悪役令嬢、冒険者ギルドへ出向き冒険者登録をする。
『雌牛の足跡』の3階の広部屋、私達が使ってる宿部屋に窓に差し込む朝陽が、赤い髪を優しく照らしていた。
私はベッドの上でゆっくりと目を覚まし、隣のベッドでまだ眠っているカレンの寝顔をそっと見つめる。それもそうだ。昨日は騎士団屯所で色々とトラブルがあったからあんなに疲れが溜まっては仕方無いからね。
長い睫毛が静かに伏せられ、穏やかな寝息が聞こえてくる。昨夜の疲れが残っているのか、いつもより少し幼く見えた。
カレン「……ん……セリス……。」
カレンが寝言のように私の名前を呟く。私はくすっと笑った。
セリスティア「まだ寝てて。もう少しゆっくりしていて良いよ。」
カレンは小さくうなずき、また深い眠りに落ちていく。
私は静かにベッドを抜け出し、昨晩、マーサから用意された庶民用の身体が動きやすい布製の衣服に着替えてから、部屋の隅にある鏡台に忍び足で向かう、鏡に写り込む巣の自分の姿__一見からして、中学生くらいに見えて少し逞しい身体付きをしている。
私は右手に持った『反色の華飾り』を髪に飾ると同時に長い髪をポニーテールにして結ぶと、私の赤髪と髪飾りの黒薔薇の色が逆転し、薔薇は赤くなると共に髪も黒髪になる。
セリスティア「これで、良し。」
部屋を静かに出て、階段を下りると、既にマーサとミナが朝食の準備をしていた。レイラはカウンターを拭きながら、私に気づくとぱっと顔を輝かせた。
レイラ「お早う御座います、お嬢様。」
セリスティア「おはよう、レイラ。もう起きてたんだ。」
レイラ「はい……今日はお嬢様がギルドに行かれると聞いて、何故か朝早く起きてしまいました。」
マーサが厨房から顔を出し、にこやかに手を振る。
マーサ「お早う御座います、お嬢様。今日は冒険者登録の日と騎士団と初訓練でしたね? 朝ごはんはしっかり食べて、元気に出掛けて下さいね。」
セリスティア「うん、ありがとう! マーサ。」
朝食はシンプルながら温かいものだった。焼きたてのパンに、チーズとハム、果物の盛り合わせ。ミナが淹れてくれたハーブティーが、ほのかに甘い香りを漂わせる。
食事をしながら、私は昨夜聞いた話を皆に簡単に伝えた。迷宮崩壊、頻発するスタンピード、そして……『放置されて崩壊を誘発されている』という不穏な噂。
マーサ「……ギルドの常連さんたちも、最近は同じような話をよくしてるわ。迷宮の出現頻度が異常だって。……兎に角、お嬢様、今日は登録だけにして、深入りしないで下さいね?何かあったらお屋敷の旦那様と奥様が悲しみますからね。」
セリスティア「うん、わかってる。取り敢えず登録をするだけだよ、お仕事の方は、まあ、一度帰って伝えるから。」
レイラが心配そうに私の袖をそっと掴む。
レイラ「……お嬢様、私もご一緒したかったのですが……今日はお店の準備が……。」
セリスティア「大丈夫だよ、レイラ。今日は私1人で行くから。レイラはここで待って留守番がてらマーサ達のお手伝いしててね、帰ってきたら、今日の出来事全部話すから。」
レイラ「……はい、畏まりました。……どうか、気をつけてくださいませ。」
ミナ「セリス様! お守り持って行ってくださいね!」
ミナが小さな布袋を差し出してくる。中には、幸運を祈願した小さな石が入っていた。
セリスティア「ありがとう、ミナ。大切にするね。」
私は3人に見送られて雌牛の足跡を後にした。
*
王都の朝は、いつもより少し冷たい風が吹いていた。
