悪役令嬢、騎士団長と全力での実戦訓練をする。
騎士団屯所を出て、朝の陽射しが、すっかり高く昇っている。訓練場では、クリムゾン団長が1人で剣を振るっていた。赤いマントが風に翻り、剣閃が空を切り裂く。
彼、クリムゾン団長は私とライズ副団長の気配に気付くと、剣を収め、左手には大きな盾を握り持ち、私を待っていた。
クリムゾン「……遅かった様だな、セリスティア。ライズに遊ばれたか?」
ライズ「ハッハッハ、遊んだ等とんでもない。セリスティア殿は、見事な成果を上げてくれましたよ。」
クリムゾン団長の鋭い瞳が、私をじっと見つめる。
クリムゾン「……ほう、そうか?お前の絶対必中の『螺旋突き』を、耐え抜いた音が聴こえたが?」
私は頷き、木剣を構えた。体はまだ疲れているが、心は澄み渡っていた。
セリスティア「はい。本気で受け止めました。」
クリムゾン団長は一瞬、目を細め――そして、珍しく口元を緩めた。
クリムゾン「……面白い。では、俺も本気でいくぞ。遠慮は無用だ。この場に立った瞬間は既に互いの身分も関係無い。」
彼は本物の剣を抜き、静かに構えた。朝の光が、剣身が陽の光に照らし輝く。私は深呼吸して、炎を胸に灯した。
セリスティア{……今日の私は、昨日より強い。}
――訓練場に、2人の剣と炎が交錯する音が響き始めた。
カレン「………。」
バークマン「………。」
騎士団員達『………。』
屯所からカレン、バークマン様を始めとした多くの騎士団員達が出て来て、これから始まる、私とクリムゾン団長との実戦訓練が始まるのを真剣な表情で見届ける。
――訓練場に、静寂が訪れた。
朝の風が、わずかに埃を舞い上げるだけ。
周囲に集まった騎士団員たちの視線が、私とクリムゾン団長に集中している。
カレンは少し離れた場所で、腕を組んで無言で見守っていた。
バークマン様は壁に寄りかかり、興味深そうに目を細めている。
クリムゾン団長は、左手の大盾を軽く構え、右手の本物の剣を中段に掲げた。
その構えは、まるで巨大な岩のように揺るぎない。
私は鞘から剣を抜き、自分の心の中の炎を静かに胸に灯す。
セリスティア「……参ります!」
最初に私が仕掛けた。
クリムゾン「……良い眼だ。さぁ、お前の腕前を試させて貰うぞ、セリスティア!!」
剣戟の音が鋭く響き渡った。
セリスティア「はっ!!」
一歩踏み込み、剣に『属性付与』させて斬り下ろす。赤い軌跡が朝の空気を裂き、クリムゾン団長の肩口を狙う。
しかし団長は動かない。左手の大盾をわずかに上げ、剣身を斜めに構えただけで、私の斬撃を完全に受け止めた。
ガキィン!!
互い金属の刃が激しくぶつかり、火花が散る。衝撃が腕を伝い、指先が痺れる。炎が盾に触れた瞬間、赤い光が爆ぜたが、団長の盾はびくともしない。
クリムゾン「……甘い。」
次の瞬間、団長の剣が反撃に転じた。横薙ぎの一閃が、私の胴を狙って迫る。
セリスティア{速い……!}
私は慌てて後退し、炎の盾を展開して防ぐ。赤い膜が体を覆い、団長の剣を弾く。
でも、耐えた。
団長の瞳が、わずかに輝いた。
クリムゾン「ほう……ライズの教えが、早速活きているか。」
私は息を整え、直ぐに反撃に移る。剣を低く構え、足を滑らせて間合いを詰める。
セリスティア「まだ、終わってません!」
今度は機動力重視の連続攻撃。斬り上げ、払い、突き――『属性付与』を継続させる様に集中させ、刃の軌道を細かく変えながら攻め込む。
団長は盾で全てを受け、剣で返す。カレンとは違い、盾の使い方が絶妙だ。私の攻撃を最小限の動きで逸らし、隙を突いて反撃してくる。
ガキン! ガキン! ズドン!
