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悪役令嬢、目的地に到着し、前のメイド長と対面する。

夕時、陽が沈み行く時間帯にて、エンディミオン大聖堂を後にした私達3人は不服そうな顔をしながら。目的地である3階建ての酒場兼宿屋『雌牛の足跡』へと向かって中央街を歩き出していた。


セリスティア「………。」


大聖堂の奥の祭壇にて石像達に見守られながら聖剣は今も尚、封印され続けていた。一応『超鑑定』の技術を見て確認した為、間違い無く、封印状態ながらも、あの聖剣は()()だった。


レイラ「……大丈夫ですか?お嬢様。」


レイラが私を心配して声を掛ける。


セリスティア「ええ、大丈夫…と言った方が良いのかしら?あれは…。」


だとしたら、現在、私が所持してる銀竜様から託された私の聖剣は一体…。


カレン「まあ、無理も無いさ、前にセリスの聖女としての覚醒の同時刻、勤めてる修道女からの話によれば、何でも1年前に教皇様を始め、大聖堂の周りにいた者達も聖剣が輝き出し、光の柱となって天を突き抜ける程に高く伸びたそうらしい。」


私が聖女として覚醒したその日に、大聖堂の聖剣も…。


カレン「それから一時期は聖剣の警備も厳重になったが、以降、光り輝く事は一度も無い、もしかしたらと思うがセリスの聖剣と同調している可能性が高いだろう。」


セリスティア「私の聖剣と…。」


レイラ「とは言え、あれから1年、魔獣との遭遇は一度も有りません、それまでお嬢様はエンディミオン魔法学校の入学まで色々と準備しなければなりませんので。」


色々とねぇ…。色々か、そう言えば王国に上京した後の事はまだ一度も考えてはいなかったね…。そう考えていると、目的地の宿屋へと到着した。


レイラ「お嬢様、此処が『雌牛の足跡』で御座います。今日からお嬢様は此処で1年間暮らす場所です。」


セリスティア「此処が、雌牛の足跡…。」


確かに、お父様が言った通りに1階が酒場で、2階と3階が宿部屋と言う構造になってる、更に木製の両扉の上の屋根の看板には店の名前通りに左横姿の雌牛を模した看板が設置されている。


カレン「さて、セリス、私は騎士団の屯所に一度戻ろうと思う、叔父上、いや、騎士団長から帰還の挨拶と今回のスタンピードの報告を伝えないとならないからな。」


セリスティア「ええっ!?カレンは此処に」


カレン「なに、心配しないでくれ、報告を終え次第、直ぐにこの宿にセリスと共に泊まる予定だ。護衛の任務を途中で終わらせてしまったら騎士としての面目が丸潰れだからな。」


そう言い、私の頭を優しく撫でながら微笑むカレン、籠手越しから伝わる彼女の右手は鉄の様に頑丈ながら優しさが感じていた。


撫で終えるとカレンは別れの挨拶を私にする。


カレン「それじゃあ、行って来る。」


セリスティア「行ってらっしゃい、カレン、クリムゾン団長にも宜しくお願いしますと伝えてね!」


レイラ「カレン様、どうかお気を付けて。」


私達2人と別れたカレンは、手を振りながら自分の属する炎の騎士団の屯所へと向かった。暫くして、カレンの姿が遠くなり、見えなくなるともう空が暗くなる一方か私達はそろそろ雌牛の足跡へと足を運ぶ、来店すると店の中は数多くの仕事帰りの男達がわんさかとテーブル席に囲みながら、美味い食事とお酒を楽しく食してる光景を眼にする。


この店の何処かに、店主であるマーサって人が働いてるんだよね?私はレイラにマーサがどんな人物か聞き出した。


セリスティア「レイラ、マーサってどんな人なの?確か前のメイド長だってお父様から聞いたけど、どんな人なの?私、会った事が無くて…。」


レイラ「それは当然です、何せお嬢様がお産まれになってから3歳の頃まで、お仕事で多忙の旦那様と奥様に代わりにお世話為されたお方で、ほんの少しの期間ですが、私に使用人としての心得を教えてくれた師匠でもあります。」


セリスティア「へぇ、それは分かるけど、どうして前のメイド長だったマーサって人は、本国で宿屋を?」


レイラ「確か、現メイド長であるシーナ様の話によれば、御病気で亡くなられたお母様のお仕事を引き継ぐ為に使用人の仕事を退職し、ご実家のある本国へと帰られたんです。その引き継ぎの仕事こそ、この宿屋の女将だそうです。」