私は黒髪をポニーテールにまとめたまま、布製の動きやすい服を着て、街路を堂々と歩く。昨日までの赤髪の貴族令嬢とはまるで別人。誰も私の事は気にせず振り返らない。むしろ、通りすがりの商人や朝の巡回衛兵が、普通の田舎娘を見るような視線を投げかけてくるだけだ。
セリスティア{……これで本当に大丈夫。誰も私を『クラリスロード家の令嬢』だなんて思わない筈だ。}
冒険者ギルドは王都の中心、大きな広場に面した石造りの建物だ。入口の上に掲げられた剣と盾の紋章と看板には『冒険者ギルド、セトランド王都支部』と書かれた看板が、朝陽に鈍く光っている。
扉を開けると、木の床が軋む音と、朝から依頼を確認する冒険者たちの低い話し声が響いた。
受付カウンターには、昨日と同じく若い女性の受付嬢が立っていた。彼女は私の姿を見て、少し首を傾げる。
受付嬢「いらっしゃいませ。冒険者登録でしょうか?」
セリスティア「はい、お願いします。1人で登録したいんですけど……」
受付嬢「かしこまりました。ではこちらの用紙にご記入ください。では先ず、お名前と年齢、出身をこの登録シートに記入して下さい。」
私は受付嬢から渡された羊皮紙の登録シートを手に取り、カウンターの端に置かれた小さな机に腰を下ろした。
ペンを握る手が、少しだけ震えていることに気づく。
――本当は、昨日カレンと一緒に来るつもりだったのに。
でも、昨夜の騎士団屯所での一件でカレンはまだ疲れが抜けきっていないし、何より……今日は『セレナ・ブラッカリィ』として、完全に1人で登録したかった。
私は深呼吸して、ゆっくりとペンを走らせる。
名前:セレナ・ブラッカリィ
年齢:12歳
性別:女
出身:辺境の小さな村{ディオス近郊}
私はペンを止めて、ふと自分の書いた文字を見つめた。
年齢:12歳
――本当は12歳なのに、こんなに幼く見える黒髪の姿だと、誰も疑わないだろうと思った。実際、鏡に映る自分は中学生くらいにしか見えないし、この世界では見た目が実年齢より若く見える体質の持ち主も珍しくないらしい。……それに、貴族令嬢としてではなく、完全に『普通の冒険者』としてスタートしたかった。
私は小さく息を吐き、残りの欄を埋めていく。
得意武器・技術。
剣士、炎魔法使用、身体能力高め。
特記事項は一応、特に無し。
最後に署名欄に『セレナ・ブラッカリィ』と丁寧に書き終え、羊皮紙をそっと受付嬢に差し出した。
受付嬢は用紙を手に取り、内容を素早く確認しながら、にこやかに頷く。
受付嬢「ふふ、12歳で冒険者登録とは、なかなか勇敢ですね。……問題ありません。次は身分証の確認をお願いします。」
受付嬢は羊皮紙をじっくりと読み直し、ふと眉を寄せた。
受付嬢「……セレナ・ブラッカリィさん、ですね。年齢……12歳?」
彼女の視線が、私の顔から黒髪のポニーテール、そして動きやすい布服に包まれた小さな体躯へと移る。明らかに、見た目と記入された年齢が一致していないことに気づいたようだ。
セリスティア{……やっぱり、引っかかるよね。見た目はもっと幼く見えるんだもん}
私は少し緊張しながらも、穏やかに頷いた。
セリスティア「はい、12歳です。本当です。」
受付嬢は少し困ったように周囲を見回し、声を潜めて言った。
受付嬢「えっと……当ギルドの規定では、冒険者登録は12歳以上と定められています。ですが、見た目があまりにも幼く見える場合、保護者の方の同伴か、身元保証人の署名が必要になるんです。……お一人で来られたんですよね?」
私は頷き、胸ポケットから小さな布袋を取り出した。中には昨夜、夕飯後にバークマン様の使いの兵士から渡された偽の身分証を受付嬢に確認する。
大丈夫、身分証の内容は全て、田舎出身のセレナとしての情報が記されている。