剣と盾の音が、訓練場に連続して響く。私の炎が盾に当たるたび、赤い火花が飛び散り、周囲の空気が熱を帯びていく。
カレンは無言で、ただじっと見つめている。彼女の瞳に、わずかな緊張と――誇らしさが混じっているのが分かった。
バークマン様は壁に寄りかかったまま、くすりと笑みを浮かべていた。
バークマン{ふむ……セリスティア嬢め、決闘の時よりさらに鋭くなっているな。団長を相手に、ここまで互角に渡り合うとはな……。}
騎士団員達も、息を呑んで見守る。誰も声を上げない。ただ、剣戟の音と、私の荒い息遣いだけが響く。
クリムゾン「そうだ!良いぞ、セリスティア!もっと来い!」
団長が初めて動き出した。
彼の足が1歩踏み込み、大盾を前進させるように押し出してくる。同時に、剣が上段から振り下ろされる。
セリスティア{これは……不味い!}
盾の圧力と剣の重撃が同時に迫る。逃げ場がない。私は炎の盾を最大限に強化し、剣を構えて受け止めた。
――ドゴォン!!
衝撃が全身を駆け巡る。
セリスティア{重い!!な、何て威力なのよ……}
私の足が地面を抉り、後ろに大きく滑った。膝が震え、腕が痺れる。炎の盾は衝撃を吸収したが、魔力が一気に削られる感覚が全身を駆け巡った。
セリスティア{……っ、く……!こ、これが、団長、クリムゾン・F・フレイローズの本気……!}
クリムゾン団長は追撃をかけず、ただ静かに剣を構え直した。赤いマントが風に揺れ、朝陽が彼の背中を照らす。まるで不動の山のように、圧倒的な存在感を放っている。
クリムゾン「……まだ立てるか?」
私は歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がった。息が荒く、汗が額を伝う。でも、胸の炎は消えていない。むしろ、より強く燃え上がっている。
セリスティア「……もちろん、です!」
周囲の騎士団員達が、僅かにざわめいた。カレンの瞳が、強く輝いているのが分かった。彼女は無言のまま、拳を握りしめている。
バークマン{ほう……ここから立て直すか。面白い。}
私は剣を握り直し、また『属性付与』を使用して炎を剣身に纏わせた。赤い光が刃を覆い、軌跡を残すように輝く。
セリスティア{……負けるわけには、いかない。みんなが見てるんだから……!}
今度は私が先手を取った。足を低く滑らせ、間合いを一気に詰める。剣を下段から振り上げ、団長の盾を狙う。
セリスティア「はぁっ!!」
炎の斬撃が、盾の表面を叩く。ガキィン!! 火花が爆ぜ、熱波が周囲を揺らす。団長の盾が、わずかに後退した。
クリムゾン「……っ!」
団長の表情が、初めて変わった。瞳に闘志が宿り、口元がわずかに上がる。
クリムゾン「良い……!それでこそだ!」
団長が反撃に転じた。大盾を前進させ、私の攻撃を押し返す。同時に、剣が横から薙ぎ払われる。速く、重く、容赦しない。
私は剣で返す。連続の剣戟が、訓練場に嵐のように響き渡る。
ガキン! ズドン! ガキィン!!
私の斬撃が団長の盾に当たる度に、赤い火花が飛び散り、空気が熱く歪む。団長の剣が私の肩をかすめ、鎧に浅い傷を残す。でも、私は避け、返す。
セリスティア{……もっと、速く!もっと、強く!!}
『瞬速』『強化』の技術を重ねて使用し、自身の攻撃力と機動力を上昇させる、もっと、もっと速く斬り込む、縦に、横に、斜めに、私は、私の鍛え磨いた技術全てを、セトランド王国最強の盾と呼ばれたこの人にぶつける!!
――訓練場の空気が、熱く歪み始めた。
私の剣が、炎を纏いながら縦横無尽に舞う。『瞬速』と『強化』を重ねた動きは、まるで赤い残光を残す流星のよう。団長の盾を叩き、剣を逸らし、隙を突いて斬り込む。
ガキィン!! ズガァン!! ガキン! ガキン!!