そのマーサって人からしたら、数年お世話したセリスティアからしたら9年振りの再会、いや、転生したから私からしたら初対面って感じなのかしら?そう考えてると、宿屋の従業員らしき若い娘が、私とレイラに気付いたのか、慌てて対応して来た。


宿屋の娘「い、いらっしゃいませ!すいません、店中結構忙しくて気付きませんでした!!」


従業員の娘は直ぐ様に謝る、確かにこの1階酒場内の状況からしたら来店して来たお客の対応のタイミングが難しいからね…。まあ、それはさておき。


セリスティア「あの、すいません、マーサさんは居ますか?私達、その方の知り合いでして…。」


宿屋の娘「母ですか?直ぐにお待ち下さい!お母さーん!お客様がお母さんを呼んでるよー!」


彼女の呼び掛けにより、長いおさげのポニーテールをした。少しふくよかな女性が私達の元へと駆け付けて来た。恐らくこの人が宿屋の女将にしてクラリスロード家に仕えてた元メイド長のマーサだろう。


マーサ「いらっしゃい!アタシがマーサだけど…。用件は何かしら?」


するとレイラは、私より先に前に立ち、レイラが礼儀正しくマーサに頭を下げて挨拶をする。


レイラ「お久し振りです、マーサ様、私の事をお覚えですか?」


マーサはレイラの顔を良く見ると直ぐ様に思い出したか、驚いた表情しながらレイラと対応する。


マーサ「もしかしてアンタ、レイラ?昔、シーナに頼まれてアタシが使用人としての心得を教えたやった。見習いメイドだったあの!?」


レイラ「はいっ!そのレイラ・スクルドです!」


瞬間、マーサは突然とレイラを思いっ切り抱き締めた。


マーサ「驚いたわ!まさか貴女が家の宿屋に訪ねて来る何て!」


レイラ「ご、御無沙汰してます…く、苦し…。」


マーサ「あ、あら、アタシとした事が力加減間違えちゃったわ…。あら?」


するとマーサの目線はレイラから隣に居る、私へと移り変わる。彼女は私の顔を間近でじっと見つめながら、私が誰なのかを把握がてら問い出して来た。


マーサ「も、もしかして…。」


セリスティア「セ、セリスティアです。お、お久し振り?ですかな?」


突然とマーサは私の両肩を掴みながら、私の顔を見てポロポロと涙を流し、泣きながら、懐かしさが感じる。


マーサ「そ、そのピンクの様な赤髪は、リリアナ奥様と瓜二つ!セリスティアお嬢様…こんなに大きくなって……。お懐かしいですわ。」


こうして私は、前のメイド長にして、幼少の頃の元お世話係であったマーサと再会したのであった。





私とレイラの2人はマーサにお父様からの紹介状を受け渡し、私達の目前で手紙の読んで理解してくれたそうだ。紹介状の内容は私が読まずとも理解している、マーサの宿屋にて私を預かって欲しいと言う事らしい。


そんなマーサは女将として、宿の仕事があって多忙の為、代わりに娘さんであるミナに3階の広い宿部屋に私達2人を案内してくれた。3階に到着すると宿部屋は2つのみ。何でも大部屋らしく宿泊金も高いそうだ。


ミナ「今日から、この宿部屋はセリスティアお嬢様のお部屋として使って下さい。」


ミナは3階の1番奥の宿部屋の扉の鍵を開けて、私達は中へと入る。


セリスティア「有り難う、案内してくれて。」


ミナ「いえいえ!お礼は要りませんよ、お母さんがとてもお世話為された方相手には…。」


セリスティア「……え、えっと名前は確か、ミナだっけ?私の事を前々からマーサ、貴女のお母さんから聞いてるのかしら?」


一応、自分の知らない昔の私の事を聞いてみると、ミナは元気良く返事してから、私の昔の事を話してくれた。


ミナ「は、はいっ!お母さんから話は聞いてます、とても何でも他の使用人の方々に迷惑してしまう程のじゃじゃ馬だったとか?」


レイラ「っ!」


陰ながら笑い出すレイラ、おいコラ、其処は笑うな、まあ確かにそうだけどね。


セリスティア「まあ、今となっては昔の事だけれどね、今からしたらとても恥ずかしい過去だったわ。……そんな訳だから今日から1年間お世話になるから、宜しくね。」


ミナ「は、はいっ!宜しくお願いします!お嬢様!!」


セリスティア「あ、それと、敬語。堅苦しいのは良いからさ、私の事はセリスと呼んでね。」


そう、ミナは私と対面した時からずっと堅苦しく敬語だったからね、其処は何とかしないとね。


ミナ「え、えっと、では、セリス様!宜しく!じゃあ私はお仕事があるから、何か他に必要な物あったら私かお母さんを呼んでね!」


堅苦しいのが無くなったミナは元気良く、私達の部屋を後にした。数秒の沈黙、私は今日から使う、奥のベッドへと向かって、大の字にゴロリと天井を見つめながら寝込む、本当に疲れたわ、もう…。


