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【祝合計PV3万突破!】推しの乙女ゲームの悪役令嬢に転生するも攻略キャラが全員ヒロインなのが間違っている!?  作者: 二代目菊池寛
2章。悪役令嬢、冒険期編。

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悪役令嬢、仲間の冒険者達と共に村の夜間警備の最中に魔獣と遭遇する。

真夜中。

ダナン村の集会所前には、松明の炎がパチパチと音を立てて揺れていた。村長さんが用意してくれた簡素なランタンを手に、私達4人は夜警の配置を最終確認する。


セレナ「……それじゃあ、2人1組形式に分かれて、私とシンシアさんは村外れの畑と岩場周辺を回ります、サリーシャとロザリーさんは村の中心と鶏小屋の近くで待機で。何か異変があったら直ぐに私達の所へ来て下さい。」


ロザリー「分かったわ。」


サリーシャ「そんじゃ、セレナっち!シンシアはん、また後でや!」


私とシンシアさんは村外れの畑と岩場方面へ、サリーシャとロザリーさんは村の中心部へ、それぞれ歩き始めた。


霧の谷から吹く冷たい風が、頰を刺す。

左手に持ったランタンの灯りが足元を照らす中、私は剣の柄に手を添えたまま、シンシアさんと並んで進んだ。


セレナ「…暗くて、誰もいないって、不気味過ぎますね。」


シンシア「まあね、村長が村の人達に外出禁止令を伝えたから、何とか身の安全は保証出来たけれど、油断ならないから…。」


そうだ。何時何処でどのタイミングで魔獣が建物の中に侵入し、村の人を襲って来るのか分からないからだ。


1年前のディオスの森で起きた魔獣達との激戦。あの時、私達4人は命懸けながらも、私は聖女に覚醒し、大型魔獣を昇華し、倒した。


あの日以来の、魔獣との遭遇。

私なら兎も角、それ以外のサリーシャ達3人の冒険者はどうなのかは不明。


シンシア「………。」


苦難な表情するシンシアさんの槍を握り締め持った右手が震えてる事に私は気付く、シンシアさん、もしかして緊張しているの?


私の視線に気付いたのか、彼女は笑顔で対応する。


シンシア「ん?どうかしたの?」


セレナ「…あ、えっと。」


どうしよう…。誤魔化す言い訳が何も思い付かない…。その時、私はある事を思い出した。


セレナ「そ、そう言えばシンシアさん、今日の昼に、賞金首の胸倉を掴みながら怒鳴ってましたよね?ラリザって、人が何とか…。」


シンシア「……っ!!」


その人物の名前に反応し、足を止めたシンシアさんは私を黙って見つめる。ランタンの灯りが彼女の青い瞳を揺らしていた。いつも明るく槍を振り回す彼女の顔が、まるで壊れ物みたいに青ざめている。


セレナ「……シンシアさん?御免なさい、変なこと言っちゃって……。」


シンシア「……いや、良いの。ただ……ラリザって名前、久しぶりに聞いたから、ちょっと驚いただけ。」


彼女は無理に笑おうとして、唇の端を少しだけ上げた。でもその笑みは、いつもの元気なものとはまるで違っていた。寂しげで、何処かで痛みを堪えているような──。


シンシア「……実を言うとね、私とロザリーの他にもう1人、同じ村出身の冒険者がいるの、名前はラリザ・リグリット。私達3人は幼馴染でね、子供の頃から日が暮れるまで遊びまくった仲だったんだ。けど__」


シンシアさんはそこで言葉を切り、ランタンの灯りを握る手に力を込めた。青い瞳が、闇の奥をじっと見つめている。


シンシア「鉄級に上がったばかりの頃、依頼の成功の帰りに一緒だった筈が行方不明になったの…。もう半年前の事よ。冒険者仲間から聞いた唯一の手掛かりとして『黒蛸』の紋様の布を被った男達が意識無いラリザを連れ去らったとか何とか。」


黒蛸の紋様って、オクロック商会だ…。

恐らく、そのラリザと言う冒険者が攫われた件と今回の私達の誘拐未遂も、無関係とは限らない。


商会に雇われた賞金首の男が言っていた。

『若い女冒険者』『魔力持ちの女』『金になりそうな女』と言うのは恐らく奴隷対象とした雇い主から与えられた条件…。


セレナ「連れ去られたのでしたら、炎の騎士団を始めとした4大師団や王都の兵士に捜索届とかは出したのですか?」


シンシア「……それならとっくに出したよ、けど、届を出した相手が質の悪い貴族らしくて、冒険者の私とロザリーを見下しながら受理してくれなかったんだ。」


相手した騎士は恐らく『炎の騎士団』1番隊、団長補佐のフレイジェル率いる『絶血派』の貴族騎士…。上級貴族の彼等なら身分の低い平民の冒険者相手だと断られるのは当たり前か…。だけど。


