「アタシも、セレナっちと同じく森に行きたいです!どうかお願いします!!」
席立つ2人の頭を下げてお願いする姿に影響したのか、シンシアとロザリーも互いに顔を合わせて縦に頷くと同時に席を立ち、
シンシア「私達からもどうか、お願いします!」
ロザリー「同じく…。」
ダナン村老村長&上役達『………。』
村長と上役達は驚きを隠さずに黙って見ている事しか出来なかった。
炎の騎士団員A「………おいおい、子供に頭下げられてるぞ、コンロッド。」
炎の騎士団員B「どうすんだ?このままだと俺等が悪者に見えちまうぞ。」
仲間の騎士団員らに悪者に見えてしまうと言われ、コンロッド様はオールバックを激しく掻き毟り、唸るような声を出した。
コンロッド「ああもう糞っ!子供相手に頭を下げられてしまったら騎士の風上は兎も角、団長に騙されてしまうじゃねえか俺が!!」
セレナ「そ、それじゃあ!」
コンロッド「ああ、許可するよ、その2人の森へ行く事をな。しかしだ!セラフィナの奴が捕らえた手配犯共を連れて王都に一度戻ったって言ったな、あの様子だと内容報告や事情聴取とかで暫く3〜4日位は掛かるぞ。」
シンシア「3〜4日!?」
確かに、コンロッド様の言う通り、手配犯の城の地下牢への連行や、セラフィナさんの事情聴取3日4日となると
コンロッド「ああ、だからだ__」
コンロッド様は席を立ち、私達4人に言った。
コンロッド「俺自らが、お前等の調査に同行してやる、女4人だけじゃ流石にほっとけないからな。」
セレナ「コンロッド様…。」
コンロッド「良いか?俺の同行がお前等が森に行く条件だ。」
コンロッド様の同行、それはつまり手配犯達を連れて馬車で王都に向かった。不在のセラフィナさんの穴埋めとしての意味をする。
ロザリーさんが小声でシンシアに尋ねる。
ロザリー「シンシア、どうする?」
シンシアさんは小さくため息をつき、肩をすくめた。
シンシア「はぁ……何を言っても無駄そうね。分かりました。同行、お願いします。」
こうして、コンロッド様の加入を条件に引き受けた事により、私達5人はこの集会を終え、宿で準備をしてからダナンの森に急遽、向かう事となった。
*
ダナン村の森側の出入口にて、コンロッド様を加えた私達5人は村長さんら村の人達と炎の騎士団の皆様に見送られていた。
ダナン村老村長「では騎士様、冒険者の皆さん、後の事を宜しくお願いします。」
シンシア「任せて下さい、私達が必ず対処しますので。」
サリーシャ「だから安心して待っててや!村長はん!」
村の人達にペコペコとお願いされる最中、コンロッド様は仲間の騎士団員達にダナン村の方を任せ伝えていた。
コンロッド「じゃあお前等、村の方は頼んだぞ。」
炎の騎士団員A「任せろ、魔獣が現れたら俺等で討伐するからよ。」
炎の騎士団員B「お前はお前なりの仕事をしろ!気にせずにな。」
コンロッド「おう!それじゃあ、俺達も出発しようか。」
4人『はいっ!!』
こうして私達はコンロッド様を仲間に加え、ダナン村を後にし、ダナンの森へと旅立った。
森の中で待ち兼ねる物、そして影に潜めし魔獣の脅威、私達は動き出したのだった。