セリスティア「……ふぅ、疲れたわ。」


レイラ「お嬢様、端無いですよ。」


セリスティア「今日は色々と疲れたからね、暫くはこのままにさせてレイラ…。」


本国へもうちょっとの筈が途中、スタンピードに巻き込まれるわ、冒険者達を助けに加勢に入るわ、サリーシャと出会って共に迷宮主と戦ったりした。


……そう言えば、サリーシャはちゃんと本国へ入国出来たかな?


セリスティア「何か今日は、色々あったね…。」


レイラ「……何処ぞの誰か様がまたもや魔物の大群の中へと突っ込む始末でとても心配しましたが、まあ、命あって本当に無事で何よりです。」


セリスティア「……其処は御免って、何せ見て見ぬ振りをする訳には行かなかったから。」


この瞬間、レイラは眼を瞑ると、1年前にディオスの森で起きた。セリスティア、カレン、エレイナと共に改造魔獣と戦う記憶が蘇る。


レイラ「……そうですね、お嬢様は元から、そう言う人なのを忘れてました。…それで、これからは如何しますか?お嬢様。」


天井見上げながら、私は悩む。確かに本国に到着してからはまだ今後の事を考えてはいなかった。


セリスティア「…正直に言うと、まだ分からないわ、本国への到着が目的だけだったから今となっては達成してしまったし。レイラは何か宛はあるの?」


レイラ「いえ、私はてっきりお嬢様は既に考え済みかと思ってまして。」


セリスティア「そんな訳無いでしょ、私だって完璧な人間じゃないのよ…。とは言え、今日は疲れたから、このまま寝るわね…。」


レイラ「お嬢様、その格好でベッドで寝るのは令嬢らしかぬ…。」


しかし、時既に遅し、セリスティアは数秒も経たずに眠りの中にへと堕ちて行ったのだった。レイラは内心、確かに今日は本当に色々とあったと理解し、眠るセリスティアを起こす訳には行かないと思い、レイラは近くの丸椅子に座りながら眠るセリスティアを微笑みながら見守った。


レイラ「……お休みなさいませ、お嬢様。本日は、お疲れ様でした。」





……どのくらい眠ったのだろうか?


何か視界がボヤケてる最中、レイラとカレンの話し声が聴こえる、見慣れない木製の天井、ああ、そっか、此処確か今日から住むことになった宿部屋だっけ。うっかり寝惚けてしまったよ。


取り敢えず私は疲れが取れた身体を起こすと、私が起きた事に気付いたレイラとカレンが声を掛ける。


レイラ「お目覚めですか?お嬢様。」


セリスティア「お早うレイラ、外暗いけれど、もしかしてもう夜?」


レイラ「ええ、お嬢様は3時間近く眠ってましたから。」


カレン「とは言え、結構ぐっすりだったぞ、セリス。」


何時もの仕事時である鎧姿ではなく、黒い長袖のシャツと革のズボンを着込んでいるカレンは優しく微笑む。


セリスティア「カレン、来てくれたんだ。」


カレン「騎士団の屯所からたった今戻って来た所だ。今日から私もこの宿に1年間滞在する積もりだからな、叔父上から許可を貰った。」


セリスティア「そっか、クリムゾン騎士団長が。」


カレン「ああ、それよりセリス、今後の事をまだ決めていないとレイラから聞いたが…。良かったら明日、炎の騎士団の屯所で試しに訓練を受けて見る気は無いか?」


セリスティア「……私が、騎士団の屯所に?」


前略。

お父様。お母様、もしかしたら私は近い内にカレンと同じ女騎士になる予定かもしれません、まあ正直、まだ決めていないけど取り敢えず、私はカレンの誘いを受けて明日の予定が決まったのだった。

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『推しの乙女ゲームの悪役令嬢に転生するも攻略キャラが全員ヒロインなのが間違っている!?』小説家になろう及びカクヨムにて兼任連載中! 感想も宜しくお願いします!m(_ _)m
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