セレナ「…もう一度だけ、捜索届を出してみませんか?」


シンシア「何言ってるのさセレナちゃん!?騎士団が受理するのを拒否されたんだよ、そんなの無理に決まってる!」


セレナ「大丈夫です、今度は私も一緒に同行します。」


シンシア「セレナちゃんが?」


正直、騎士団の誰かと接触するとなると、シンシアさんは私がクリムゾン団長や親しくしてる団員の誰かと面識があるとなると怪しまれる可能性があるけれど、やむを得ないよね。


彼女の瞳が、ランタンの灯りに大きく揺れた。いつも明るく槍を振り回すシンシアさんが、こんなに驚いた顔をするなんて珍しい。


セレナ「ええ。私、実は……騎士団に、少しだけ顔が利く知り合いがいるんです。もう一度ちゃんと事情を説明すれば、受理してくれる可能性が高いと思います。」


シンシア「……本当に?でも、平民の冒険者が貴族の騎士様に……。」


セレナ「大丈夫です。私の知り合いは、身分とか関係無く話を聞いてくれる人ですから。攫われたラリザさんの事、絶対に放っておけないですよ。シンシアさんとロザリーさんがどれだけ心配してるか、ちゃんと一緒に伝えましょう。」


シンシアさんは唇をぎゅっと噛んで、ランタンを握る手に力を込めた。やがて、ゆっくりと頷く。


シンシア「……有難う、セレナちゃん。私、ずっと一人で抱え込んでた。ロザリーにも、詳しくは話してなかったんだ。ラリザが連れ去られて街中を探し回る夢を、今でも見るよ……。」


その言葉に、胸が締め付けられた。私は思わずシンシアさんの震える右手を、そっと自分の左手で包み込んだ。冷たい指先が、少しずつ温かくなっていく。


セレナ「もう1人じゃないですよ。私達がいます。セラフィナさんも、サリーシャちゃんも、ロザリーさんも……皆でラリザさんを探しましょう。」


シンシア「……うん。」


彼女の声が、少しだけ柔らかくなった。ランタンの光が、2人の影を長く地面に伸ばす。


夜の風が冷たいのに、心だけは温かかった。

その時――


老農夫の声『うわあああああああっ!!!』


その絶叫が夜の静寂を切り裂いた瞬間、私はランタンを高く掲げて全力で走り出した。


セレナ「今の悲鳴って!?畑の方だ!!」


シンシア「セレナちゃん、待って!私も行く!!」


冷たい夜風が頰を刺し、足元の土が跳ね上がる。ランタンの灯りが激しく揺れて、周囲の影を不気味に踊らせる。心臓の鼓動が耳元で鳴り響く中、畑の入り口に辿り着いた。


そこにいたのは――


老農夫が地面に尻餅を付き、両手に持ったくわを何かに向けさせながら、恐怖で顔を真っ青にして後ずさっていた。

その前方、月明かりの下で黒い影がゆっくりと体をくねらせながら迫っている。


セレナ「……あれが……逸れ魔獣……!」


全身が粘液質の黒い塊で覆われ、人型ににせた体格、身長は恐らく3m近く。体は蛇のように波打ち、四肢らしき部分で地面を這う動きは気持ち悪いほど不自然だ。背中や腕から無数の棘が突き出て、月光を浴びてギラギラと光っている。顔はなく、口元から緑色の涎が漏れ出ていた――


逸れ魔獣「シャアァァァァ……!」


まさに怒った野良猫のような威嚇音。老農夫の鶏小屋で聞いたという声そのものだった。


老農夫「た、助けてくれぇ!!此奴、突然畑の端から出て来て……うわっ!」


魔獣が体を大きくうねらせ、棘を逆立てながら老農夫に迫る。地面に透明な粘液がトロリと滴り、歩いた土の跡から、ねばねばの液体が…。


ヒューマン・スライムじゃない…。

別の個体種の魔物、いや、魔獣!