連続の剣戟が、嵐のように響き渡る。私の斬撃が盾に当たるたび、赤い炎が爆ぜ、熱波が周囲の騎士団員達をわずかに後退させる。団長の剣が反撃に転じるたび、私は炎の盾で受け、剣で返す。
セリスティア{……速い、でも……見える!}
団長の動きが、わずかに予測できるようになってきた。盾の使い方、剣の軌道、足の運び――ライズ副団長との訓練で学んだものが、すべて繋がる。
私は低く身を沈め、団長の足元を狙って突きを繰り出す。炎の剣先が、盾の下端をすり抜け、団長の脛を掠める。
クリムゾン「……っ!」
団長の体勢が、わずかに崩れた。初めての、明確な隙。
セリスティア{今……!}
私は間髪入れず、剣を振り上げて斬り込む。上段からの全力の一撃。炎が最大限に集中し、剣身が白く輝く。『爆炎』を私の剣に纏わせ『魔法剣』を繰り出す。
セリスティア「はぁぁぁっ!!!」
――ドゴォォン!!!
私の『魔法剣』が、団長の大盾に直撃した。
衝撃波が訓練場全体を駆け巡り、地面が震える。赤い炎が爆発的に広がり、団長の赤いマントを激しく翻した。
団長の足が、初めて後ろに1歩滑った。
周囲の騎士団員たちが、息を呑む音が聞こえた。
カレン{……セリス……!}
彼女の瞳が、大きく見開かれている。拳を握りしめた手が、わずかに震えていた。
バークマン{……これは……! 団長の盾を、後退させたか……?}
クリムゾン団長は、盾を構えたまま、静かに私を見下ろした。その瞳には、純粋な闘志と――喜びが宿っている。
クリムゾン「……ふん……良い一撃だ。セリスティア。お前は、確かに強くなっている。だが__」
次の瞬間、彼の体が動いた。大盾を前進させ、私の剣を押し返す。同時に、剣が閃く。速すぎて、眼で追えない。
セリスティア{……!?}
眼にも止まらぬ速さの剣閃が、私の喉元を狙って迫ってきた。 本物の剣――刃引きはされていない。団長は、本気で、私の命を狙っているわけではないが、決して手加減もしていない。 この一撃を受ければ、少なくとも重傷は免れない。
セリスティア{……っ、く……! 来る……!!『炎盾!!』}
私は反射的に炎の盾を最大限に展開した。赤い膜が全身を覆い、魔力をありったけ注ぎ込む。増加システムを再び発動――MP消費を30倍にまで引き上げ、体内の魔力が一気に沸騰するような感覚が走る。
――ガキィィィン!!!
団長の剣が、私の炎の盾に直撃した。 衝撃が全身を貫き、足が地面を深く抉る。膝が折れ、視界が一瞬白く染まる。炎の膜が激しく波打ち、熱波が爆発的に広がった。
でも――何とか耐えた。
盾は崩れず、団長の剣をわずかに押し返した。剣先が私の喉元を掠め、鎧の襟元に浅い傷を残すだけ。血の匂いが、かすかに鼻を突く。
セリスティア「……はぁ……はぁ……!」
クリムゾン団長の瞳が、大きく見開かれた。 彼の剣が、わずかに震えている。私の炎の盾が、剣の勢いを完全に殺し、逆に焼き払おうとしているのが分かった。
クリムゾン「……これは……!」
周囲の騎士団員達が、どよめいた。 カレンの拳が、強く握りしめられている。彼女の瞳に、涙がわずかに浮かんでいるのが見えた。
カレン{セリス……!}
バークマンは壁から体を起こし、目を細めて呟いた。
バークマン{……団長の剣を、受け止めたか。}
私は息を荒げながら、剣を握り直した。体は限界に近い。魔力が底をつきかけ、増加システムの反動で視界が揺れる。でも、胸の炎は――まだ消えていない。
セリスティア「……まだ……終わり、ません……!」
私は最後の力を振り絞り、剣を振り上げた。炎が最大限に集中し、剣身が白く輝く。『魔法剣』――これまでのMP全部を使っての、全てを込めた一撃を__。
セリスティア「はぁぁぁぁっ!!!!」
赤い流星のような紅蓮の斬撃が、団長の大盾を直撃した。
――ズドォォォン!!!!