それは一見すると粗末な作りだが、辺境の村役場が発行した正式な身分証明書として、必要な印章と署名がきちんと押されている。
偽造品とはいえ、バークマン様の部下が夜通しで手配してくれた物だ。内容は完璧に整えられている。
受付嬢「……ディオス近郊、ローゼン村のセレナ・ブラッカリィさん。保護者欄には……お父様とお母様の名前と署名がありますね。……うん、問題ないようです。」
彼女は少し安堵したように息を吐き、微笑みを浮かべた。
受付嬢「失礼しました。12歳でも、辺境の村では早い段階で自立する子が多いんですよね。……それに、この身分証は本物です。印章の魔力刻印も正規のものですし。」
セリスティア{……良かった。バークマン様、ありがとうございます……。}
私は内心でほっと胸を撫で下ろしながら、穏やかに微笑んだ。
セリスティア「ありがとうございます……私、村ではもう一人前として扱われてたので、1人で来ちゃいました。」
受付嬢「ふふ、立派ですね。では、続きを進めましょう。」
彼女はカウンターの奥から小さな金属製のプレートを取り出し、魔法陣の刻まれた台の上に置いた。プレートに指を当てると、淡い青い光が走り、私の記入した情報を瞬時に吸い込んでいく。
受付嬢「はい、これで登録完了です。おめでとうございます、セレナ・ブラッカリィさん。白級冒険者として、今日から正式に活動出来ます。」
受付嬢が差し出した金属製のタグプレート――冒険者証は、手のひらにすっぽり収まるほどの大きさで、表面には私の偽名『セレナ・ブラッカリィ』と登録番号、そして一番下に小さな白い宝石が埋め込まれている。
取り敢えず、冒険者登録は済ませたし、一度ギルドを後にして炎の騎士団屯所へと急いで向かおう、いきなり初日から遅刻でもしたらクリムゾン団長に怒られるからね!
冒険者ギルドの扉をくぐり抜けると、外の朝の冷たい風が頰を撫でた。私はポケットにそっと冒険者証をしまい込み、屯所へと向かって中央街を駆け出しながら、髪飾りを外して元の髪の色へと戻ると共にポニーテールを解くのだった。
*
冒険者ギルド、セトランド王都支部にて。
セリスティアが冒険者登録してギルドを去ってから10分近くが経過した頃。
ギルドの受付カウンターにて、受付嬢は驚愕な表情をしながら、現在、自分が対応している『本日2人目』の12歳の冒険者希望者が書き終えた登録シートと渡された身分証を確認しながら、説明する。
受付嬢「と、当ギルドの規定では、冒険者登録は12歳以上と定められています。ですが…。」
対応している冒険者希望の12歳の少女を受付嬢は外見を確認する、橙色の髪をしたミニポニーテール、後ろ腰に双剣を備えている。
冒険者希望の少女「んーーー?お姉はん、さっきから黙ってアタシを見つめてどないしたんや?」
受付嬢の視線に気付いた。冒険者希望の少女の反応による声掛けを耳にしたか、受付嬢は慌てながら謝罪する。
受付嬢「えっ!?あ、も、申し訳有りません!」
謝罪し終えた受付嬢は、少女の身分証を眼に通し確認する。
受付嬢「えっと、出身は…西のファーリシア大陸のピスケス村、保護者欄には、ちゃんと御両親様のお名前が記入されてますね、問題は無いのですが……。」
冒険者希望の少女「ん?」
受付嬢「さ、最近は、12歳ぐらいの少女は故郷を飛び出して自立するのが多いですね…。」
それもそうだ。1日に2人も12歳の少女がこの冒険者ギルドに訪れて、冒険者登録をして来た事に受付嬢は驚いていた。
受付嬢「あ、すいません!此方の話です、では、此方のプレートに指を触れて下さい、触れると指紋を通して登録者の情報が記録される仕組みですので。」