私は直ぐ様に『超鑑定』の技術スキルを使って、この逸れ魔獣の正体を調べた。


基本情報

個体名:オクトルーパー

種族:海獣種【魔獣化】

性別:無し

年齢:0

属性:水

総合値

Lv:28

HP:656/656

MP:0/0

攻撃力:93

魔法力:0

器用力:181

防御力:76

機動力:49

所有技術しょゆうスキル

『★魔王の眷属』『★母の眷属』

『鞭術{中}1』『奪取3』

『物理耐性{中}5』『衝撃吸収{弱}7』

『闇耐性{中}3』『炎耐性{中}3』

『水耐性{中}1』『自己再生3』

『黒墨5』『酸液弾アシッド・ショット5』『棘肉体ニードル・ボディ4』

『鞭術・乱れ打ち4』『鞭術・絡め盗り5』

『武芸一般2』『接触探知{中}5』

『魔力探知{中}2』『反応速度{弱}1』


そんな、嘘でしょ…オクトルーパー!?

海域にしか生息しない筈の魔物がどうして内陸のこんな山村に……。


セレナ「シンシアさん、下がって!あれはただの魔獣じゃない!!」


私は剣を抜き放ちながら叫んだ。『超鑑定』の文字が網膜に焼き付いたまま、頭の中で警鐘が鳴り響く。


老農夫「ひっ……!来るな、来るなあああ!!」


魔獣が体を大きくうねらせ、背中の棘を逆立てながら農夫に飛びかかる。地面にべっとりと透明な粘液が飛び散り、畑の土がジュウッと溶け始めた。


セレナ「――させない!」


私は一気に間合いを詰め、剣を横薙ぎに振るった。


風を纏った刃が、オクトルーパーの胴体を深く切り裂く。黒い体液が噴き出し、しかし傷口はすぐに泡立ちながら塞がっていく。自己再生……予想通り早い!


オクトルーパー「シャアァァァァァ!!」


怒った猫の威嚇が百倍になったような咆哮。魔獣の右腕が鞭のように伸び、棘だらけの触手が私を狙う!


シンシア「セレナちゃん!!」


私は魔獣の右腕を剣で上へと受け流してから、農夫さんを守ってるシンシアさんに向かって叫んだ。


セレナ「シンシアさん、村の人を連れて!この場に居たら、魔獣の攻撃を受けてしまうから!!」


シンシア「けど!セレナちゃん1人じゃあ!」


セレナ「大丈夫です、此奴の相手は私1人でやれますから。」


大丈夫、魔獣の相手は1年前のあの戦いで慣れてる、私は剣を両手で構え、夜風に白銀の刃を煌めかせた。


シンシア「……分かった!でも絶対に無茶しないでね、セレナちゃん!」


シンシアさんは老農夫の腕を引っ張りながら後ずさり、ランタンの灯りを激しく揺らして走り去った。畑の闇に残されたのは、私と――


オクトルーパー「シャアァァァァァァ!!」


全身を波打たせ、背中の棘を逆立てながら迫ってくる黒い海の悪夢。地面に滴る透明な酸液が土をジュウジュウと溶かし、甘酸っぱい異臭が鼻を突く。


セレナ「来いっ!」


私は地を蹴り、剣を横薙ぎに振り抜いた。

刃がオクトルーパーの胴体を深々と切り裂く。黒い体液が噴水のように飛び散ったが、傷口は即座に泡立ちながら再生していく。


一見からして、傷付けられた身体の傷が修復されていう、恐らくあれは『自己再生』の技術だろう。


オクトルーパー「シャアァァァ!!」


右腕が鞭のように伸び、棘だらけの触手が私の首を狙う。


私は身を低くして回避、剣を逆手に持ち替えて魔獣オクトルーパーの右腕を斬り飛ばした。切断面から緑色の酸液が飛び散り、地面に落ちた瞬間、草が白く煙を上げて溶けるも、私は速攻でオクトルーパーの全身を斬り込んでいくも傷跡が何も無かったかの様に再生していく。


セレナ{物理攻撃だけじゃ再生が追いつかない……!でも弱点は絶対あるはず!だったら!!}


刃が赤く染まり、私は『属性付与エンチャント』を発動させてから、オクトルーパーを斬り込む、属性の相性は悪く、相手に耐性があるとは言っても、炎属性を付与させた物理攻撃なら。