衝撃波が訓練場全体を駆け巡り、地面が大きく震えた。赤い炎が爆発的に広がり、団長の体を後ろに押しやる。 団長の足が、2歩――3歩と後退した。大盾の表面に、深い焦げ跡が残る。
クリムゾン「……ぐっ……!」
団長のマントが激しく翻り、彼の表情に、初めて明確な驚愕が浮かんだ。
訓練場に、静寂が訪れた。 剣戟の音が止み、ただ朝の風だけが、熱くなった空気を撫でる。
私は膝をつき、剣を地面に突いて体を支えた。息が上がらず、視界がぼやける。魔力が完全に枯渇し、体が重くて苦しい、魔力酸欠、MPが切れたんだ。
でも――私は、立っている。
団長は、ゆっくりと剣を鞘に収めた。大盾を下ろし、私をじっと見つめる。その瞳には、もう試すような鋭さはなかった。ただ、純粋な敬意と――満足げな笑みが浮かんでいた。
クリムゾン「……十分だ。セリスティア。実戦訓練は此処までとする」
彼は大盾を地面に置き、ゆっくりと私に歩み寄った。そして、片膝をつき、私の目線に合わせた。
クリムゾン団長は、私の肩に優しく手を置いた。その手は、剣を握り続けてきた騎士のものとは思えないほど、温かかった。
クリムゾン「……良くやった、セリスティア。お前は、今日ここで、俺の剣を――いや、俺の盾を本気で揺さぶらせた。」
彼の声は低く、しかし確かな満足感に満ちていた。いつも厳しい瞳が、今は穏やかに細められている。
クリムゾン「カレンから聞いた通りだ。お前の炎は、ただの魔法ではない。意志がある、これからも、炎の騎士団は貴様の味方だ。特別訓練生としてではなく――1人の戦士として、俺は貴様を認めよう。」
セリスティア「……有難う、御座います……団長。」
声が震えた。疲労と達成感が一気に押し寄せて、涙がにじみそうになる。でも、私はそれを堪えて、団長の目を見つめ返した。
周囲から、静かな拍手が沸き起こった。
最初は数人だったが、次第に騎士団員全員が手を叩き始める。訓練場の空気が、熱く、温かく変わっていく。
炎の騎士団員A「すげぇ……団長の盾を後退させたなんて……!」
炎の騎士団員B「しかも、あの炎の盾……本気の一撃を防いだぞ。」
炎の騎士団員C「セリスティア嬢、恐れ入りました!」
バークマン様は壁から離れ、ゆっくりと拍手を送りながら近づいてきた。口元に、いつもの余裕ある笑みが浮かんでいる。
バークマン「ふむ……見事だった、セリスティア嬢。俺との決闘の時より、遥かに成長している。団長をここまで本気にさせる等、俺も驚いたぞ。」
セリスティア「……バークマン様も、ありがとうございます。」
そして――カレンが駆け寄ってきた。
彼女は無言で、私の隣に立ち、そっと私の手を握った。その手は、わずかに震えていた。瞳には、涙が浮かんでいる。
カレン「……セリス。……凄かったよ。本当に……。」
声が小さく、掠れている。でも、その一言に、全ての想いが込められているのが分かった。
セリスティア「……カレン。見てて、くれたんだね。」
カレン「あ、当たり前だ!な、何せ、私はセリスの師匠だからな…。それに__」
カレンは頷き、私の肩にそっと頭を寄せた。彼女の体温が、疲れた体にじんわりと染み渡る。
カレン「……お母様の、炎に似ていた。……セリスなら、きっと……。」
言葉を続けられず、彼女はただ、私の手を強く握りしめた。ライズ副団長が、穏やかな笑みを浮かべて近づいてきた。
ライズ「ハッハッハ、団長も満足の様子だ。セリスティア殿、今日はよく頑張りました。……これで、貴女は本物の騎士団の一員です。」
クリムゾン団長は立ち上がり、私に手を差し伸べた。
クリムゾン「立て、セリスティア。今日は休め。だが、明日からは――容赦はしないぞ。」
私はその手を取り、ゆっくりと立ち上がった。体は重く、魔力の枯渇で足が震える。でも、心は満たされていた。
セリスティア「……はい! 明日も、よろしくお願いします!」
訓練場に、騎士団員たちの拍手が大きく響いた。