カウンターの奥から小さな金属製のプレートを取り出し、魔法陣の刻まれた台の上に置いた。少女はプレートに指を当てると、淡い青い光が走り、の記入した情報を瞬時に吸い込みだす。暫くして登録が完了し、受付嬢は用意いたタグプレートを少女に受け渡す。
受付嬢「登録完了です、おめでとう御座います、白級冒険者として、今日から正式に活動出来ます。最下位級である白級は、冒険者としては見習いと言う立場の為、単独での依頼は冒険者ギルド規則で禁じられ、ギルドから指名された上位の冒険者との同行が必要ですので。」
冒険者希望の少女「ほーん、で、依頼成功後の報酬とかはどないなるんや?分別?1人頭?どっち何や?」
自分のタグプレートを右指で摘みながら、少女は確認がてら、依頼成功後の報酬はどうなるのか聞き出す。
少女は、自分の橙色のミニポニーテールを揺らしながら、受付嬢の顔をじっと見つめた。瞳は好奇心と少しの生意気さが混じった輝きを放っている。
受付嬢「え、えっと……報酬の分配についてですね。白級の方は、基本的には『同行者のリーダーまたは上位ランクの冒険者が代表として報酬を受け取り、そこから分配する』形になります」。
少女「ほーん。で、アタシがリーダーになってもええん?」
受付嬢は少し困ったように笑った。
受付嬢「そ、それは……白級の方はまだリーダーにはなれません。これもギルド規則でして、白級は必ず『上位ランクの冒険者』がパーティー内に1人以上いなければ依頼を受注できないんです。報酬は、依頼主からギルドが一旦預かり、手数料を引いた後でパーティーの代表に支払われます。そしてリーダーがパーティー内で分配する、という流れですね。」
少女は『ふーん』と小さく唸り、指先で自分の新しい冒険者証をくるくると回しながら考え込む。
冒険者希望の少女「つまり、アタシが1人で依頼受けられへんってことやな? 誰かと組まなあかんて……めんど臭いなあ、ホンマに……。」
受付嬢「はい、申し訳ありません。でもそれは安全のためなんです。白級の方はまだ経験が浅いので、上位の冒険者に同行してもらう事で、危険な目に遭う確率を大幅に下げられるのですよ。」
少女は少し不満げに唇を尖らせたが、すぐにニッと笑った。
冒険者希望の少女「まぁええわ、人間誰だって命は大事やしさ、あ、じゃあ、ギルドから指名される上位の冒険者って、どないな人なん? 強そうな人? 優しい人? それともアタシのこと舐めそうな奴?」
受付嬢はくすっと笑って、掲示板の方をちらりと見た。
受付嬢「そうですね、指名は、依頼の内容やパーティーの相性を見てギルド側で決めますが……白級の方の場合、最初は比較的優しい先輩冒険者さんを優先的に割り当てるようにしていますよ。鉄級や銅級、たまに銀級のベテランさんも沢山いらっしゃいますし、特にこのセトランド王都支部に所属する女性の冒険者さんが多いので、安心して下さい。」
少女は腕を組んで、ふっと息を吐いた。
冒険者希望の少女「ふーん……ま、ええか。アタシ、双剣使いやし、結構速いねん。舐められたら逆に蹴散らしたるわ。」
受付嬢は目を丸くして、少女の腰に下げられた双剣の鞘を見た。見た目はまだ幼いが、確かにその立ち振る舞いや剣の扱い方には、ただの初心者とは思えない雰囲気がある。
受付嬢「……本当に12歳……ですよね?」
サリーシャ「なんや、疑っとるん? ほら、身分証ちゃんと見せたやろ。ピスケス村のサリーシャ・ウンディーネ、12歳、間違いなく本物やで!」
少女――サリーシャは胸を張って、橙色の髪をぴょんと跳ねさせた。