真っ向に『跳躍』すると共に、再びオクトルーパー目掛けて、纏いし紅い一閃を繰り出すと共にオクトルーパーを一気に押し出す。


斬撃跡を良く見ると炎の斬撃傷の再生が、並の再生速度より遅い、もしかしたら…。


セレナ「『火球ファイヤー・ボール』!!」


左手を魔獣の方に向けて、追撃の火球を数発連射し、魔獣に命中し、ダメージを負わせる。


オクトルーパー「シャアアアアアアア!!!」


痛みによる威嚇と共に魔獣は両腕を伸ばすかの様に私に向けて振るい出す。


私は握り締めた剣を『属性付与』状態のままにし、魔獣に向かって駆け出すと共に両腕を斬り落とす、しかし、近付いて来る私に警戒したのか、魔獣は私に当てようと技術『酸液弾』を口から放射する。


セレナ「『炎盾ファイヤー・シールド』!!」


けど、私は防御魔法である『炎盾』で酸の弾を完全に防いでから、必殺の『魔法剣』を繰り出す。


セレナ「『魔法剣』!!」


魔力の炎を纏いし斬撃が、オクトルーパーの全身を真っ二つに両断する。両断された魔獣の切断跡は私の魔力の炎により、内側を燃やしていく。


オクトルーパー「アアアアアアアアア!!!」


断末魔が響かすと共に、魔獣はゆらり、ゆらりと私に近付くも、そのまま畑の土に前倒しながら内側の魔力の炎が魔力の全身を燃え移り出す。


セレナ「………。」


久方振りの魔獣との戦闘を終えた私は剣を鞘に納めながら、燃える魔獣の遺体を見て思った。


本来、海獣系の魔物であるオクトルーパーは陸の上で行動出来ない、何故なら酸素を吸う肺器官が無いからだ。どうやって…。


シンシア「セレナちゃん!」


セレナ「!」


振り向くとシンシアさんがサリーシャ、ロザリーさんと共に駆け付けて来た。


シンシア「良かった。無事だったんだね!」


セレナ「ええ、何とか倒しました…。此方の方はどうでしたか?」


シンシア「農夫のお爺さんの方は家に送っておいたよ、それよりセレナちゃん、あの燃えてるのって、もしかして…。」


セレナ「……はい、魔獣です、私が炎の魔力を応用した剣術で倒しました。」


ロザリー「2人の方は1体だったんだね…。運が良いのか、悪いのか…。」


溜息するロザリーさん、呆れた顔するサリーシャ、もしかして此方の方の被害が多かったのかしら?


セレナ「…あの、サリーシャとロザリーさんも?」


ロザリー「魔獣が3体、村の出入口近くに現れてさ…。まあ、幸いサリーシャが1人で倒したから、私は何もしなかったけれど…。」


嘘、オクトルーパーはあの1体だけじゃなかったの!?


しかも、サリーシャが1人で倒したって…。


サリーシャ「………。」


しかし、サリーシャは苦虫を噛み潰した様な表情をしながら、燃える魔獣の遺体を見つめる。


セレナ「…サリーシャ?」


サリーシャ「…へ?あ、ああ!セレナっちも倒したんやな!」


シンシア「いやはや、先輩冒険者として本当に凄いよ、セレナちゃん。」


セレナ「いやいや!あんなのは運に過ぎませ__ん?」


燃えるオクトルーパーの遺体の近くの地面に何かキラリと光ってる物が落ちてる事に私は気付き、それを拾い取る。


私が拾ったのは球体を模した黄緑色の石だった。これって、魔力石?もしかしてこれが魔獣の身体の中に埋め込まれて陸上を行動出来たと言うの!?


シンシア「おーい!セレナちゃん!どうかしたの?」


シンシアさんの呼び掛けに、私は我に返ると、私は真剣な顔をしながら3人にこの事を伝えた。


セレナ「……3人共、幾つか報告したい事があるけど、一旦、集会所の方に戻ろう。」


3人は縦に頷き了承すると、私達は直ぐ様に集会所へと戻ったのだった。


セリスティア・K・クラリスロード。

セレナ・ブラッカリィとしての冒険者デビューと初依頼は、ヤバい方向へと向かおうとしていた。

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『推しの乙女ゲームの悪役令嬢に転生するも攻略キャラが全員ヒロインなのが間違っている!?』 『小説家になろう』及び『カクヨム』にて兼任絶賛連載中!目指せ!ランキング上位!! 感想も宜しくお願いします!m(_ _)m リンク先のTwitter{X}は此方。 @jBFyXO83wZ73627
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