朝の陽射しが、私たちの背中を優しく照らす。赤い髪が風に揺れ、胸の炎が静かに、しかし力強く燃え続けていた。
――これが、私の新しい始まり。
王都の空の下で、少女の炎は、より強く輝き始めた。
*
夕方時。
セトランド本国の東から少し離れた先にある村の外れにある、広がる深い森の中にて『近くの村の外れのゴブリンの討伐』の依頼を受けに向かったある女性冒険者パーティー。
主な構成はパーティーリーダーの剣士セラフィナ、後衛の弓使いロザリー、槍使いのシンシア、そして双剣士で見習い冒険者になって初日サリーシャの4人。
木々の間を縫うように差し込む午後の陽射しが、地面に散乱するグリーン・ゴブリンの死体を赤く染めていた。腐臭と血の匂いが混じり合い、鳥たちの鳴き声さえ遠のいている。
森の中央、開けた空間に立つのは――橙色の髪をミニポニーテールにまとめた小さな少女、サリーシャ・ウンディーネ。
彼女は両手に双剣を握り締め、息を少しだけ乱しながら、周囲を見回していた。
剣の刃にはまだ血が滴り、足元には50近くのゴブリンの遺体が転がっている。右耳を切り取った証拠品の布袋は、既にパンパンに膨らんでいた。
サリーシャ「……ふぅ。これで全部やな。」
彼女は双剣を軽く振って血を払い、後ろ腰の鞘に収める、表情は満足げで、まるで散歩の帰りのような気軽さだ。
だが――その背後で、セラフィナ、ロザリー、シンシアの3人は、言葉を失っていた。
セラフィナは長い紫髪を三つ編みにしたまま、口を開けたまま固まっている。
彼女の細身の長剣は、まだ鞘の中。戦う暇すらなかった。
セラフィナ「……え……何、これ……?」
シンシアは槍を地面に突き、目を丸くして呟いた。
シンシア「……サリーシャちゃん……これ、全部……君が……?」
ロザリーは弓を背負ったまま、震える声で言った。
ロザリー「……ゴブリン全部、1人で……?」
サリーシャは振り返り、にぱっと笑った。橙色の瞳が、悪戯っぽく輝く。
サリーシャ「ん? あぁ、みんな遅かったから、アタシが先に片付けただけや。依頼は『村外れのゴブリン討伐』やろ? もう終わったで。んっと、ゴブリン1匹に付きやからなあ__」
するとサリーシャ突然、指を数え始める、どうやら彼女は今回の依頼の報酬を指だけで計算している様だ。
サリーシャは指を一本ずつ折りながら、楽しげに計算を続ける。
サリーシャ「んー、ゴブリン1匹につき銅貨2枚やろ? ここに……50、51、52……あ、55匹か。ほな、110銅貨! 銀貨1枚と銅貨10枚分やな! 初日からこれだけ稼げたら上出来やろ!」
彼女はパンパンの布袋を軽く持ち上げ、満足げに頷いた。橙色のミニポニーテールが、汗で少し湿りながら揺れる、セラフィナはようやく我に返り、慌てて近づいてきた。紫髪の三つ編みが肩に落ち、彼女の顔は青ざめている。
セラフィナ「……ま、待って、サリーシャちゃん。ちょっと待って! これ……全部、君が1人で倒したの?」
サリーシャ「ん?そやけど?皆が後ろで準備してる間に、ゴブリンどもが群れで襲って来たんやから、アタシが先に行動しただけや。双剣やし、速い動きが得意やからなあ。」
彼女は悪戯っぽく笑い、双剣の柄を軽く叩いた。刃にはまだゴブリンの血が残り、夕陽の光を受けて赤黒く光っている。
シンシアは槍を地面から引き抜き、呆然と周囲を見回した。散乱するゴブリンの死体――首の頸動脈を斬られたもの、胸を貫かれたもの、両断されたもの……どれも一撃で仕留められたような、正確で容赦ない傷だ。
シンシア「……信じられない……。私達が森に入って直ぐにゴブリンの気配を感じて、陣形を整えようとしたら……サリーシャちゃんが『ちょっと待っててな!』って言って飛び出して……。それから、5分も経ってないのに……これ?」
ロザリーは弓を握りしめたまま、声を震わせた。
ロザリー「……私、矢を番える暇すらなかった……。ゴブリン達が、わらわらと出てきて……サリーシャちゃんが双剣を閃かせて、次から次へと……。まるで、嵐みたいだった……。」