受付嬢「は、はい! 失礼しました! では……早速ですが、今日は白級向けの簡単な依頼がいくつかあります。『街内清掃』『薬草採取』や『村外れのゴブリンの討伐』等と言った『見習い向け』のを全て……。まずはお試しにどれか受けてみますか?」
サリーシャは受付カウンター近くの依頼掲示板にずかずかと歩み寄り、貼り出された依頼書を上から下まで素早く眺めた。
セラフィナ「んー……薬草採取はつまらんし……ゴブリン討伐? ふーん、レベル低めやけど、報酬はゴブリン1匹に付き銅貨2枚か、ほぉ、倒したら右耳だけ証拠品として切り取るんか。まぁ、初仕事としてはええかな。」
彼女は1枚の依頼書をぺりっと剥がし、受付嬢に差し出した。
セラフィナ「これにするわ。『村外れの森でゴブリンの討伐』。同行者もすぐ決めてくれるん?」
受付嬢「はい、すぐに確認しますね。……あ、ちょうど良いタイミングですね、今、銅級の女性冒険者さんがギルドにいらっしゃいます。彼女なら白級の初仕事に慣れていますよ。」
受付嬢がカウンターの奥に声をかけると、奥から背の高い女性がのっそりと現れた。長い紫髪を三つ編みに纏め、軽鎧の上にマントを羽織っている。腰には細身の長剣と小さな盾。目つきは鋭いが、口元には優しげな笑みが浮かんでいる。
女性冒険者「ん? 新入りか? 白級の12歳……って、マジかよ可愛すぎだろ。」
サリーシャ「お姉さん、よろしくな。アタシ、サリーシャ。双剣使いや。よろしく頼むで」
紫髪の女性冒険者はしゃがみ込んで、サリーシャの目線に合わせ、にこっと笑った。
女性冒険者「私はセラフィナ、セラフィナ・シルバリオ。冒険者階級は銀級5位、剣士だよ。今日はよろしくね、サリーシャちゃん。ゴブリンくらいなら、私達が全部倒してあげても良いけど……ちゃんと戦いたい?」
サリーシャ「何言うとんねん!アタシも戦うで!まだ見習いの立場やけど、手加減せんといてな!」
セラフィナは大声で笑いながら、サリーシャの頭を軽く撫でた。
セラフィナ「了解よ。じゃあ、早速行こうか。ゴブリン相手に手加減なんてしないよ。……でも、死なないように守ってあげるから安心して。」
サリーシャ「ふん、誰が死ぬかや!」
セラフィナ「子供とは言え、悪くない態度ね、気に入ったわ。ロザリー!シンシア!」
別のテーブル席に向かい座りながら、セラフィナに呼び出された2人組の女性冒険者が席を立って、直ぐ様に2人の元へと駆け付ける。
1人は紺色の髪をした右サイドポニーテールの弓使い、もう1人は長い茶髪ロン毛の槍使い。何と彼女達2人はセリスティアが上京した日に、本国南方面の草原地帯にて起きたスタンピードに挑み魔物達と戦った。シンシア・クレイデールとロザリー・キャロルの2人であった。
とくにロザリーの方は、スタンピードの元凶の元である迷宮主の元へと向セリスティアに回復薬と魔力回復薬を託されるも、結局は回復薬の方は使わずに返され、そのお陰か右腕を負傷し助けられた事がある。
その後、ロザリーは同期であるシンシアに支えられながら、治療とリハビリを行い、見事、昨日冒険者ギルドに復帰したのだ。
セラフィナ「ロザリー、シンシア、今日から新たに内のギルドの所属冒険者になった見習い白級のサリーシャ。仲良くしな。」
シンシア「宜しく!私、シンシア・クレイデール。槍使いで使用魔法属性は地、冒険者としての階級は銅級4位よ。で、此方が同期の。」
ロザリー「ロザリー・キャロル、使用武器と魔法は弓と風、銅級5位。宜しくね、サリーシャ。」
セラフィナ「この2人は数日前のスタンピードで活躍して階級が上がった銅級冒険者よ。腕は立つから、安心して。」