彼女の瞳には、驚愕と――わずかな畏怖が混じっていた。数日前のスタンピードで一瞬だけ見た、あの赤髪の令嬢ともう1人の少女が迷宮主との戦った光景を思い出す。速く、正確で、圧倒的さを。
サリーシャは3人の反応を見て、首を傾げた。
ロザリーはサリーシャの顔を見つめた途端、何かを思い出した。あの日、数日前のスタンピードにて迷宮主と戦った赤髪の令嬢と一緒にいたもう1人の少女の顔に、ロザリーは驚いた顔をしながらサリーシャに聞き出した。
ロザリー「ね、ねえ、サリーシャちゃん、も、もしかしてだけど、その…。数日前のスタンピードで迷宮主と戦った?」
ロザリーの言葉に、サリーシャの動きがぴたりと止まった。
橙色のミニポニーテールが、夕陽の残光を受けて静かに揺れるだけ。彼女はゆっくりと振り返り、3人の女性冒険者たちを順番に見つめた。
セラフィナは息を呑み、シンシアは槍を握りしめたまま固まっている。ロザリーの瞳には、確信と驚愕が混じっていた。
サリーシャ「……へぇ。」
小さく息を吐き、彼女はにぱっと笑った。でも、その笑みはいつもの悪戯っぽさとは少し違う――どこか懐かしげで、わずかに寂しげだ。
サリーシャ「ロザリーはん、鋭いなあ。……そや。アタシ、あの日――南方面の草原で起きたスタンピードの現場におったよ。」
3人の表情が、一気に変わった。
セラフィナ「……え?」
シンシア「……え?」
ロザリー「……え?」
3人『えええええっ!!!?』
森の開けた空間に、3人の驚愕の声が重なって響いた。鳥たちがびっくりして飛び立ち、木々がざわめくのだった。
セリスティアの現在の総合値
基本情報
名前:セリスティア・K・クラリスロード
性別:女
年齢:12
属性:炎+光
職業:貴族令嬢+聖女+
炎の騎士団特別訓練生。
*
総合値
Lv:48
HP:4079/4079
MP:7761/7761
攻撃力:438+259={697}
魔法力:801+358={1159}
器用力:419+283={702}
防御力:455+309={764}
機動力:527+297={824}
増加システム・OFF。
*
所有技術
『聖女の加護EX』『銀竜の加護EX』
『光魔法{下}3』『闇耐性{弱}3』
『炎耐性{弱}6』『炎魔法{中}5』
『属性付与10{最大}』
『火球9』
『炎鞭5』
『爆炎7』
『回復3』『治癒3』
『光球1』
『読書10{最大}』『超鑑定1』
『下級剣士{中}2』『体術{弱}4』
『連舞1』『回避動作{中}9』
『反応速度{中}6』『魔法剣10{最大}』
『魔法動作{中}4』
『魔力操作{中}10{最大}』
『投擲{弱}3』
『釣り5』『立体機動10{最大}』『瞬速4』『強化10{最大}』
『硬化6』『突撃10{最大}』
『受け身10{最大}』『跳躍9』
『再撃{弱}9』『剣速{中}8』
『剣術・受け流し10{最大}』
『剣術・居合斬り10{最大}』
『剣術・全力斬り10{最大}』
『集中10{最大}』『瞑想10{最大}』
『自然回復・体{弱}10{最大}』
『自然回復・魔{弱}10{最大}』
『体術・正拳突き1』『体術・回し蹴り2』
『体術・鉄山靠1』
『不屈EX』『盾破壊2』『防具破壊3』
『魔法破壊5』
『呼吸法6』『交渉術2』
新たに会得した技術一覧。
『剣術・二段斬り2』
○一度に2度の斬撃を敵単体に繰り出し放つ事が出来る。熟練度の上昇により威力と命中率が上がる。
『武器破壊2』
○低確率で敵装備の武器破壊。熟練度の上昇により防具破壊の確率が増す。
『炎盾3』
○炎属性防御魔法、魔力の炎の盾を生成し、相手の攻撃を防ぐ事が出来る。発動と防御成功をする事に熟練度の上昇により、炎盾の耐久性度と防御力が上昇する。
『重撃耐性{弱}1』
○自分の重撃への非状態発動の確率を減少させ、重撃の効果時間を少なくする事が出来る、熟練度が上昇する毎に非状態発動の確率と効果時間減少が増す。