サリーシャは目の前に現れた3人の女性冒険者たちを、橙色の瞳でじーっと見上げた。
サリーシャ「へぇ……銅級4位と5位かいな。なかなかやるもんなや。よろしゅうな、シンシアはん、ロザリーはん! セラフィナはんも!」
彼女は小さく敬礼するような仕草をして、にぱっと笑う。双剣の柄に手をかけ、すでに戦う気満々だ。
シンシアはしゃがみ込んでサリーシャの目線に合わせ、優しく微笑んだ。
シンシア「ふふ、元気一杯ね。サリーシャちゃん、12歳で冒険者になる何て、相当強い子なんだろうなあ。……でも、無理はしないでね? 私達がちゃんと守るから。」
ロザリーは少し照れくさそうに頰を掻きながら、弓を背負い直した。
ロザリー「……うん。2日前の南方面でのスタンピードで、私、結構やられちゃったんだけど……その時、赤髪の女の子に助けてもらったの。あの子、凄く強かったよ。サリーシャちゃんも、きっとそんな風になれるよね。」
サリーシャ「赤髪の、女の子?」
ロザリーは少し遠い目をして、懐かしそうに頷く。
ロザリー「うん。名前は……知らない、言おうとした途端に誰かに呼び出されて去っちゃってね、貴族の令嬢なのに何か逞しくてさ、剣の腕は兎も角、もの凄い炎魔法使って、魔物達をバンバン倒してた。……もし、もしもあの娘がいなかったら、私達はきっと今この場にいなく、パーティーも、守ってた馬車も全部全滅してたかも。」
サリーシャ「!!」
瞬間、サリーシャはその貴族の令嬢が誰なのか把握した。セリスティアだ。迷宮主であるレッド・ホブゴブリンとその取り巻きの眷属のトロールの3体を相手に、自分と共に戦い、互いの連結と戦闘技術で倒し、勝利した。
あの日以降、別れて、王都内にてセリスティアとは一度も会ってはいない、それもそうだ。彼女は貴族令嬢、自分は…。いや、自分の素性を語るのはまだその時じゃない。
それに貴族の子供が冒険者ギルドで活躍するのは可笑しくは無い、実績を得る為の良くある事だからだ。
サリーシャは一瞬、橙色の瞳を大きく見開いたが、すぐに表情を崩さず、にぱっと笑ってみせた。
サリーシャ「へぇ……そないな凄い子がおったんやな。赤髪の貴族令嬢、か。名前は知らんけど……なんか、気になるわぁ。いつか会えたら、絶対に礼言うてみたいわ。」
サリーシャは惚けながら笑顔で答えると、ロザリーは少し照れくさそうに頰を掻きながら頷いた。
ロザリー「うん……私も、もう一度会えたらいいなって思ってる。あの子の炎魔法、本当に綺麗で……怖かったけど、頼もしかったよ。」
シンシアが優しくロザリーの肩を叩き、話題を切り替えた。
シンシア「まぁまぁ、そんな話はまた後でね。サリーシャちゃん、ゴブリン討伐の準備はいい? 森の入り口までは歩いて30分くらいだから、早めに出発しようか。」
サリーシャ「もちろん!アタシ、いつでも行けるで!」
セラフィナが大きく笑いながら、左腰の長剣を軽く叩いた。
セラフィナ「よし、決まり!じゃあ、みんな、行くぞー! サリーシャちゃん、置いてかれないようにね?」
サリーシャ「誰が置いてかれるかや!むしろアタシが皆を置いてくかもな!」
4人は笑い合いながら、ギルドの扉をくぐり抜けた。朝の陽射しが、彼女たちの背中を優しく照らしている。
セリスティアとサリーシャ、2人の再会は恐らく近いだろう。
セリスティアが身分を偽り。
冒険者ギルド、セトランド王都支部にて冒険者登録した登録シートに記入された基本情報を詳細。
名前:セリナ・ブラッカリィ
登録番号:0153
年齢:12
属性:炎
出身:セトランド大陸ディオス近郊ローゼン村
使用武器:剣




